#scene03-19
翌朝、疲れがとれたかとれてないかはさておき、ナギたちは移動のための準備を始めた。
「午前中のうちにツォーリを越えて帝国に入ろう」
「そうですね、まあ国境越えるのにほぼ確実に幻術使わないとダメですけど」
「国境管理の役人を騙せるほどの幻術式を機巧装置なしで扱える人がいるんですか?」
「ああ、ナギとシャノンが使えるぞ、パンドラ」
「すごい……ちなみに、アーリックは」
「表向きには火だ」
「……表向き?」
「ナギ曰く、本質的には違うらしい」
「よし、行くか。とりあえず国境手前まではバイクで」
「了解です」「わかった、パンドラ後ろに」
ナギ自信もアイヴィーに手を貸し、自分の後ろに乗せる。
「パンドラは帝国に行ったことは?」
「ない。そもそも、法国から出たこと自体ないんだもの」
「そうだったのか。オレも帝国は初めてだ。何があるんだろうな」
「何か美味しいものがあればいいな」
「街についたら探してみよう」
「シャノンさん、帝国ってなにがあるんですか?」
「帝国は大陸で一番科学技術が発展している国だと言われています。ナギ様曰く、軍用の列車という乗り物があるらしいとのことです。あとは、そうですね……」
「どんな機巧装置があるのかわくわくしますね。帝国には独自進化を遂げたものが多いらしいですし」
「そうだな。あとは、アーケインさんと約束した土地の確保もしないと」
「レヴェリッジの工場を招くんでしたっけ?」
「工場どころかなにもかもを。せっかく新しいものが作れても、売り込むためのノウハウも持ってない上に安定生産もできないしな」
「なるほど」
「まあ、何がなんでも帝国には売り込むけど。死の商人と呼ばれる覚悟はある」
「ナギ様は何を開発しようと?」
「何を開発しても軍に配給されれば戦争に使われると思うんだなぁ」
「私としては詳細の気になるとても興味深い話ですが、あまり外でしない方がよろしいですよ?」
「まあ、外では気を付けるよ」
一時間もしないうちにツォーリに到着し、街にはいって起こるであろう面倒事を回避するために全員で迂回する。
再びバイクに乗り、20分ほどで法国側の関所にたどり着く。
「さて、どうやって越えるか」
「パンドラとアーリックを視覚阻害系の術式で覆いましょう」
「まあ、それが早いかな……二人ともあまり触れられないように気を付けろよ」
そういうとナギとシャノンが同時に術式を展開した。この程度の術式ならば、そこまで難しいものではなく、機巧装置無しでも扱うことができる。
「効果時間はそれほど長くないので、急ぎましょう」
「パンドラはアイヴィーと一緒に。リュディも二人について先に」
「私の方に視線を集めさせるのですね?」
「悪いな。オレたちは少し時間を空ける」
「いえ、構いませんよ。仲間のためですから。では、いきましょうパンドラ、リュディ」
「はーい」「すみません、お願いします」
アイヴィーの車椅子を押して中へ入っていく。
しばらくすると、アイヴィーから無線で連絡が来る。
『関所の中は人はいません。職員も一人だけです』
「わかった。ありがとう。10分ほど開けてそっちに」
『了解です。帝国側の関所って案外遠いんですね。かなり小さく見えます』
「へぇ、地図でしか見たことないからわかんなかったけどそんなことになっているのか」
「ナギ様。最近、アイヴィーばかり構っていませんか?」
「え?そうか……?」
「私もたまには構っていただかないと、拗ねますよ?」
「……それって自分で申告するものか?」
「ナギ、母が言っていたが、妻というのは常に夫の愛を感じていたいものらしい」
「……お前の両親のなかがすごい良いっていうのはわかった。あと、シャノンはまだ妻ではない」
「そうなるのも時間の問題だろう」
「そういうアーリックこそ、パンドラとはどれぐらい打ち解けた?」
「まだまだだな」
そんな話をしながら待つこと数分、アーリックにかけた術が解ける前に関所に入り手続きを済ませる。受け付け職員にはとくに怪しまれることもなく無事通過。出入り口から少しはなれた場所で待っていた3人(と1匹)と合流し、帝国方面へとむかった。
「いよいよ帝国か。クレハはもうついてるだろうか」
「どんな方なのか会うのが楽しみです」
「いきなり斬りかかったりするなよ?冗談通じないから。シャノンだから即死はないと思うけど割と酷い怪我を負うぞ」
シャノンへの忠告後、ナギは改めて前方を見る。
帝国側の関所の入り口には、軍服を着た人間が立っているが、警備のためというには少し数が多い。
「なんか、嫌な予感がするな」
「そうですね……」




