#scene 02-19
「えええ?何か光りだしましたよ!?」
「おおお?何が起こるんだ?」
その瞬間一際強くミトが輝き、そして元に戻った。
「えええ……」
「何も起こらなかったな」
「きゅう……」
「魔力が足りないの?」
「きゅい!」
「もう一回やってみていいですか?」
「ああ、でも無理はするな」
「はい!行くよ、ミト!」
「きゅうう!」
再びミトの身体が輝き始める。
先ほどよりも強い光だ。
「これは……」
「あ、何か来そうです!」
カッと一際強く輝くと、ミトの影がどんどん大きくなってゆく。
「おっきくなってる?」
「しかもこれは」
『これなら攻撃もできる』
「そりゃすげぇや……ん?まて」
「すごいねミト!というかミト、ドラゴンだったんだね!」
白竜に嬉しそうに抱き着くリュディ。
『この姿ならばリュディやナギを乗せて飛べるぞ』
「そうか。そりゃ是非乗ってみたいが。目立たないところでな……――というかお前喋ってるよな?」
『……テレパシーを使えるようになったらしい』
「レベル7で、適性属性も聖属性のほかに火と水が増えてるな……」
「すごいねミト!でもどうやって戻るの?」
『戻るのは魔力が切れるか、戻ろうと思えばいつでも戻れる』
そういうと毛玉の姿に戻り、リュディの胸に飛び込んだ。
「うん、さっきのもかっこよかったけど普段はふわふわのミトの方がいいな」
「きゅう?」
「あ、もう喋れないのか……というかさっきのは使役師しかできないのか?」
「きゅう」
「そうだ、って言ってます」
「今のをもっとスムーズにできるようになればリュデイとミトも大きな戦力になるな」
「私もお役にたてるのですか?」
「ああ。まあ、無理してすぐに強くなれとは言わないけど」
「でも、いつまでもタダで食べさせてもらうわけにはいきませんし」
「まあ、その辺は出世払いという事で……ほら、シャノンも帰ってきたし」
向こうからやってきたバイクがナギ達の前で止まる。
「どうだった?」
「はい、だいぶコツがつかめました」
「よし、じゃあそれはそのまま持ってていいぞ」
「え?しかし」
「気にしなくていい。量産してある」
「わかりました」
「じゃあ、そろそろ進むけど、今どのへんだろう」
「少しコルデの方に移動しましたからこのあたりかと」
シャノンがナギが持っている地図のある地点を指して言う。
そこはコルデよりもやや南の街道の上。
「しかし、王都に至る道だっていうのに全然人通らないな」
「仕方ありません、このご時世ですし、王都へはリュリュからオーブリー方面に出たところにある川を上った方が速いですから」
「なるほど、だけど王都方面からオーシプに行く荷物が一切何ってのもどうかと思うなぁ」
「それだけ帝国とは仲が悪いですから」
「じゃあ、とりあえずコルデは通り過ぎるから」
「そういえば手配されてると思いますがどうしますか?」
「普通たった数日で王都までたどり着けるような距離じゃないだろ。何とかごまかせるさ」
「そうでしたね」
移動時間はほんの1時間半ほどでイネス王国の首都ルシュールには到着するはずだった。
一応コルデの街には入らず、周囲をぐるっとまわった、のはいいが、そこで1度目のハプニングに遭遇する。
「ナギ様、どうかされました?」
コルデを少し離れたところで昼食を取り、一休みした後走り出した直後にナギが急停止する。
「なんか襲われてる」
前方にいたのは、黒っぽい茶色のコートを着た厳つい男を中心にした一団と、ひょろっとした弱そうな剣を抜いた数人が対峙している風景。
「えっと……どっちが悪者ですか」
「たぶん弱そうな方が盗賊……うん、強そうな方は商人だって」
「……どうしますか?そのまま放っておいても何とかなる気がしますが」
「でも、時間かかりそうだしな。すまない、一回降りてくれ」
「わかりました」「わかりました」「きゅい」
一度、バイクを収納し、前方に向かって進む。
「あー、えっと、御取込み中申し訳ないんだけど」
「なんだ?新手か?」
そう言いながらなぜか、汗だくの盗賊たちがこちらに振り向く。
恐らく、襲ったはいいけど思ったより強そうなのが出てきて困惑していたようだ。
「いや、そうじゃなくて。というかお前たちには用はない」
「とすると、私たちに用かな?」
「ま、そうなるな。どうする?思ったより護衛が少ないけど、助ける?」
「できればお願いしたい、術師殿」
「了解。報酬は弾んでくれよ」
そういうとナギはロッドを構え、男たちの中に突っ込んだ。
「ええ!?」
「なんだコイツ、ぐえっ!?」
「1人目」
うずくまる男を気にも留めず、すぐに次の相手の攻撃を開始する。
そして瞬殺。
「さて、2人目だ」
「背後が開いてんぞ!」
「ああ、そこね。開けてるんだよ」
「は!?うぎゅああ!?」
「ナギ様の後ろは私の場所ですので、入らないようにお願いします」
シャノンに切り捨てられ、地面に転がる。
どこから現れたのかわからないシャノンの出現にさすがに分が悪いと悟ったのか残りの男たちが逃げ出す。
「ま、逃がさないけどね」
「ええ?!」
「足元が!?」
「「ぎゃあ!?」」
突然発生した陥没にはまり、2人の男が視界から消える。
「まあ、こんなもんでいいか」
「すまない、助かった」
「まあ気にしなくていい、こっちはビジネスでやってるし」
「そうだったな」
男がこちらに歩いてくる。
「自己紹介をしよう。法国で商人をやっているヴァルラム・ベイリーだ。こっちは俺の部下たちだ。見た目こんなのだが、やはり武器を持って戦うのは不得手でな」
「まあ、商人だもんな。オレはクレセントのギルマスやってるナギ。あと帝国で領主なしの木端貴族やってる」
「貴族様だったとはな」
「いや、親父から継いだだけだから気にしなくていい」
「そうか。ならば、気にしないことにする。俺も親父から継いだだけの木端商人だからな」
「とてもそうは見えないが……商人Lv.8なんてめったにお目に掛かれないぜ?」
「!?――何故それを」
「ま、そういうのもオレの得意分野だってことよ。じゃ、報酬の話だけど」
「すまない、今は大して持ち合わせがない。商品はいくらかあるが、すべてエリゼの街に納品するものだ」
「エリゼだったら水運の方がいいんじゃないのか?」
「舟は今サイアーズの連中が買い占めてしまっていてな……どこへ行ってもすまないと謝られてしまって。父の代からの付き合いなのだが、王国貴族の傲慢さには勝てなかったようでな」
「なるほどなぁ……じゃあ、報酬は銀貨2枚ってとこで」
「……は?そんなんでいいのか?」
「情報分割引だ。なんだ銀貨2枚舐めてんのか?屋台で串焼きが2本買えるぞ?」
「いや、それは知ってるが、それぐらいでいいのか?」
「まあ、その代わり、アンタのとこの商会の連絡先教えてよ。なんかアンタ面白うそうだから。アレだったらギルドに入ってくれてもいいんだけど」
「ギルドの件は保留させてもらうが、そのぐらいなら」
そういうと懐から紙を取りだし数字を書き記した。
「これがうちの通信機の番号だ」
「通信機持ってるなんてすげーじゃん」
「父の代にコネで譲ってもらったものだ」
「じゃあ、オレの奴も教えとくからなんかいい商談在ったらいつでも連絡してくれ」
そういうとナギも数字を書き、それを手渡す。
「じゃあ、また会えたら会おう」
「ああ」
そういうとナギは去っていく。後ろをシャノンと毛玉を抱いたリュディが続く。
「ヴァルラムさん、なんだか珍しく長いこと会話してたけど、アイツなんなんですかね?」
「わからん。だが、親父譲りの俺の勘がアイツについていけば勝てると言っている」
「マジですか。ヴァルラムさんの勘は当たりますからね……」
「というかあの後ろにいた女、どっかで見たことあるなと思ったら、蒼の太陽の幹部だって。去年じいちゃんと親父が帰属に喧嘩売って殺されたときに居た気がする」
「マジか。何者なんだあの男……」
「まあ、何かあれば連絡してみるか……」
既にかなり小さくなっているナギの後姿を見て呟く。




