#scene 02-21
起き上がる金髪の男を確認すると、ナギはエンジンを掛けなおす。
「じゃあ、もう飛び出してくるなよ」
「ま、まてよ!オレの名前は中原颯太!こっち風に言うならソウタ・ナカハラ。多分だけど同郷だろ!?黒髪の黄色人種なんてそうそういないし!」
「気のせいだろ。うちは代々こんなもんだよ」
まあ、両親ともに日本人であるからこんなものなのではあるが。
「あ、オレはお母さんがアメリカ人だからこんな髪だけど、生粋の日本人だぜ!?」
「ああ、そう。よかったな」
本当に興味がなさそうにナギが呟く。
「ナカハラ様、主人がめんどくさそうなのでそのぐらいにしておいてくださいませんか。王国と法国認定のの勇者とはいえ、ナギ様の邪魔をするというなら容赦は致しませんよ」
「勇者!?こんな弱そうなのが!?というか何のための勇者なんだ?」
「王国がルーツ制圧に使う予定だったみたいですが、この方もそこまで阿呆ではないようで早々に王国を見限って冒険者をしているそうです」
「なるほどなぁ……」
「オレの知らないところで個人情報が駄々漏れに!?」
「それで、こっちのちびっこはなんなんだ?誘拐か?」
「ちがっ!?」
ソウタに綺麗なアッパーカットを決めて少女がこちらに一礼する。
「すいません、コレの連れのクラリッサと言います。特に攫われたとかじゃないので大丈夫です」
「じゃあいいんだけど。何かあったらすぐ騎士にでも言うんだぞ?」
「はい、心得ております。あ、お名前を伺ってもよろしいですか、見たところ結構な家格をお持ちのように思いますが」
装備の値段から推定したのだろうとは思うが、このちびっこは結構できる。
「まあ、いいか。私はナギ・C・シュヴラン。帝国で男爵位を戴いている」
「シュヴラン、男爵!?ソウタ、もう一回謝っとこう!下手したら大陸を敵に回すよ!?」
「な、なんで?」
右フックがソウタの腹に刺さる。
「なんで、アンタはシュヴランの名前も知らないのよ!田舎者の私でも知ってるのに!」
「ぐぇ……そんなこと言われてもオレこっちに来て3か月しかたってないんだぞ?」
「大陸の7名家は教えたでしょうが!」
「なんか海賊王とか魔王とか出てくる奴?」
「なんでそんな家続いてるのかわからないところだけ覚えてるのよ。先の大戦の時に活躍した名家と言えば、剣のヒューゲル、商のレヴェリッジと並ぶのが錬金術師アウグスト・シュヴランでしょうが」
「アウグストは義父に当たるけど、そこまで大したものかね」
「それはもう、もちろんですとも」
キラキラした目でこちらを見つめるクラリッサ。
「へぇー……じゃあ、達者でなクラリッサ。ああ、そうだ。飴をあげよう」
飴玉を投げ渡すと、その場を去ろうとする。
「まって、待って。お願いだから」
「なんだよ。帝国法で裁くぞ」
「ここは王国だから無理だよ!というか、さ。同郷の好でもう少し優しくしてくれてもよくない?」
「はぁ……もう二度と絡んでこないと約束するならこの場限りで優しく応対してやるけどどうする?」
「どうしてそこまでオレとの会話を嫌がる?これでもオレ強いから、なんなら仲間になってもいいけど」
「双銃士Lv.8程度ならいらねーよ」
「なっ!?」
自分の腰にさげている銃を手で隠す。
「もしかしなくてもステータス見えてる?」
「さてね。それで、お前と話してオレに何の得がある?」
「これでも王国内には結構伝手があるんだぜ?あ、そうだサイアーズの新型装置譲ってもらえるように手配しようか?レイモンドと結構仲良いんだ」
「なるほど、そう来たか。いいだろう。レイモンド・サイアーズに紹介してくるという条件でどうだろう」
「サイアーズとシュヴランが手を組めばレヴェリッジ社を抜いてしまうんじゃ……」
「おい、ソータ。お前よりこのちびっこの方が賢いじゃないか」
「すごいですねー、クラリッサさん。私よりも年下なのに」
「すごいでしょ?ねえ、その生き物何?」
「え?これはミトです。触りますか?」
ミトをふかふかして遊んでいるリュディとクラリッサは平和なのでこのままおいておくとして。
「じゃあ、あとでレイモンドに紹介するから王都まで俺の質問に答えてくれない?」
「可能な限りは」
「じゃあ、早速だけど。そのバイクってどこで買える?」
「まだ市販はされてない。聖貨数十枚はくだらないと思うから欲しいなら金貯めとくんだな」
バイクから降りると、腕輪の中に収納。
「悪い、シャノン。リュディ。ここからは歩きだ」
「構いませんよ」
「わかりましたー――あ、ミト!」
クラリッサのもふもふ攻撃に耐えられなくなったミトがナギの頭の上に避難する。
「少しぐらいいだろ?」
「きゅうう!」
「疲れたそうです」
「マジか。お前にもそんな感情あるんだな」
「というかこの生き物なんなの?モンスター?」
「まあ、そっちよりの生物だけど使役獣だから」
そう言いながらナギはぽんぽん、と頭の上の毛玉に手をやる。
「そういえば、ナギ様。普通に王都に入れるんでしょうか」
「まあ、大丈夫だとは思うけど。わざわざ自分の恥を発信するようなバカではないと思うし」
「あんたらここに来るまでに何やらかしてきたんだよ」
「まあ、色々あってな。捕まるようなことは一通り」
「この国の貴族は頭おかしいと思うけどやりすぎちゃだめだぜ?後々めんどくさいから」
「その後々をしようと思わないほどに叩き潰すのだよ。甘いな」
「ナギ様、西北西方向、魔獣です」
「へい、出番だぞ勇者様」
「ええ!?オレ!?」
そう言いながらも銃を構え、茂みから飛び出した獣を一撃で仕留めるソータ。
「中々ですね」
「見えたか?」
「ええ、ばっちり」
「そこは視えませんでした、っていうとこじゃないの!?」
「あのぐらいなら嫁の全力疾走の方が速い」
「あんたの嫁さん人間?……っていうか結婚してんの!?」
「悪いか?」
「え?あんたいくつ?」
「21」
「嫁さんは」
「確か19」
「すげー……」
そう言いながらナギの隣のシャノンを見るが、
「いや、シャノンは違うぞ」
「ええ、まだ」
「まだ!?このリア充爆発しろ!」
「というかお前いくつだよ」
「16だけど」
「あー……せっかく異世界に来たのに娼館とかはギリ入れない歳か。ドンマイ」
「だからって、クラリッサに手を出してはダメですよ?」
「出さないよ!なんでオレ度し難いロリコンだと思われてるの?大体アンタだって連れてるだろ?」
「リュディは痩せて小さく見えるけど13だから割とセーフだろ」
「ええ、貴族でしたら稀にそれぐらいで婚約とかしますし」
「貴族ずりぃよ」
「え?やっぱロリコン……」
「ちーがーう!」




