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途上世界のクレセント  作者: 山吹十波
#03 黒の勇士編
83/131

#scene03-24



「それで、どういう言い訳をしてくれるのかしら」

「実はあの後色々あってな」

「それで通ると思っているの?」

「……ちゃんと話します」


ソファに座るクレハと床に正座のナギ。

そして起こったことすべてを話し終えるまで冷ややかな怒気が部屋を包む。


「まあ、いいわ。貴族だし、重婚ぐらいは覚悟してた」

「ほんとにすまない」

「相談なしだったからキレてるんだけど」

「……まあ、籍はまだ入ってないけど恐らくシャノンは確実に娶ることになりそうだ。アーケインさんもそのつもりだろうし」

「というか、貴方。なんで普通に襲われてるのよ……」

「据え膳食わねば……っていうだろ?」


ナギの目の前の床に刀が刺さる。


「この場合は言わないわ」

「マジごめんなさい」

「まあ、いいわ。次からは相談してね」

「了解っす」

「じゃあ、自己紹介するわね。クレハ・ヒューゲル=シュヴランよ。一応、この人の正妻。で――」

「キーリー・シュヴランや。ナギ兄さんの妹になるな。まあ、血は繋がってないけどな」

「エレノラ・ソランジュ・ザヴィアー。魔術師。よろしく。こっちは、クラ」

「にゃ」

「シェキナか。珍しいな」

「知っているのか、アーリック」

「ああ、ヘルミオネに仕える聖獣、ミトロンと対になる生き物だな」

「ほー……ミトより賢そうに見えるぞ」

「にゃ!」「きゅっ!?」

「まあ、この猫の世話もリュディに頼むわ」

「了解です!あ、リュディヴィーヌ・ルシェです。使役師です!よろしくお願いします。クレハ様?奥様?」

「クレハでいいわよ」

「じゃあ、クレハさんで」

「よろしく、リュディ」


クレハが猫を抱えてリュディに手渡しそのついでに頭をなでる。


「クレハさんって、なんかナギさんに雰囲気似てますね」

「そう?」


少し機嫌がよくなるクレハ。

そしてそれを変なものを見る目で見ているキーリー。


「クレハがデレてる……」

「そんなに驚くことか?」

「だって、ナギ兄。クレハやで?」

「いや、最初はあれだったけど、割とすぐあんな感じだったぞ?アイツ」

「うそやん」

「キーリー、義妹でも私は容赦しないわよ」

「……ごめん」

「で、他は?」


「アーリック・クラウジス。剣術師だ。ヴェルカ人だが、よろしく頼む」

「へぇ、ヴェルカの人に会ったのは初めてね」

「うちもや――へぇ……なるほど、“狂”属性か。ナギ兄、これ大丈夫なん?」

「対策は取ってる。ゆくゆくはアーリックが魔力を使いこなせるようにする」

「とんでもないことを考えてるな……」

「えっと、私はパンドラ・カステレード。聖術師です。一応、アーリックの奥さん候補、なのかな?」

「お前がいいのなら」

「なるほど」

「ちなみに元・教会の聖女でアーリックが一目惚れしたから攫ってきた」

「流石の行動力ね」

「そんなんは行動力とは言わんよ……」

「まあ、私も攫われてきたようなもんだけど」

「エレノラ、だったか?攫ってきたのか?」

「学園都市が“魔”属性で持て余してたからもらってきたの」

「なるほど、面白い」

「じゃあ、残り二人」


「アイヴィー・サイアーズと申します。機巧技師です。見ての通り脚がダメです。ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします」

「シャノン・レヴェリッジです。暗殺者です。元・“蒼き太陽”所属、レヴェリッジ家の長女です」

「……ナギ兄」

「なんだ、妹よ」

「とんでもないの連れてきたな」

「そういうわけだからお前もいろんな開発を手伝ったもらうぞ」

「なるほど、わくわくしてきた」

「……お二人は本当に血が繋がってないんですか?」

「うん」「そうやけど」


シャノンの疑問に即答する似たもの義兄妹。


「まあ、こんなところか。これからはこのメンバーで活動していくことになるけど……ん?」


玄関が開く音がする。


「シャノン、時間は?」

「13時ですね」

「……昼食食い損ねたな」

「どういうこと?」


リビングの扉があき、ルイテルとペトラが入ってくる。


「やあ、昨日ぶり。なんか増えたね」

「ルイテル王子、紹介させてくれ。妻のクレハと妹のキーリー。それとエレノラだ。さっき合流してな」

「なるほど、これで全員かい?」

「今のところは」

「簡易で悪いけど弟の時間を取ってきたから全員で来るといいよ」

「は?正気か?」

「ナギ様、口調が」

「あ、すまない」

「というかその前に、僕も入れてくれないかな?」

「は?」「ちょっと待ってください、ルイテル様突然何を言い出すんですか!?」

「いや、だって、公爵になったはいいけど、やることなくて暇だし」

「だったら領地をもらえば……」

「手伝いうぐらいならしてもいいけど、自分で運営とか面倒だし……だからといってその辺の貴族の領内に住んだら増長するし」

「まあ、王子が入る分には別に構わないんだけど……」

「いいんですか?」

「いやだって、オレ、貴族だけど政治関係ダメだし、王子居たら色々その辺楽かなって」

「政治方面でも力のごり押しになりますね……」

「それに、領地、もらえるんだろ?」

「そうだね、割と重要なところを任せたいと思ってる。あとで、その件に関係ある侯爵2人に会ってもらいたいけど、いいかな?」

「まあ、いいや。だが領地を与えられるとオレは好き勝手やるぞ、ルイテル」

「望むところだよ、ナギ」


なぜか分かり合った二人が握手し、シャノンとペトラがため息をつく。


「……私、こういうのダメだからシャノンがいた方がいい気がしてきた」

「これでも商家の娘ですからね。でもこれは予想外です」

「えっと、ルイテル様、私はどうすれば」

「今まで通り秘書ってことで僕についてきてくれてもいいけど、どうする?」

「――というかペトラは結婚とか大丈夫なの?」

「……急にしゃべったと思ったらえぐいこと聞くなぁ、エレノラ」

「私も一応貴族の娘だから、気になって」

「わ、私は三女ですからね。家も子爵家ですし」

「んー、じゃあペトラ、僕と結婚するかい?」

「えええ!?」

「まあ、その辺は二人で話あってくれ。じゃあ、ルイテルの加入手続きと、シャノンの婚姻の手続きしてから城に行くってことでいいか?」

「わ、わたしも入れてください!と、とりあえずルイテル様の補佐をっ」

「ナギさん、私とは結婚してくれないんですか?」

「いやアイヴィーは無理にオレと結婚しなくても……」

「歩けもしないこんな女を貰ってくれるのはナギさんぐらいだと思っていますが」

「……どうしたらいい、クレハ」

「でも聞いた感じアイヴィーの技術は必要なのよね?」

「まあ、奪われると困るっちゃ困る」

「じゃあ、囲っちゃいましょう」

「見習いたい思い切りの良さ」

「3人で固めてこれ以上余計なのが入ってこないようにしないと……」

「そうですね」「お役に立てるかはわかりませんが」

「………………」

「……ナギ兄、思ったより尻に敷かれてる?」

「言うな」



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