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途上世界のクレセント  作者: 山吹十波
#02 銀の暗殺者編
42/131

#scene 02-05


日もすっかり暮れたが、ナギはまだこのコルトーの街から出れずにいた。

門は完全に封鎖され、街を覆う城壁には銃を持った兵士が等間隔で配置されている。


「どうすっかなー……」


西側の貧民層の住人たちでにぎわう飲み屋の隅っこで、これからどうするかを考えていた。

幸い、人垣に埋もれることで今はまだ見つかっていないが、時間の問題だろう。

そうこうしているうちに新しい客が入口から入ってくる。

そして、その男はこちらを見て驚いた。

急ぎ足でこちらに来ると耳元でささやいた。


「おい、外で傭兵たちがお前さん探してるぞ!?とっくに外に出たと思ってたが、まだこんな所に居やがったのか」

「誰かと思えば串焼き屋のおっちゃんか……出れたらこんなとこに隠れてないってば」


今のナギはいつかのバンダナを巻いているため、パッと見で髪の色で判断されることはない。ただし、顔は割れているので、詳しく調べられるとアウトだ。


「とりあえず、ここは奢るから、オレがここに隠れてたってことは内緒で」

「おうよ。オヤジ!エールを頼む!」


口止め料代わりに酒を奢り、しばらくしてそれ運ばれてくる。


「お待たせしました」

「おう……ん?アンタ、初めて見るが……ぐぇ!?」


ナギの行動は迅速だった、隣に座る、おっさんの襟をつかみ、自分の後ろに投げると、テーブルを蹴り上げてその女の方へ飛ばした。

相手はそれを冷静に躱すと、構えた短剣でこちらを一薙ぎ。


「くっ……ずいぶん時間かかったみたいだが、なんかしてたのか?」

「すこし、ハンデを差し上げたまでです」


短剣がナギの首を掠める。


「うわ、ちょっと待て、外でやろう。ほら。店に迷惑かかるし」


ナギの言葉に店主も首を縦に振り肯定の意を示す。

その次の瞬間、強烈な蹴りによってナギの身体が店外へと吹き飛ばされた。


「さて、それではお付き合いくださいね、ナギ様」

「ごほ、ごほっ……できれば遠慮したい」


ロッドに体重を乗せ、何とか立ち上がったナギの前にシャノンが武器を構える。


「参ります」

「……っ!?消えた!?」


一歩踏み出したシャノンの姿は、街灯もないこの夜の街の闇に溶け消えた。


「右か」


幸い、ナギには“眼”があるため、ある程度視ることができるが、それでも彼女の攻撃は速い。


「くっ!?」

「なるほど、魔眼をお持ちですか」

「それほど便利なもんじゃないけどな」


大ぶりな攻撃を放つ。

シャノンは後方へ大きく飛ぶ動作をしながら、再び闇へと溶け消える。


「暗殺者Lv.9なんて相手にするもんじゃないな」

「よく御存じですね」

「ちっ」


ギリギリで躱す。

今のナギにはこれが限界だった。


「何とか、攻勢に移らないと、さすがにもたないな」


機巧装置を構える。


「いったん体制を立て直すにしても、隙を作らないとなっ!」

「何を!?」


近くに潜んでいたシャノンが驚きの声を上げる。

拘束で式が収束し、発動した魔法は――


ナギを中心に半径5メートルほどが吹き飛んだ。


――火属性魔法の中でも圧倒的不人気な魔法・自爆(スーサイド)だった。


爆風に吹き飛ばされ、何度か地面に打ち付けられつつも、ナギは順調に反撃の準備を続けていく。

機巧装置の魔宝石を入れ替え、式を発動。


快復(エイド)


傷が治り次第、次の魔宝石に入れ換え、腕輪から道具を次々引っ張り出す。


「さて、あとは……っと、無事だったか」

「まさか自爆されるとは思ってもみませんでした。なかなか面白いですね」

「まじか。こんなことで好感度あがるならあと何回か自爆するけど」

「そのまま死んでくだされば、惚れてしまうかもしれません」

「検討しとくよ」


一瞬の隙も見せず、次々とシャノンから斬撃が飛ぶ。

それを躱しながら、ナギは式を展開する。


「首、いただきますね」

「それは困る、鉄壁(インプレグナブル)


ナギの首へと入った刃は、硬質な音を立てて弾かれる。


「くっ……」

「続いて、崩壊(ブレイク)


シャノンの足元が大規模に崩れる。

咄嗟の判断で躱すが、その隙にナギは反撃の準備を終わらせる。

既に、左手には籠手、右手には機巧刀が構えられている。


「久々に使うな、これ」


籠手に、紅の魔宝石が吸い込まれていく。

だが、次の瞬間ナギを強い眩暈が襲った。


「……ちっ、しばらく使ってなかったからブランクが」

「何だかよくわかりませんが、チャンスのようですね」

「!?」


背後からの首絞め。

右手のナイフはこちらの腹を狙う。

しかし、ナギの力は先ほどよりも増している。無理やりシャノンを引きはがすと、一度呼吸を整える。


「反撃、してみようか」


太刀に魔宝石を入れる。

魔力を帯び、怪しく光るそれにシャノンは警戒を強める。


「行くぞ、加速(アクセル)


瞬間、ナギの身体が大きくぶれ、シャノンの目の前に移動した。


「!?」

「大陸一の剣、思い知れ」


ナギの太刀を寸前で受け止めるが、それでも力の差は大きく、押し切られるシャノン。


「こんな奥の手があったとは、なかなか楽しませてくださいますね」

「そりゃよかった」

「――っ!?」


背後へと移動するナギからの攻撃。


「十の型――新月〈影〉!」


シャノンの背から、真っ赤な血が舞い上がる。


「ぁっ……」


シャノンの身体から力が抜け、そのまま地面にうずくまる。

しかし、すぐに力を取戻し、ナギと距離を取ると対面する。


「酷いお人ですね、ナギ様。嫁入り前の女にこんな傷をつけるなんて」

「責任とってもらってやろうか?二人目でいいなら」

「今は遠慮しておきます」


シャノンが立ち上がり、短剣を構える。

背の傷は深く、今も血が染みだしているが、シャノンの気分は高揚していた。

しかし、その高揚を破る足音が聞こえる。


「シャノン様!」

「―――来てしまいましたか」


いくらナギと言えども、それなりに戦闘経験のある傭兵たちをたくさん相手にするのは辛い。


「お怪我を!?」

「大したことはありません、行きますよ、ナギ様」

「悪いけど、この数を相手にする気はないよ」


ナギが刀を下段に構える。


「七の型――流星」


ナギの影が爆発的に加速し、その影が割れる。


「!?」

「身を護りなさい!」


ナギの影が超高速でシャノンとその後ろに集まった男たちの間をすり抜け、そのまま闇に消えて行った。


「なんだったんだ……!!?」

「ぐお!?」

「くっ、いつの間に!?」


男たちの腕に斬撃が走り、力が抜ける。


「この数を一瞬で!?」

「……ナギ・C・シュヴラン。思った以上の曲者のようですね。総員、警戒レベルを2段階上げてください。また、見つけ次第、私に連絡を。アレは私が獲ります」


シャノンの瞳はいつもよりも強い光をともしていた。


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