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途上世界のクレセント  作者: 山吹十波
#02 銀の暗殺者編
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#scene 02-12


川の流れに従って、南下していくこと一時間。

進みだしてから二本目の橋が見え始める。


「あれか?」

「はい、あの地点からなら橋は一本しか通過しないはずです。しかし、こんなにもスピードが出るとは」

「まあ、逃げ足だけには自信あるよ。さて、岸に着けるけど、無理矢理止めるから少し揺れるぞ」

「はい。リュディ、しっかり捕まって」

「はい!」


ナギが岸に舟を寄せていき、かなり近づいたところで、岸から舟までの川の水を凍らせ、舟を固定した。


「よし」

「……強引ですね」

「そんなに長く持たないから早く上がってくれ」


そういいながらナギは先に降りると、リュディの手を引き、岸に上がらせ、シャノンにも手を貸す。

その後、手早く腕輪の中に舟を回収する。


「……その腕輪どうなってるんですか?」

「さあ?なんか色々造ってたときに偶然できた奴だから詳しい理論はわからない。そういえば渡してなかったな」


シャノンとリュディにそれぞれ銀の腕輪を渡す。


「手首にはめて魔力を流せば、サイズは調整される。その時点で、魔力を流した人間とオレにしか出し入れは出来なくなるから」

「わかりました」

「そんなすごい道具もらっていいのかな……」

「まあ、それ受け取った時点でギルド入りは強制になるけど」

「……そういえばそんな話も有りましたね」

「忘れてたのか、お前」

「いえ、命を救っていただきましたし、ナギ様から離れるつもりはありませんよ」

「そうか、じゃあ、まずこのポーションを出し入れしてみろ。それで感覚つかめると思う」


色の違うポーションを二人に渡す。


「Lv.1,3,5のポーションですか」

「もう少し上の奴渡してもよかったんだが、在庫が少なくてな」


そういいつつ、ナギは街道の方へ向かっていく。


「ここからリュリュの街までどれぐらいかかる?」

「リュディに合わせると、六時間ほどでしょうか」

「なるほど、20キロと少しか……バイク使うか。悪い、ちょっと待っててくれ」

「構いませんが、何を?」

「少し練習を」


ナギはバイクにサイドカーを取り付け、エンジンを作動させる。


「……なんかやっぱり感覚違うな。これ以上増えるなら車作った方がいいか?」


10分ほどでなんとか操作をものにしたナギは、二人を呼ぶ。


「さて、いくか」

「こういった乗り物は初めて見ましたね」

「わたしもです」

「リュディは毛玉抱えて横に乗ってくれ、シャノンはオレの後ろ」

「「わかりました」」「きゅい!」


機巧式バイクを用いることで移動時間は大幅に短縮される。時速的には10倍以上になっているのだから当たり前といえば当たり前だが。


「速いですね」

「だろう?まだ2台ぐらい作ってるから、今度練習してみるといい。会得できたら好きに使っていい」

「ありがとうございます」

「きゅーーーーう!!」

「わわわ、ミト。あんまり騒ぐと落ちるよ!」


20分ほどで門が見え始めたので、速度を緩める。


「一応聞くけど、合ってるよな?」

「今更ですが、あってますよ。ここが、私の故郷です」


ナギがバイクを収納し、徒歩で門へと向かう。


「騎士じゃなくて、普通の兵士が守ってるが、ここの領主は仕事してないのか?」

「お祖父様がすべて管理しています。あまりにも領地運営が杜撰なので管理権を買い取っていたはずです」

「マジか。王国の貴族はロクなのいないな……」

「とりあえず、統括ギルドに行こうか」

「わかりました」


シャノンと並んで門へと向かう。

リュディはミトを抱いて後ろから続く。


「そういえば、リュディはカードはもってるか?」

「もってないです……」

「未成年ですからそこまで審査は厳しくないと思いますが」

「じゃあ、なんとかなるか……」

「ようこそ、リュリュへ……シャ、シャノンお嬢様!?」

「……お嬢様、よんでるぞ」

「お久し振りです」


動揺する警備兵に自分の蒼に金字のカードを渡す。

ナギも黒に金字のカードを渡す。


「この子の身分は彼が保証しますので」

「え、あ、はい……シュヴラン男爵?帝国貴族の方でしたか……」

義父(おや)から継いだだけだ気にしなくていい」

「は、はぁ……」

「それでは、いきましょうかナギ様」

「そうだな」


カードを返却してもらうと、シャノンの案内に従って真っ直ぐに統轄ギルドに向かう。

リュディは街の風景が珍しいのかキョロキョロと街のようすを眺めている。

実際、リュリュはレヴェリッジ社のお蔭で大陸でもかなりの水準の設備が整っている。


「ここまでの街は早々無いぞ。リスティラやブロッキといい勝負してるが、」

「が?」

「あまり、管理がうまくいってないようだな」


街灯の中には、明らかに破損している物もある。


「街の管理まで手が回らないようですね。やはり、サイアーズに競り負けているのでしょうか」

「ああ、そんな話もあったな」

「ご存知でしたか、あ、この建物です」


シャノンが戸を開き、中にはいる。


「本日はどのような御用でしょうか」

「銀行に預け入れと、1人登録、1人所属変更。あとこの毛玉だけど、登録した方がいい?」

「きゅう?」

「使役魔獣なら登録できます。街によっては入るのを拒まれるかもしれませんが、登録していれば統轄ギルドが保証しますので」

「じゃあ、一応それで」


自分のカードとシャノンのカード、それとリュディと受付のお姉さんが固まるほどの聖貨と金貨を積む。


「伯爵の金庫からくすねたんですか?」

「表に出せない金だったみたいだし。住人たちにも還元したからまあ、いいだろう」

「すいません、男爵様」


戻ってきた受付が声をかける。


「預け入れの方はもうしばらくお待ちください。それで、ですね」


紙を1枚差し出す。


「キーリー・シュヴランさんが加入申請を出していますね。どうなされますか?」

「今朝の申請だな……通しておいてください。それと、サブマスターにも加入許可の権限を与えておいて下さい」

「了解しました。それでは、こちらがお二人のギルドカード、それとそちらのミトさんの登録カードです」

「どうも」


シャノンにカードを手渡すと、感慨深そうに見つめる。


「リュディはミトの分も持っててくれ」

「え、私がですか?……あれ、私の職業」

「何に適性があったんですか?」


シャノンがリュディのカードを覗き込む。


「使役師?」

「だから、ミトを使役すればいい」

「え?あの、えと……あの」

「大丈夫。極力戦わせたりはしない。だけど、最低限生きていけるように稼ぎは出さないといけなくなるぞ?わからないことは全部聞いてくれていい。ギルドだって、独り立ちしたいならいつでも抜けてもいいぞ」

「そう、ですね。ご指導よろしくお願いします。それと、ギルドにはしばらく厄介になると思います」

「それでいい。充分な才能はあるからずっといてもらっても構わない」


ナギは再び戻ってきた受付からカードを受け取り、いくつか言葉を交わすともどってくる。


「さて、次は……シャノンの用事か?」

「はい、それもまあ、すぐに済みそうですが」

「そうみたいだな」

「?」


ギルドの扉が開き、若者が一人現れる。


「すいません、ここに…………本当にいた!姉さん!」

「久しぶりです。シュライン」

「姉さんが出ていってから大変だったんだから!それに、"蒼き太陽"に入ったなんて」

「シュライン、とりあえずうちに行きましょう。お祖父様も待っているのでしょう?」

「……そうでした。それで、こちらの方は?」

「それも含めて後程説明します」




レヴェリッジ社の代表取締役の屋敷となると、それなりに大きなもので、またリュディは呆然としていた。

それなりに質のよい絨毯の敷かれた廊下を歩き、執務室の扉をシュラインが開く。


「やっと帰ったか、シャノンよ」

「お久し振りです、お祖父様」

「随分と悪名が轟いていたが、まったく、あまり年寄りを心配させるなよ」

「申し訳ありません」

「まあ、いい。こうして無事に顔を見られたので良しとしよう……それで、そちらの二人は?」


白髪の老人の視線がリュディとナギを差す。


「あ、あの、リュディヴィーヌ・ルシェといいます。私はシャノンおね、シャノンさんに助けられて……」

「ほう、そうか。それで、そちらの」

「ギルド"黒き新月(クレセント)"所属。ナギ・C・シュヴランと申します。一応、義父より男爵位を継いでいます」

「シュヴランというと、アウグストの奴の息子か?なるほど、奇妙な巡り合わせもあったものだ」

義父(ちち)をご存知でしたか」

「ああ、一度だけだが、会ったことがある。お前さんとは色々と話をしたいところだが、まずはシャノンのことだ」

「何かありましたか?」

「お前はこれからどうするつもりだ?"太陽"など、簡単に抜けられるものではないだろう」

「既に一度死にかけていますので、これ以上の制裁をするとは思えませんが」


シャノンが右手を下腹部に当てながら言う。


「何があった?」

「いえ、もう治して戴きましたので、おきになさらず」

「そうか、シュヴランの跡継ぎなら、高レベルのポーションも持っているな。すまない、礼を言わせてくれ」

「気にしないで下さい。彼女を引き抜いた私に責任がありますので」

「"太陽"からヘッドハンティングとは、中々命知らずなことをするな」

「負ける気も失う気もありませんよ。自分の手の中に居るものは、誰にも渡す気はありませんから」


ナギが笑うのに応えるように、老人もニヤリと笑う。


「そうか、ならば、お前にこのアーケイン・レヴェリッジの孫を任せよう。だが、この孫娘は中々厄介な女だぞ?」

「わかっていますよ」

「……それはどういう事でしょうか?」


シャノンが睨むのを二人でスルーする。


「何だか息が合うようですね、お祖父様」

「そうだな、シュヴランの跡継ぎよ、後程、仕事の話をしたいのだが」

「わかりました。それでは、今夜の宿も探さなければならないので」

「泊まっていくといい。それほど部屋の数は無いが、客人の二人ぐらいなら問題ない」


そういうと、手元にあった通信機で、部屋を準備するように使用人につげる。


「通信機ですか」

「ああ、あまり新しい物ではないが、無線式にしたのはいいが機巧装置が場所を取ってな」

「なるほど、」

「……なにかあるのだな?まあ、それは後で聞こう。シュライン、客人を部屋まで案内してやってくれ」

「それは構いませんが、姉さんが帰ってきたのなら、レヴェリッジを継ぐのは誰に?」

「儂としては、このままお前に任せたいと思う。どうせ、シャノンはすぐに街を出るだろう?」

「その予定です」

「それでは、僕でいいんですか?」

「問題ない。お前も充分に能力を身につけた。更に、シャノンをシュヴランの元に嫁にやれば、大陸最高峰の技術者との繋がりができる」

「……お祖父様、ナギ様は既にご結婚なさっていますよ」

「なに!?その歳でか!?中々やりおるな。だが、うちのシャノンはレヴェリッジという名前があるぞ!?」

「あー……オレの嫁さん伯爵家の令嬢なんだよなぁ。ヒューゲル伯爵の娘さんと勝手に婚約したんで」

「……中々命知らずなことをするな。というか、猫が被れていないぞ」

「まあ、いいかなと思って。アーケインさんなら気にするようなタイプじゃないだろうし」

「まあ、確かにそんな些末なこと気にするような質ではないが。シャノン、お前が2番目でいいなら全力で取り入れ。これは飄々としているが全部策を立てて完成させるタイプだ」

「わかりました」

「いやいや、そういう話はオレのいないところでやってくれよ」

「ナギさん、頑張って下さいね。兄さんと呼ぶ日も遠くないかもしれません」

「待て待て、もっと姉さんのこと大事にしてやれよ」



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