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途上世界のクレセント  作者: 山吹十波
#02 銀の暗殺者編
52/131

#scene 02-15


統轄ギルドを出ると、人通りもかなり増えているようで、行き交う人間たちで通りが埋め尽くされていた。


「なんか人多くない?」

「最近はこんなもんやで?なんか、王国の方の情勢がイマイチなせいでこっちまで移民が流れてきとるっていう話やけど」

「なるほどね」

「まあ、言うほど共和国も安定しているわけやないんやけど……それよりクレハ、ここからどうするん?」

「キーリーはどこか寄りたいところとかある?時間がない訳じゃないから多少は寄り道できるわよ?」

「せやなぁ……副都のカミナと、アドリアの首都のロデスかなぁ。この2つなら色々な魔導書とかそういう怪しい本が見つかりそうやし」

「じゃあ、船でコネンの方に行きましょうか」

「そうときまったら急ごう。早めにいかんと混むで」

「そうなの?じゃあ、とりあえずお墓参りに……」


街の端にある教会。

その裏手にあるのが、墓地である。

街によっては――特に教会が街の中央付近にあるような場合では墓地は街の外に作られることが多いのだが、この街の場合はそうではない。

通いなれた墓地へと入るとキーリーはまっすぐにシュヴランの墓へと向かう。


「師匠、悪いけどうちも帝国に行くわ。それと、ナギ兄とクレハが結婚してたで。ビックリやわ」

「とりあえず、コレはナギから預かったものです」


クレハが酒の入った瓶を墓の前に置く。


「クレハ、そんなとこ置いててもその辺の貧乏人が持っていってまうで」

「じゃあどうするの?」

「んー……」


キーリーはクレハの置いた瓶を拾い上げると、墓石に押し付ける。


「錬成」


墓石の中へと瓶がゆっくりと沈み、完全消える。


「こんなもんやな」

「さすがね」

「流石ですね」


予定外の第三者の声に振り向くと、そこには一人男が立っていた。


「なんや、またアンタか」

「誰?」


クレハもそちらに視線を向けつつキーリーに訪ねる。


「そちらのお嬢さんは初めましてですね。"蒼き太陽"所属、マイルズ・ガイナーと申します。階級は大尉です」

「しつこいでアンタ。"太陽"には入らへんって言ってるやろ?」

「元帥も貴女の技術を求めていますよ」

「うちはコレから兄さんと合流する。もう2度と顔見せんなや?あんまり邪魔するようやと……潰すで?」

「シュヴランの力がいくら強大とは言え、あなた一人でなにができると言うのです?」


どうやらこの男はキーリーの戦闘能力を随分と過小評価しているようだ。

クレハは余り興味なさげに欠伸をしながらキーリーのやり取りを眺めていた。


「はぁ……アンタなんかと話すことはないわ。大体、頭も力も弱いボンクラを交渉に寄越す時点で"太陽"も落ち目やな」

「……おい、貴様。あまりナメるなよ。我々が優しくしているうちに頷くといい」

「我々、っていうけどアンタ一人やん」

「はは、コレだから素人は」

「素人はアンタや」


キーリーが指をならすと同時に、墓場の周囲の数ヵ所から爆音が響き、男の悲鳴なども聞こえたような気がした。


「そんな下手くそなかくれんぼ、今日日孤児院の子供たちでもせんで?さて、街ん中でうちと接触できんからわざわざこんなけったいなばしょで待ち伏せしてるんやろ?はよせな、爆発で人が集まってくるで」

「き、貴様……」

「ねぇ、キーリー。長くなる?あんまり時間掛けたくないんだけど」

「ああ、ごめん。ちょお待ってな。すぐ終わるから」


そういうとキーリーは小瓶を取りだし、その中身を男の顔面に叩きつけた。


「安心し、ただのポーションや。ちょっと、まだ解毒方法の見つかってない毒物が入ってて、揮発性がすごく高い割に皮膚からの浸透率が尋常じゃないぐらい高くて、空気中では酸化されて30秒ほどで効果がなくなるだけのポーションやけど」

「なんでそんなえげつない物作ってるのよ」

「たぶんナギ兄が書いたと思われるレシピを再現してな。ああ、ほっといても5年ぐらいは生きれるから安心してや。というか、本当に効くのか知りたいから5年後にまた会お」


じゃ、というとキーリーが墓を出る。

クレハもそれに続くが、男はまだのたうち回っている。


「ところで、あの薬本物?」

「嘘嘘。そんなもん、まだ完成してへんよ」

「あ、一応開発はしてるのね……」

「まあ、あれは試作品やからもうちょい早く死んでまうかもしれんけど」

「え」

「たがら嘘やって」

「貴女、結構ナギに性格似てるわよね……血繋がってる?」

「繋がってないよ?とりあえず、船着き場に向かおか。アレクシス川を登ってコネンの方に向かう船があるはずやで」

「そうね」


背後では爆発に引き寄せられた野次馬たちが集まり始めているが、その人間の波をすり抜けながら門へとたどり着く。


「おお?キーリーちゃんじゃないか。薬草採集か?」

「いやいや、今日でこの街出ていくから。おっちゃんにも世話になったな」

「急だな。そんな噂聞いてなかったぞ?」

「噂もなにも昨日の晩決めたから。兄さんが結婚して帝国に住むらしいから、ついでに養ってもらおうと思て」

「なんだ、お兄さん見つかったのか。良かったな」

「ほんまやわ。そういえば、おっちゃん。コネン方面の船次何時かわかる?」

「あと15分後だな。これ逃したら次3時間後だ。というか、走っても間に合うか?」

「そのぐらいならなんとかなるわ」

「なんか秘策があるんか?」

「ナギがらの預かりものがね」


そういうとクレハは腕輪からバイクを取り出し、起動する。


「おおお!?なんや、それ!カッコええ!」

「このまま道なりにいけばいいのね?」

「あ、ああそうだが……お嬢さん、そいつはなんだ?」

「ナギ・シュヴランが改良に改良を重ねた機巧式エンジンを搭載した自動二輪車だけど?キーリー後ろにのって」

「わかった!流石ナギ兄、こんなもの作るなんて頭どうなってんのかな!!」

「それ誉めてるの?貶してるの?じゃあ、いくわよ」

「そんじゃーなーおっちゃん!他のみんなにもよろしく!」

「あ、ああ、達者でな!」


一瞬で時速70キロ近くまで加速する。


「はやっ!?」

「船、乗れるかしら……」

「たぶん、シーラーかプライステッドかティエリー方面なら結構混むけどコネンはそうでもないと思うで。そもそも、カミナ方面なら陸路の方が安いし」

「なるほどね、そろそろつくわね」

「はやっ!?」


3分も掛からずに船着き場へと滑り込み、料金を支払う。 国境を越えないので余計な手続きはない。


「よかった、間に合った」

「すごくエキサイティングな経験をした気がするわ」

「安心して、この先移動これよ。人が増えない限りわね」

「今度仕組みを見せてくれる?」

「いいわよ。あと、ナギがらキーリー用の装備を預かってるわ」


客席に並んで座りながらクレハが色々取り出し始める。


「うわ、このエロい布切れは何?」

「下着だけど」

「そんなもん、こんなとこで渡すなや!それと、これは制服なん?」

「そうそう。ナギに言わせると黒じゃないらしいわ」

「何色なん?」

「黒紅色?#302833らしいわよ」

「なんのことかわからんけど、まあ、ナギ兄のことやからこだわりがあるんやろな」

「とりあえず、後で着替えてみたら?基本、私と同じ形だから」

「クレハの方が背は高いからなぁ……でも、胸は私の方が大きいし」

「何?喧嘩売ってるの?これでもナギは満足してたわよ?」

「いや、別にクレハの胸が小さいっていう話じゃないんやで?どっちかというと、形もいいし、クレハのがベストやと思うけど……。とりあえず、うちは錬金術使えるから好きに改造できるし好きに弄れるな。というか、スカートやないん?」

「そっちがよかった?ならスカートあげる」

「いろいろ作ってるんやね。リスティラでつくってもろたん?」

「ん?ナギのお手製よ?」

「……なんなんやろなぁ、あの人の才能は。ちなみに下着は?」

「今つけてるのも全部ナギのお手製よ」

「うわぁ……」

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