#scene 02-11
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シャノンが目を覚ますと、青空が広がっていた。
「……やはり、死にましたか」
「何をバカなことを言ってるんだ?」
声の方に顔を動かすと、ナギの姿がある。
「ナギ様、お鍋そろそろいいかと……あ、お姉ちゃん!」
「リュディ、無事でしたか」
シャノンが体をゆっくり起こす。
意識を失う前の凄まじい痛みは既に無い。
「どこか不調はあるか?」
「驚くべきことに、ありません」
「ならよかった。さて、」
ナギが皿にポタージュスープを容れてこちらに差し出す。
「とりあえず、食え。リュディヴィーヌ、パンがいくつかあるから毛玉と分けて食べていいぞ」
「ありがとうございます。あと、私の事はリュディでお願いします」
「わかった」
鍋の元へと駆けていくリュディを見送ると、ナギがこちらに向き直る。
「さて、悪いがシャノンはしばらくスープだけだ」
「え、はい、それはどういう……」
「腸が傷ついてた。消化器官もまともに動いてるか確認してからじゃないと固形物はダメだ」
「わかりました」
「それと、もう1つ……言いにくいんだけど」
「なんですか」
「子宮と卵巣が1つかなりダメージを受けてた。なんとか再生はしたが、正直きちんと働いているかわからない。一応、眼で見たところシャノンの体には不調はないんだが」
「……どうすれば?」
「とりあえず便通と生理がまともに始まれば問題無いと思う。」
「……なるほど。子どもを生むのは無理、というわけではないのですね?」
「ああ、おそらく大丈夫だ」
ナギもスープを掬い、口に運ぶ。
「ところで、槍の持ち主だが」
「はい、私も完全に油断していました。まさか、来ているとは……」
「とりあえず、次あったら潰す」
「私の為に、でしたらやめてくださいね」
「違う違う、オレのモノ傷つけたんだから、相応の報いを受けさせないと」
「そうですか。それよりも、」
シャノンは自分の格好を見る。
着ているのはシャツ1枚。大きいので、ナギの物だろうか。
そして、その下には見慣れない形の下着。
「あの、これは」
「ああ、悪い。着替えさせた。というか血塗れだったし、着てた服はもう着れるような状態じゃなかったから処分した」
「それは構いませんが……この下着は」
「嫁のオーダーで作った奴の試作品。着心地悪いならまた考えるけど」
「いえ、ありがとうございます。気に入りました……すこし、胸がきついですが」
「ならいいんだけど。とりあえず、装備一式全部お前のサイズで作り直しているからちょっと待ってろ。あと、デザインに希望は?」
「動きやすいものでお願いします」
「了解。クレハに作った奴そのまま転用するから、装飾とか形とかは好きにいじってくれ」
そういうと、ナギは食事をさっさと腹に入れ、錬成を始めた。
シャノンは立ち上がると、リュディの元へと歩く。
「お姉ちゃん、よく考えたらすごい格好だね……」
「そうですね。リュディは大丈夫ですか?あんなところに長いこと居たんですから、体調とかも……」
「うん、大丈夫。ナギ様がくれたポーション飲んだら体も随分調子よくなったし」
「そういえば……かなりポーションを使わせてしまいましたね」
「気にするな。Lv.9ポーションをほんの5本ほど使っただけだ」
ナギが背後に現れる。
「そんな高価な物を私なんかに……」
「お前が契約を守る以上、オレはお前を救うのに力を惜しまない。さて、しばらく離れてるから服着替えてくれ。鍋と皿は後でまとめて片付けるから纏めて置いててくれ」
そういうと、ナギが服を手渡し、離れようとする。
「あの、見慣れない物もあるので出来ればいて欲しいのですが。というか、この下着の付け方が……」
「わかった……」
理性をすり減らしながら、シャノンの着替えを手伝う。
クレハとはまた違った真っ白な肌に、何度か理性を持っていかれながらも無事に耐えきることができた。
「ありがとうございました」
「とりあえず、リュディの着替えを見てやってくれ。基本的にシャノンと同じものだ」
「わかりました」
「え?私も着替えるんですか?」
さっきまで頬を染めながらこちらを眺めていたリュディが目を白黒させながらシャノンに連れられて後ろの茂みに消えていく。
「さて、ここはどのあたりだ?」
地図を広げる。
「街道を無視して随分東に進んだが……」
「きゅい!」
「どうした?」
「きゅう、きゅきゅ、きゅい!」
「ダメだ、なにいってんのかわからん」
「えっと、向こうから水の臭いがするっていってます」
「リュディ、着替えたのか。どうだ?」
「あの、すごくかわいいんですけど、こんな高そうな服……」
「気にするな。全部オレが1から作った物だし、聖貨何枚かぐらいの値段しかしない」
「せっ!?い、か?」
値段に驚くリュディ。
ちなみにリュディのものはミニスカートで、帽子などの装備品が多い。
「じゃあ、着替えも済んだことだし。川の方に案内してくれ、毛玉」
「きゅい」
「あの、ナギ様?この子名前無いんですか?」
「一応つけてみたんだけど不服そうだったから。好きに呼んでいいぞ」
「ミトロンすらもただのペット扱いですか」
「ミトロン?……じゃあ、ミトって呼ぶね?」
「きゅい!」
とりあえず名前が決まった。
先頭を歩く、リュディとミトについて歩くこと十数分。確かに、目の前には川がある。
「とりあえず川を下ろうと思うが、ここらで1つ質問を受け付けようか?」
困惑しているリュディを見て言う。
「あの、えっと、私はこれからどうすれば……」
「一応、シャノンとの約束でリュディの事も面倒を見る約束はしたが」
「そそそ、そんな。シャノンおね、シャノンさんの迷惑になるわけには……」
「気にしないで下さい。私なりの罪滅ぼしのつもりですが、迷惑に感じたなら断ってください」
「そんなこと、大体、お姉ちゃんのことだってシャノンのせいでは……」
はぁ……、とナギがため息をつく。
「お前の姉さんを殺したのはシャノンだ。そもそも、犯されたのだってシャノンの責任とも言える」
隣のシャノンが渋い顔をする。
「だから、お前は憎んでもいいんだぞ?」
「それは…………いえ、いいです」
「リュディがそう決めたなら、それでいい。じゃあ、とりあえず今後の予定だが」
「え!?あの、私ついていってもいいんですか?何もお役に立てませんよ!?」
「気にするな。何かしら役に立てることはあるだろう。それに、リュディの職業…………適性があったみたいだな」
「え?」
「まあ、街に着いたらギルドに登録するからそのときまで待ってな」
「えええ!?」
「それより、シャノン。次の目的地だが」
「どこか目的地は決まってるんですか?」
「いや、王国に入るのは始めてだし、最終的にルシュールを通って法国に入れればそれで。まあ、あまり遠回りはしたくないが」
「1つお願いが」
シャノンがナギの持つ地図を借り、1つの街を指差した。
「リュリュか……やはり、お前は」
「はい、レヴェリッジ社代表取締役の孫です」
「なるほど、まあ、行ってみたいと思っていたし……とりあえず、ブッケル川を下ってトマとリュリュの間まで行こうか」
「それでいいと思いますが、舟は?」
「なければ創ればいい」
ナギがいくつかの材料を腕輪から取り出すと、錬金術で一息に舟を組み上げた。
「……す、すごい」
「これが大陸最高の錬金術師」
「機巧エンジン量産しててよかった」
自らに筋力上昇の魔法をかけると、舟を川まで運び、浮かべる。
「さて、乗ってくれ」
「え、あのどうやって」
「跳びますよ、リュディ」
「えええ!?」
「きゅう!」
シャノンに引っ張られて、舟に飛び乗るリュディを確認したあと、ナギも舟に乗る。
ゆっくりと流れに任せて動き始めた舟だが、エンジンを作動させたことで更に加速していく。
「さて、今日中にリュリュに入るぞ」




