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途上世界のクレセント  作者: 山吹十波
#02 銀の暗殺者編
55/131

#scene 02-18


アリンたちと別れて10分ほどたって、シャノンは先ほどの事をナギに尋ねた。


「彼女たちの事、よかったんですか?」

「まあ、直接的に害になるなら潰してたけど、大丈夫だろ」

「……ありがとうございます」

「それよりも」


ナギが走らせていたバイクを一度停止させる。


「何をなさるんですか?」

「ここらでちょっといろいろ試しをしておきたくて。王都に近づいたらできないかもしれないし」

「試し、ですか?それは何の?」

「シャノンは大丈夫だと思うが、リュディは使ったことがないだろ?……おーいリュディ?」

「ふぇ!?あ、あ、すいません、ナギさん」

「まあ、いろいろあって疲れてるのはわかる。別に責める気はないが、あまり時間も取れないから、できればここで話を聞いてくれ」

「は、はい」


ナギは自分の機巧装置を取り出す。

それを2人に見せながら、


「とりあえず基本構造は一般の品と同じだ」

「……いえ、とても一般と同じという風には見えませんが」

「ああ、そうだった。見た目、というよりはシステムというか、使う場所の配置はそのままだってことで」


そういうとさらに魔宝石を1つ取り出す。


「この中央の円の中にこれを置くと―――と、こういう風に式の中に魔宝石が吸い込まれる」

「あの、どういう仕組みになってるんでしょう?」

「それはな、リュディ。オレにもわからん」

「ええ!?」

「出す時は出ろと念じながら円に触れるか、他の魔宝石を入れれば自動的に入れ変わるようになってる」

「なんでそんなに曖昧なんですか」

「正直解説するのが難しいし、自分でもよくわかってない部分の方が多い」


頭を掻きながらナギが言う。


「ともかく、使ってみましょう。リュディ、水の魔宝石を用意してください」

「は、はい」

「魔法を発動させるときは体内の魔力の流れを意識して、それを機巧装置に注ぐように考えればいい。あとは考えている魔法を機巧装置が変わりに実行してくれる」

「わ、わかりました」

「それでは私がお手本を」


比較的、大事故に発展し難い水の弱い魔法を用意するシャノン。


水弾(アクアブレット)


渦巻く水の塊が凝縮され、前方へと勢い良く撃ちだされる。


「こんな感じです。イメージはできますか?」

「はい!やってみます」


少し力み過ぎとも思うが、この世界であっても魔法を使わない人間にとってはこんなものなのだろう。


「あくあ、ぶれっと!―――あ、あれ?」

「まあ、最初は上手くいかないもんだけど」

「ですが魔力は上手く練れてました」

「だな、もう少し頑張ってみよう」

「はい!」


リュディが集中を始める。

ゆっくりではあるが、魔力が通り、水弾が形成されていく。


「行きます!」


射出された水弾は10mほどまっすぐ進むと消滅した。


「で、できましたよ!」

「おめでとうございます」

「二回目でそこまでちゃんと使えたら問題ないだろう、あとはいろいろ使ってみて慣れるしかないな。それと、リュディの魔法属性は“地”だから、地属性の魔法の方が扱いやすいと思う」

「わかりました」

「さて、それじゃあシャノン」

「はい?」

「バイク練習してみようか」

「わ、わかりました」

「……どうした?」

「いえ、危険はないと思うのですが、いざ自分が運転するとなると……」

「まあ、その気持ちはなんとなくわかる」


だが、と言いながらバイクを出す。


「まあ、やってみよう」

「……はい」


恐る恐るまたがるとナギの指示に従ってエンジンをかける。


「あ、動きました」

「そうそう、あとは」


ナギの指示に従ってさらに操作を進めると、前へと走り始める。


「なるほど、理解しました」

「さすが、レヴェリッジの娘。機械系は強いのか?」

「まあ、完全に理解したわけではないですけど」

「今は操作できれば十分だ」

「わかりました」

「じゃあ、少し走り回ってみるといい。オレはリュディの魔法を見る」

「はい」

「お、お願いします」


発進するシャノンを見送った後、リュディに指南を始める。


「無理に攻撃をしろとは言わないけど、オレたちに同行する以上は自分の身はある程度護れるようになっておいた方が良いだろう」

「そうですよね」

「あとは回復系の魔法だな」

「そういうのがあるとは聞いたことがありますけど、やはり一般庶民にはあまりかかわりのない物ですから」

「そういうものなのか?」

「そういうものです。たまに来る傭兵さんたちが持ってたりするのは見ましたけど、村の人で機巧装置を持っていた人はいませんでしたね」

「共和国では旧型が結構普及していたりするが、王国となると事情が変わって来るか」


そういうとリュディの足元にいた毛玉を拾い上げる。


「きゅ?」

「とりあえず、リュディはこの毛玉に守りを任せて、自分の退路を確保できる程度に攻撃できるようになるぐらいの目標で」

「はい!ミトとの訓練もした方がいいですかね?」

「んー……ちょっと試してみるか?この毛玉がどこまでできるのか」

「といっても、何ができるの?」


ナギが抱えているミトの目を見つめながらリュディが問いかける。


「きゅ、きゅきゅきゅう!きききゅ」

「……なんて言ってるんだ?」

「魔力を混ぜて活性させるとかなんとか……どういう事ですか?」

「つまり、だ。タクトを出してくれ」

「これですか?」


リュディが機巧式の刻まれた指揮棒を取り出す。


「それには魔力増幅の式が刻んであるから、さっきの機巧装置を扱うときと同じように魔力を通してこの毛玉に向けて撃ちだす感じだ」

「でも、私の魔力だけでミトを活性化させることはできるんでしょうか?」

「まあ、リュディは魔力少ない方でもないし、やれるだけやってみたらどうだろう」

「わかりました」

「お前が攻撃できればかなり戦力になるんだけどな」

「きゅ?きゅいい!」

「……それでなんて?」

「レベルアップすれば使えるって、どういう事ですかね?」

「まあとりあえず、魔力融合を試してみよう」

「はい……」


タクトをミトに向けて、集中し始める。


「いくよ!」

「きゅい!」

「おおお!?」


リュディから放たれ魔力を受けて、ミトの身体が輝き始める。


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