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途上世界のクレセント  作者: 山吹十波
#03 黒の勇士編
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#scene03-20

ナギを先頭にして帝国側の関所へと入ろうとしたものの、やはりというべきか、待機していた兵たちに拘束された。

逮捕、というわけではないが、周りを取り囲まれたまま関所の中の一室へと連行される。


ナギがのみがソファに座らされ、しばらく待つと、かなり容姿の整った白金の長い髪を持った男と、茶髪の落ち着いた雰囲気の女が入ってくる。

ナギの眼で見る限り、相当の手練れ。しかも王族と貴族である。


「やあ、初めまして」

「初めまして、王子様」

「なんだ、僕のことを知ってるのか。帝国への入国履歴はなかったはずだけど」

「いや、今見た」

「……なるほど、そういうタイプか」


彼の青い目――の反対側の碧の眼の奥で何か術式が動いたのが見えた。

どうやら魔眼である。


「それで、なんで拘束されてる?」

「わからないかい?」

「思い当たる節が多すぎて」

「はははー、面白いね君」

「ルイテル様、真面目にお願いします」

「ああ、ごめん。ぺトラ。まあ、自己紹介すると、僕はルイテル・リゼリア・ヴィーラント。一応、継承権放棄して、今は公爵家の当主なのかな?まあ、あまり興味はないけど」

「補佐官のペトラ・フェーレンシルトです」

「ああ、うん。ナギ・C・シュヴランを名乗ってるものです――で、どれがバレたんでしょう?」

「どれって……こちらで掴んでる限りでは、ガルニカで色々やってくれたのと、王都で色々やってくれたのかな?」

「あー、良かったあと三つ四つあるけどバレてなくて……」

「聞き捨てならないけど、まあ、今はいい」

「やっぱり、帝国軍を巻き込んだのがまずかったのでしょうか?」

「いや、あれは問題ない。むしろ、オーシプにかなりの借りを作れたし」

「じゃあ、王都の方ですか」

「そうだね。元王国貴族が挙兵してかなりの数の軍が帝国に攻めてきているね、君のせいで」

「マジですか」

「マジだよ」

「王国としては君たちの正当性を主張してくれているから、まもなく到着する軍を片付けることは何の問題もないけど、こんな私怨で発生した、しかも男爵家のせいで発生した戦争に軍隊は動かしたくないわけだ。まあ、軍部の連中はどちらかというとしたいんだろうけど」

「なるほど、つまり、お前らで何とかしろと?」

「まあ、そういうことだね」

「敵の数は」

「3000ぐらいかな?ワイバーンも数騎確認されてるけど」

「………なるほど」


ルイテルが広げた地図の上に駒を置いていく。


「たぶんこんな感じの布陣になると思うよ」

「なるほど……じゃあ、アーリックが前な」


そういうと剣士の駒を一番前に置く。


「オレがその後ろで補助、パンドラは魔法で遠距離、アイヴィーはとりあえず一緒に待機、リュディはさらにその後ろでミトへの指示」

「わ、わかったわ」「私はまだ武器ができてませんから今回は様子見ですね」

「がんばりますね!」「きゅい!」

「私はどうしましょう?」

「遊撃」

「承知しました」

「ミト、ワイバーンぐらいなら何匹いても大丈夫だよな?」

「きゅい!」

「パンドラ、号令したら真っ先に敵の真ん中にでかい魔法撃ち込んでいいぞ。それで大方死ぬだろう」

「いいの?」

「いいよ。ただ、そのあとはアーリックとオレに当たらないように適当な威力で頼む」

「わかった」

「魔法でのサポートがあると戦闘もずいぶん楽になる」

「そ、そうかしら?」


なぜか照れるパンドラとそれを見つめるアーリックを放っておいて、ナギは立ち上がる。


「それで、何時つくんだ?」

「ネストリ湖渡ってベルーオに着いたのと、元ルーツ領の連中がフラヴィを通過したのが昨日だから、そろそろくるんじゃない?」

「オレたちよくエンカウントしなかったな」

「運がいいんでしょうか?」

「どうだろう。しかし、わざわざ法国の領土侵犯してまで攻めてくるとは思わなかったなぁ」

「法国には一応許可を取り付けてるみたいだね?まあ、君たちがどうというのは実際結構どうでもよくて、帝国と戦争して戦果を挙げるぐらいしか彼らに生きる道が残されてないって理由だろうけど」

「まあ、女王陛下は使えない奴は切り捨てる系の人間だからな」

「ふーん、先代や王子たちとは話は全く通じなかったけど、女王陛下は話ができそうだね?」

「さて、そろそろ来そうか?」

「きゅう、きゅきゅ、きゅーい」

「あと20分ほどで来るそうです」

「ほうほう、相変わらず便利だな。アイヴィー、パンドラに機巧杖の使い方を教えてやってくれ」

「わかりました」


パンドラの能力は回復というよりも攻撃寄りで、ナギの作った機巧杖などを持たせることによって術式の実行速度が格段に上がり、発動できる術式の規模も大きくなるため極悪の魔法砲台が現れることになる。


興味本位でついて来たルイテルが、試し撃ちによって街道沿いの森の一角が消し飛んだのを見てひきつった笑いを浮かべていた。

撃った当の本人ははしゃいでおり、その伴侶(予定)もなぜか誇らしげである。


そして、十数分で現れた編隊を見た直後、パンドラは迷わずナギが設定している最上級の聖属性破壊魔法をスタンバイし始めた。


「うん、僕は策を講じて敵を殲滅するタイプの指揮官だったけど、ここまでごり押しされると策とか関係ないよね」

「だろうな――じゃなくて、でしょうね。私もここまでパンドラが攻撃魔法に飢えてるとは思ってませんでした」

「もう、敬語とかいいよ。それより、君、錬金術師だったと思うんだけど」

「え?ああ、オレはなんでも適度にこなせるタイプなんで」


そういうと、自分のロッドを回して見せる。

そして、耳につけた無線を起動する。


「シャノン、きこえてるか?」

「『はい、聞こえています」』

「じゃあ、予定通りに――ああ、別に殺さなくていいから」

「了解です。あと、気を使っていただかなくてもいいんですよ?」

「やりたくないことを進んでさせるほど鬼じゃないつもりだけど」

「わかりました。ありがとうございます――まあ、この程度の者と戦っても何の快感も得られませんけどね。やはり、ナギ様でなくては」

「オレの周りは戦闘狂ばかりだな……」

「やはり、ナギは強いのか。今度本気で手合わせをしてもらいたいところだ」

「アーリック、お前もか」


隊列を組み終えた元王国軍から、1人の男が歩み出て、拡声器のようなもので何かを話し始める。

しかし、その瞬間、ナギはパンドラに合図をした。


「ねえ、一応聞いてあげないの?」

「はは、ルイテル殿、いいですか――時間の無駄です」


パンドラの展開していた術式が弾けるとともに空に展開された無数の魔法陣から白い雷が敵の陣営を焼き尽くす。

悲鳴が上がり、ワイバーンが逃げ出そうと暴れ始めるが、そこへリュディがミトを投じる。

空に逃げた飛龍たちは、彼らよりも自由に空を駆ける白竜によって次々食いちぎられていく。


「おおわぁ」

「ねえ、シュヴラン男爵。あれは……」

「お?ナギ、そろそろ出ていいか?」

「そうだな――いや、待て」


走り出そうとしたアーリックをナギが制した瞬間、敵の陣営の後方、魔法使いたちが一斉に爆ぜた。


「シャノンさんに手伝っていただいて私の能力範囲を経由地点を立てて伸ばしたんです」

「能力というと……」

「ええ、彼らの持っている機巧装置。すべてサイアーズ製ですので、ジャックするのは簡単でした」

「恐ろしい技能だな……」


すでに敵は恐慌状態だが、ナギが制していた手を下げたことでアーリックによるほぼ虐殺ともいえる戦闘が始まる。

一応、殺さない方向でと入っているが、アーリックが力の入れ具合をミスすれば敵は即死だろう。


「……一応、聞きたいんだけど、最初のあの術式見たことないんだけど」

「あれは聖属性広域破壊魔法天怒怒涛(マスティマ・レスト)。ああ、ランクはSSSかな」

「あの白い龍は?」

「ミトロン」

「……魔術師部隊が全滅したのは?」

「機巧装置へのクラッキング」

「…………あのバカみたいに強いヴェルカ人は?」

「アイツはただ単純に強いだけだ」

「君のパーティーとんでもないね」

「楽しいだろ?」

「うん、まあ。かなり興味はあるけど」

「ル、ルイテル様!?」


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