#scene 02-22
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「クレハ、随分買い込んだみたいやけど」
「そうね。これで頼まれて高い物は大方終ったわ」
「そんなに買って大丈夫なん?」
「大丈夫。さっきギルドの口座確認したら大幅にお金増えてたし」
「……ちなみに、どれぐらい?」
「7桁はあるわよ」
「ひえー……うちは師匠の遺産全部預かってるけど、全然そんな額には足りひんで」
「そうでしょうね。まあ、まともな稼ぎ方はしてないと思うけど」
共和国北部の中心都市・カミナ。
初代大統領シン・カミナが余生を過ごしたというこの街は、首都ブロッキ並みのにぎわいを見せていた。
「それで、どうする?もう一泊していく?」
「正直、この街の歴史都かには興味ないし、今から出れば日没までにはロデスに入れると思うわ」
「じゃあ、出発しよか」
時刻は既に昼過ぎ。街道に出ようという人間はほとんどいない。
軽食を片手に歩く2名を除いて。
当然、門を警備する兵士に止められることになる。
「おいおい、お嬢ちゃんたち。今から狩りに行くのか?やめといたほうがいいぜ」
「いや、うちらそろそろ次の街に移動しようかなと思って」
「次の街って、パジェスまでは馬使っても半日以上かかるってのに」
「まあ、その辺は何とかなるよ」
「キーリー、乗って」
「はいな」
どこから、いつのまに取り出したのか、謎の物体に跨るクレハ。
兵士の男がギョッとしていると、キーリーも慣れた様子でその背に乗る。
「じゃ!」
キーリーが手を振ると同時に加速。
街道に沿って一気に北上する。
余談であるが、クレハが運転するそれはナギが運転する速度の軽く倍は出ている。
「なあ、これ速すぎん?」
「大丈夫よ」
「ナギ兄はなんて?」
「あんまりスピード出し過ぎるなよって」
「ほら、もうこうなることがわかってたんや……」
どんどん後ろに流れていく景色。
途中何度か馬車を追い抜いて、40分ほどで共和国北端の街・パジェスにたどり着く。
「街に入る?」
「そのまま国境に行きましょう」
パジェスから北東へ10分ほど道を行くと関が見え始める。
「あ、うちまともに共和国でるの初めてかもしれん」
「まともに?」
「何回かカレヴィに密入国したことはあるけど」
「……何やってるの?」
国境でギルドカードを渡し、審査を受ける。
何が問題かというと、最後の更新がカミナの街で、それもほんの1時間前ということである。
「……どうやってここへ?」
「時魔法が得意なもので」
「いや、それでもこれは……」
「魔力量には自信がありまして」
「そ、それでも、しかし……だが、問題とするには」
「じゃあ、通りますね」
ギルドカードを何かまだ言いたげな職員から取り上げ、同じくもめてきたキーリーと合流。
「早く移動するのはいいけど、国境越える時面倒やなー……」
「もう街によってもカードを更新するのはやめようかしら」
「それはそれでいらぬ疑いをかけられると思うけど」
共和国側の関を超えると、続いてアドリア自治州への入国の手続きを行う。
といっても、こちらの方は特に問題もなく通れるのだが。
「え?なんでこんなにすんなり?」
「自治州だから法律が少し甘いのよね。今さっき出国の手続きでカードが更新されたっていうのもあるけど。あとは、私が公国の貴族だから」
「あー……アドリアの後ろ盾はグンナル公国やもんな」
アドリア自治州はそれなり大きな地域である。
人口こそ他の自治州と変わらないものの、首都の発展度においては大国の首都に勝るとも劣らない。
理由は一重にこの首都ロデスに存在する巨大な学園の数々。
魔法や剣術などそれぞれ専門に特化した学校があり、その中でも有名なのは魔法学園である。
大陸中から、知識を得るために優秀な若者と研究者たちを集めているこの街は、“ロデス条約”という特殊な条約によって守られている。
その内容とは、学園都市ロデスは独立性を持ち、大陸におけるあらゆる政治闘争の対象にはならないというものだ。また、アドリア自治州ではなく、このロデスという街だけが特殊な扱いになっているためか、この街以外はかなりすたれていると言っても過言ではない。
「さて、ロデスやで。わくわくするな」
「ブロッキとそんなに変わらないわよ?」
「でも珍しい魔導書とか、薬のレシピとかあるかもしれんやろ?」
「でもまあ、もうしばらく行かないといけないからもう一度バイクね」
「はーい」
小一時間バイクで街道を走り、ロデスの門が見え始めると、門の周りにいる人の数も多くなってきた。
「そろそろ歩こう。人轢きそうやわ」
「そうね」
周囲にはどこぞの制服を着ている学生たちの姿が多い。
「やっぱり、自主訓練みたいなので魔物とか狩ったりするのかしら?」
「さあ?この辺は薬草も生えてなさそうやし、いたとしても弱い魔物しかおらんと思うけど」
「ま、用を済ませたら早く出ましょう」
「ロデスの次はどうするん?」
「公国に入ると面倒ね……」
「ああ、勝手にナギ兄と結婚したからか……」
「運命的な物を感じてしまったんだから仕方ないでしょう」
「ナギ兄大丈夫なんかなぁ……」
「義母は話せばわかると思うけれど、義父義兄連中がいきなり斬りかかりそうね」
「物騒やなぁ……あ、門が、ってめっちゃ混んでるな」
「ほとんど学生ね」
学生たちに交じって列に並び、ロデスの街に入る。
未成年の人口が圧倒的に多いためか、酒場の様な店は少なく、全体的に街の雰囲気も落ち着いている。
「ブロッキと違って喧しくないんやな」
「酔っ払いがいないからね」
この街で宿を探すのは案外難しかったりする。
理由としては、この街にやってくる大人は学園側の招待によって街に来る人間が多く、専用の宿が学園側から手配されるからである。同じ理由で保護者達も街の宿は利用しない。
「さて、どうしようかしら」
「前来た時はどうしたん?」
「あそこに見える一番高いホテルに泊まったわ」
「もうそこでいいんちゃう?」
「まあ、この時間だとそこぐらいしか空いてないとは思うけれど」
「必要経費やって。ナギ兄も許してくれるよ」
「そこまで高額というわけじゃないわ、金貨が数枚消えるぐらい」
「十分高いって……」
次回より
#03 王都騒乱編




