#scene03-28
「ところで、何をしてるんだい?」
「ああ、そうだった。ルイテル、ペトラ、ちょっと部屋改造するから入らせてもらうぞ。キーリー、パンドラを起こしてきてくれ。」
「ういうい」
「どうなるか気になるから僕もついていこう」
「私も行きます――お料理は手伝わせてもらえないみたいなので」
ナギはアイヴィーとともにルイテルの部屋に入る。
王族という割には広さなどにこだわりはないようで、部屋の広さ的にはナギの使っている部屋とそう変わりはないが、持ち込んだ調度品はそれなりの値段がしそうなものばかりだ。
「まずは、この便座を設置してアイヴィー、配線頼めるか?」
「ええ、お任せを」
「じゃあ、オレはシャワーの方を設置してくる」
上水、下水ともにそれほど気を遣わずに設置できるのが“魔法”という無茶苦茶が存在する世界のいいところだ。といっても、この部屋にはもともと下水用の管が通っているのでそちらの方は特に手を掛けていない。
ただし、上水の方に特別な印を刻んだ魔宝石を使っているのでそう簡単に手を出せるような値段ではないのだが。
「シャワーの方はいつでも湯が使える。少し狭いが、体を流すぐらいならこれで十分だろう」
「おお。これはいいね」
「本格的な浴場も作ったから後で案内する。で、こっちの便座の方は……まあ、マニュアル作っておいた」
「ふんふん……なるほど。これは、割と便利かもしれないね」
「これを売るだけでも一財を作れそうですが」
「そうだね」
「でも、これ、今の設計だと庶民が手を出せる値段じゃないぜ?」
「まあ、それは見たらわかるけど、いずれはクオリティ下げて一般販売するんだろう?」
「それは領地が出来てからだな。よし、次はペトラの……」
そういいながらルイテルの部屋を出たとき、アーリックの部屋の前でキーリーが固まっているのを見つけた。
「どうした、妹よ」
「いや、パンドラの部屋誰もおらんかったからまさかと思ったんやけど、この人ら鍵掛ける文化ないん?」
「……事情は察した。ペトラの部屋とパンドラの部屋を頼む」
そういうと、ナギは一度アーリックの部屋を閉め、ノックして声を掛けた。
「おーい、アーリック。そろそろ昼だ」
「………ん、ああ」
返事は返ってきたのでしばらく放っておこう。
「あとは、エレノラか?」
ナギが反対側の部屋の前にやってきたところ、エレノラの部屋の隣のドア――リュディの部屋から黒猫が外に出てきていた。
「よう、クラ。調子はどうだ?」
「にゃ」
「ミトはまだ寝てるのか」
「にゃ」
「あ、そうだ。ちょっとエレノラ起こしてきてくれないか?」
「にゃ」
ナギはルイテルから借りた鍵でエレノラの部屋を開ける。そこにクラがするりと入り、しbらくすると、
「わ……どうして、クラがここに?」
テンションは低いがどうやら目覚めたらしかった。すぐにクラがドアから出、ナギが一撫ですると満足して食堂に向かった。
少し時間がたってエレノラが部屋から出てくる。
「……おはよう」
「おはよう。ちょっと、部屋の水回りいじらせてもらうが、いいか?」
「うん、好きにして」
ナギが早速工事を始めるとエレノラもそれを興味深そうに眺めていた。
「魔法式とはちがうのね」
「似たとことは若干あるから、魔法式がある程度使えるなら機巧式は簡単に覚えられると思う」
「へぇ」
二階すべての部屋に設置しおわった頃には昼食にはちょうどいい時間になっていた。
もちろん、アーリックの部屋にも設置し終えた。
そして、全員が食堂に揃う。いつの間にかミトも移動してきていた。
「で、今日の昼食は何だい?」
「庶民の食べ物に興味津々だな、王子様」
「実際、こっちのほうが美味しいしね。毒味とかされても冷めるだけだし」
「まあ、一理あるのか?」
「本格的に和食仕込んでみたんだけど、大丈夫かしら?」
「なかなか複雑なお料理でしたね。調味料も見たことのないものが多くて、勉強になりました」
ご飯とみそ汁、青菜のおひたし、焼き魚、だし巻き、そして煮物。かなりの品数が並んでいる。
「短時間でよくここまでそろえたな」
「口に合うといいのだけど」
「うん、美味しいよ。僕は好きだな」
「ルイテル様、せめて私が食べた後に……」
「毒なんか入れてないわよ?」
「毒に中ってもナギが解毒してくれるさ」
「そういう問題じゃないんですって……」
「ところで、ナギ様。アーリックたちは何かあったんですか?」
「たぶんだけど酔った勢いってやつだよ」
「ああ……」
「もぐもぐ」
「あむあむ……クレハ、おかわり」
「エレノラ、貴方、その細い体のどこにそんなに入るの?」
「私、肉つかないの……背もそんなにだし、胸も」
「すぐ、リュディに抜かれるんちゃう?」
「うえ?私ですか?」
食後の片づけは清浄の魔法一発で終わるためかなり楽だったりする。
そして、食後に、ナギに連れられて施設の見学を行う。
「まずは、昇降機。まあ、さっき使ったからとばす」
「まあ、説明するまでもないわね」
「じゃあ、工房から紹介しよう」
「好きにしていいとは言ったけど、まさか工房まで作るとは」
「オレに好きにさせたのが間違いだったな」
工房の中はアイヴィーが使いやすい高さの大きな机があったり、測量のための器具がいくらか置いてあるだけだった。
「まあ、素材とかは全部腕輪の中だしな」
「そのうち設計図とかで散らかると思うけどな」
「ですね」
「あの、この部屋に地下ありましたっけ?」
ペトラが早速階段を見つける。
「ああ、さっきキーリーと掘った」
これにはルイテルも驚いている。
階段を下りると(ナギはアイヴィーを抱えて)、そこには試験管やそのたぐいの道具が並ぶいかにもな研究室になっている。
「リュディ、うかつに障っちゃだめよ。爆発するかも」
「爆発するんですか!?」
「さすがにそんな危ないもんはおいてへんよ」
「で、となりは?」
「隣はナギ兄の部屋。特に何もないけど」
「ああ、机しか置いてない。基本どっちかの部屋で研究してる」
「じゃあ、上が機巧、下が薬、で、もう一つが魔法ってところ?」
「そうだな、一応暴発する可能性も考えて壁に魔法抗性を与えてる」
「あと二つぐらいあるのは?」
「ああ、それは」
ナギが廊下の奥にある部屋のうち一つを開ける。
「こっちが発酵食品用の発酵蔵。で、もひとつは酒蔵だと思って」
「なるほどね」
「いやぁ、ここまで改造してくるとはね」
「まだまだこんなもんじゃねぇぞ。次行こう」




