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途上世界のクレセント  作者: 山吹十波
#03 黒の勇士編
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#scene03-21



「……興味あるのはいいんだけど、とりあえず、次のあれどうにかしてね?」

「あれ?―――何だあれ!?」


帝国と法国の国境にある山の方からこちらに向かって白い軍勢が押し寄せている。


「ナギ様、あれは爆裂ウサギです」

「へ?なんだその物騒な名前……」

「群れで行動する魔物で、とても臆病で、追いつめられると自爆します」

「長生きはできなそうだな……で、そいつが何であんな数」

「んー……イグナート山脈には氷の亜竜が住んでるって聞いたことあるけど、もしかしたら今の魔法の強力な魔力の波で目覚めたかな?」

「おい、そういうことは最初に言っておいてくれよ」

「ナギ様、かなり奥ですが大型の竜の姿が」

「……パンドラ」

「え?私?」

聖顕領域(セイン・アラト)の準備しておいてくれ」

「え、あ、了解」

「さて、どうしたものか――リュディ、会話できないか?ミトと似たようなものだろう?」

「あの、そこまで賢くないみたいで会話は難しいかと……」

「仕方ないな」


ナギが機巧装置を起動させ、術式を展開していく。


「広域魔法で一掃ですか?」

「いや、そこまで無駄に魔力使わなくても何とかなる」


展開しているのは闇の術式。


「ウサギの群れが連なっていてよかった、影爆弾(シャドウボム)

「聖顕領域!」


ナギが投じた黒い塊は、群れの中央付近に着弾する。

それと同時に、パンドラが守りの結界を展開する。

影爆弾によって一撃で死亡したものはいいとして、瀕死になったウサギたちは自主的に自爆をする。その規模はかなり大きく、周りの仲間を吹き飛ばし、それによって死にかけた個体がまた自爆する。その繰り返しであっという間に爆発の波が広がり、こちらに迫っていた白いもふもふの海も山側にいたものもきれいさっぱり消え去った。


「よし、全消し」

「流石です、ナギ様」

「いや、地面ボコボコなんだけど……」

「いいか、ルイテル様。気にしたら負けです」

「まあ、崩れたのは法国側だし、いいか……」

「いいんですか!?」

「だって、あんな広範囲のクレーター埋めるの大変じゃないか……どれだけ地に特化させた機巧装置がいると思うんだい?」

「まあ、掛ける日数にもよりますが……」

「で、肝心の亜竜とやらは?見当たらないけど」

「今の爆発で死にましたかね?」

「きゅう!きゅ、きゅい!」

「あ、まだ生きてるそうです」

「そうか――というか、お前戻るの早くないか?」

「きゅうぅ!」

「終わったと思ったからといた、と」

「今の一言にそんな意味が……」

「ぺトラ、深く考えたら負けだよ」

「でも、まあ、向こうから襲ってこないなら放置でいいか」


ナギが武器をしまおうとしたとき、山の方から明らかにお怒りになっている声が聞こえてきた。


「ああ……ダメだな」

「ダメだねぇ……」

「どうしましょう、ナギ様」

「どうしましょう!?ルイテル様!!?」

「逃げるか」「逃げますか」「もう、逃げる?」

「ええ!?いいんですか!?」


即断したナギ、それに続くシャノン、ルイテルの息の合った言葉にぺトラが驚愕する。


「アイヴィー、魔力の波形を意味もなく放出し続けるだけの機巧装置組めるか?」

「はい、少し時間があれば」

「それを法国の方に投げて全力で逃げよう」

「なるほど、法国の方に行けば聖騎士あたりが何とかするでしょうしね」

「そうそう、追手も減らせるかもしれないし」

「じゃあ、作りますね」


いくつか取り出したガラクタに機巧式を刻み込み、ものの数分でナギのオーダーしたものを作るアイヴィー。


「何でもいいので核になる魔宝石いただけますか?」

「火のCクラスでいいか?」

「十分すぎますね――はい、完成です」

「よし、じゃあ、これの耐久性を無理やり上げて……よし、アーリック!」

「どうした?」

「これを思いっきり法国の方に投げてくれ」

「わかった。やってみよう」


アーリックが投げた装置は綺麗な放物線を描き遠くへ飛んでいく。


「これでいいのか?」

「ああ、ありがとう」

「あれ本当に意味あるの?」

「「さあ、どうでしょう?」」


ナギとアイヴィーが同時にそういうとぺトラの額に青筋が浮かんだ気がした。

もっとも、それを聞いた主人であるところのルイテルはただ爆笑しているが。


「とりあえず、しばらく様子見かな?アーリック、パンドラ、悪いけどまだ警戒は解かないでくれ」

「ああ、構わない――が!?」

「えええ!?」


山の方から土煙を上げて高速で駆け下りていく竜のような生物が、こちらには目もくれずに通過していくのを見た。


「おおおお!?」

「あら、うまくいきましたね」

「流石ナギ様です」

「流石に驚いたな」

「そうだね。亜竜なんてそうそう見るもんでもないし」


「ル、ルイテル様。こいつら全員ちょっとおかしいですよ!?捕まえた方がいいんじゃないですか!?」

「どうどう、ぺトラ、落ち着いて。いや、しかし、本当にあんなので釣られていくとは……」


「……あれ?」

「戻ってきてないですか?」

「戻ってきているな」

「戻ってきてるわね」

「あー……装置一撃でつぶされちゃったかな?」

「ナギさん、ミトがまっすぐこっちに向かってくるって」

「ああ、ここに魔力の塊みたいな毛玉がいるからそうだろうな」

「……ミトをデコイにすれば?」

「だ、ダメですよ!パンドラさん!」

「いや、本気じゃないわよ?」

「というかこれオレらが魔法ぶっ放したというかミトのせいじゃ」

「で、どうするんだい?もう見えるところまで来ているけど」

「まあ、狂ってない亜竜なら殺せると思うけど……」


ナギが赤い魔宝石を杖の機巧装置にセットすると火の術式を展開し始める。


「あの、ナギ様。見たことのない術式なんですが……」

「ああ、これ?使ったことなかったっけ?とりあえず、氷だから火で何とかなるかなと思って……」

「氷の亜竜とはいえ、属性的には水になるのでは?」

「どうなの?王子様」

「水と風の混合属性になるはずだけど……」

「じゃあ、もう、火でいいよな」

「ナギ、アイツもうすぐ着くぞ」

「ああ、うん。こっちももう撃つよ――いけ!」


恐らくミトをめがけて走ってくる、少し獣じみた竜へ向けてまっすぐ火焔の衝撃波が奔っていく。

それは、竜の体に衝突する直前に極大の炎の塊となり、衝突すると同時にすさまじい音を立てて破裂した。


「まあ、威力絞っててよかった」

「……ちなみに今ので何割だい?」

「1割」

「……今までで一番ひどいクレーターが出来ているんだけど」

「気のせい気のせい」

「……亜竜の体半分消し飛んでますが」


改めてルイテルとぺトラはナギの常識外れ具合を確認した。


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