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途上世界のクレセント  作者: 山吹十波
#03 黒の勇士編
70/131

#scene03-11

昨日投稿するはずだったものです。

すっかり忘れていました。申し訳ありません。



「いたぞ!捕らえろ!」


ナギとアーリックが城の階段を駆け上がる。

それを追う所謂近衛兵と呼ばれる兵士たち。


今のところなんの魔法も使ってないので二人の走る速度は人並みか少し速いぐらい。もっとも、無駄に重い甲冑をつけている奴らや、大層な装具でガチガチの奴らばかりなので相手が遅いだけなのかもしれないが。


「最上階って何があるんだ?」

「城なんて入ったの初めてだからよくわからん」

「じゃあもうこの辺でいいか──アーリック、上に警戒しながら下の雑魚抑えてくれ」

「任された」


突如、アーリックが走るのを止め、こちらに剣を構える。

威嚇のために軽く振って見せるが、一般的な長剣よりも少し長く重いその見た目からは考えられないような軽い音が空を切った。


「しばし、足止めさせてもらう。狭い階段なのが好都合だ」

「相手は一人だ!行け!」


階段の幅は大人二人並ぶと限界、程度の広さ。

どう足掻いても同時に掛かるのは二人が限界。

そして、このレベル差では百人いてもアーリックを倒すのは不可能に近い。


戦闘とは言えない戦いは数秒で幕を閉じることになる。

アーリックの先制で、剣を、鎧を、破壊され、浅くない怪我を負った兵士たちは階段から叩き落とされていく。


「最近の兵とはここまで弱いものか……腕がなまりそうだ」


剣を鞘に戻した瞬間、突然轟音が響き、天井が消え失せた。


「!?」

「おーい、アーリック。無事か?」

「ああ、怪我は無いが……これは?」


直上にあったはずの建造物はすっかりその姿を消し、青空の望めるようにリフォームされていた。


「まだちょっと制御できなくてな……やっぱり、竜から引きずり出した式は威力がおかしいな」

「竜を討ったのか?」

「少し前にな。といっても死にかけの地属性の亜竜だし、一人で討ったの訳じゃないけど。あのときはクレハと帝国軍がいたし」

「帝国軍はここよりも練度高いか?」

「まあ、火器使う訓練ちゃんとしてるし、連携もとれてるからな。正直、今の状況で相手が帝国なら少ししんどいな」

「それほど違うものか」

「とりあえずさっさと片付けよう。王国をでたらもっと落ち着いて話もできるだろう」

「わかった」


ナギは怪しげな光が明滅してる魔宝石を階段に落としながらアーリックの後ろを駆ける。


そして、広間のある階まで降りると指をならす。

その瞬間、今駆け降りてきた階段が消え去るのをアーリックは見た。


「あんな使い方をすると魔宝石勿体なくないか?」

「まあ、でも作ろうと思えばいくらでも作れるし」

「そういえば、魔導師ではなく錬金術師だったな……」

「本来、戦闘はオレの仕事じゃないのよ?」


そういうと、ナギは扉の前に立つ兵士をいつのまにか持っていた棒で叩きのめす。


「さて、ここが王様のいる部屋かな?」

「オレはどうしてればいい?」

「そうだな……この扉潜ろうとするやつ全員倒しちゃって。中からでも外からでも」

「中はナギだけで十分ではないか?」

「一応保険だよ。あ、できるだけ殺さないようにな。依頼人からのオーダーだし」

「わかっている。だが、こうも弱いと手加減も難しいな」

「だろうな」


剣の練度もいまいちな貴族のお坊ちゃんたちはまともに防御もできるものがおらず、ほぼ一撃で沈む。

それに、精神力が弱いので負けを悟るとすぐに逃げる。


「じゃあ、いくか」


ナギが全力の蹴りで扉を吹き飛ばす。


「……おい、守るべき扉が消えたぞ」

「じゃあこの孔守ってて」


なかにいるのは肥えた貴族と驚いた目をしている王族。第一王子も驚いた顔をしている。演技上手なのかもしれない。


「やあ、ギルドに討伐依頼が出てたから狩りに来たんだけど──あー、うん。ここに大体いるね」

「き、貴様。王の──「王の御前とかいうのはどうでもいいんだよ」──なっ、何を!?」

「いつの時代も、どんな国でも、愚王は討たれる。それが人の世の摂理だ」

「──儂が王座を降りればいいのか」

「その場合、次の王は?」

「第2王子を指名することになるだろう」

「あー、うん。残念──シャノン」

「はい」


突如、ナギの隣に現れた女に驚く一同。


「王子様方は?」

「全員捕らえています。取り巻きの兵は全て処分しましたが」

「それでなんだけど、とりあえず第一王子以外の王族の血が流れてる奴はとりあえず死んでもらうことになってるんだよな。あと、貴族は全員資産取り上げで、このクーデターが終わったあとに王によって再構成する予定らしいよ、まあ、聞いた話だけど」


様々な感情が沸き上がりもはや言葉を作ることも出来なくなった貴族たちが顔を赤くしたり青くしたりしながら震えている。


「とりあえず片付けようか。シャノン、引き続き外を頼む」

「承知しました」

「それじゃ、第一王子様──いや、女王様。もう終わりでいいか?」

「ここにいる人間はどうするのかな?」

「とりあえず、椅子と合成しておいたけど。あー、いいこと思い付いた。城門に括りつけとこうか」

「そんなことしたら市民に殺されてしまうよ?」

「ほぼ自業自得だろう──アーリック、ちょっとこれ持っていくの手伝ってくれね」

「数か多いな」

「じゃあ、キャスター付けて、ロープで繋ぐから引きずっていって」

「階段で転けないかそれ」

「それはそれでおもしろいんじゃね」

「王子様はまた後で持ってくるから」

「わかった。そういうことです、父上。恨むなら自分と息子たちの無能さを恨んでください」

「ぐっ……」


王はナギによって王座ごと鉄柵で囲まれている。


「あなたたちがまともな政治を執り行わないせいで、そろそろ民は限界です。私がやらずとも、近いうちにこうなっていたことでしょう。このままでは国が滅びます。実際、人口は大きく減っていますし、他国と比較しても生産力が低い。法国との同盟すら危うい。自治州やルーツにちょっかいをかけている余裕は無いはずです。確かに戦争をすれば国力を回復できるかもしれませんが、それは勝てばの話です。現在の、我が国の練度では全滅もあり得ない話でない。賠償を払えるほどの余裕はない。技術も、資金も、一騎当千の優れた兵も、奇策をもつ軍師も居ない。産業もレヴェリッジがなければ死んでいるようなもの。唯一まともに動いている農業も、バカな貴族たちの圧政で農民たちがどんどん外に流れていっている。──そろそろ、理解しましたか?自分が“愚王”であることを」


そういうと第一王子──このときから、女王であるこの女は部屋を出る。

彼女にはまだやるべきことが山ほどある。


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