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途上世界のクレセント  作者: 山吹十波
#01黒の剣姫編
34/131

#scene 01-33


宴会から一夜明け、翌朝。まだ若干アルコールがが残っているようで少しぽわぽわしているクレハに何とか服を着せ、朝食を作るべくキッチンへと向かった。

廊下を歩く途中、ドア越しに男の困惑する声が聞こえた気がしたがとりあえず無視。

後からでも効くタイプの避妊薬でも作ってやるかなどといらぬことを考えながら階段を下りた。


「おう、起きたか」

「おはようさん、っと。昨日の夜客が来てさ、とりあえず部屋に入れといたぞ。金は払ってくれるから安心しろ」

「そうか。オレは金払ってくれるなら神でも魔物でもいいぞ」

「節操なさすぎだろ」


もはや断りを入れることなくキッチンへと入っていく。


「そういえば、あのスープどうした?」

「ああ、アレ飲んだら急に眠くなってな。何か間違えたのかもしれん。というか今朝食べようとしたら鍋の蓋が開かなかったんだが」

「ああ、なんか高位の睡眠薬が生成されてたから封印した」

「冗談だろ?」

「……ははっ」

「なんだそれ、おい」


鍋は錬金術で一度消滅させ、新たに創り直しておいておいた。

恐らくだいじょうぶバレないだろう。


「米が残り少ないんだよな……ただ、オレがすごく米が喰いたい」


色々と調理器具を並べ、淡々と料理を作っていく。


「オッサン、卵貰っていいか?」

「ああ、いいぞ。ついでにオレにもなんか作ってくれ」

「構わんけど、あんたここの経営者だよな?」


料理は昨夜のドリームスープ(解析結果)で、料理は懲りたらしい。

少々遅すぎる気もしたが、その割にはオーブンの中にやたらとメタリックな色をしたパンが入っていた。


「ミスリルパン……」

「小麦粉とバターと酵母ぐらいしか使ってねーぞ?」

「あんた錬金術の才能あるよ、たぶん」


料理を続けながらオーブンの中の危険物を処分し、釜で炊いていた米が炊ける頃にはすべての準備が終わった。


「おはよう」

「やっと目が覚めたか」


クレハがキッチンに顔を出す。


「もう配膳だけみたいね」

「おう、ちょっと手伝ってくれ」

「――私が働いて、貴方は主夫ってのもありね」

「唐突に何を言い出すかと思えば。というかオレの仕事は元からそんなにアクティブに戦闘するタイプじゃないんだけど」

「私と互角にやり合える人間が何言ってるの?」


クレハに睨まれながらテーブルへと料理を運ぶ。


「時にクレハさん」

「なに?」

「納豆食べれる?」

「ええ、大丈夫だけど。貴方ダメなの?」

「いや。臭いがダメとか言われたら食うの遠慮しようと思ってたんだけど。食べる?」

「じゃあ、食べる」


おかずが一品追加されたところで、寝起きで若干ふらついている女性隊員たちと頭を抱えている大尉が二階から降りてきた。

とりあえず、ヴォルフの元へと近づく。


「ヴォルフ大尉」

「何も言うな」

「とりあえず、いろいろそういった薬とかは作れるからあれだったら相談してくれ」

「いや、酔っていたとはいえ、自分でしたことには責任は取るつもりだ」

「というかさ」


問題の女性隊員の方を見る。


「どっちかというとアンタが食われた側だよな?向こうは気にしてないというか……むしろ嬉しそうだし」

「……まあ、そうなるな。というか、君も止めてくれよ……」

「なんか、雰囲気的にそれはできなかったわ」

「男2人で何話してるの?朝食にしましょう」

「ああ、悪い。オッサン、味どうだ?」

「問題ない。料理人として雇ってやってもいい」

「ははは、それは断る」


ヴォルフに甲斐甲斐しく世話を焼くジェナを他の女性隊員たちと生暖かい目で見ながら食事を始めるナギ達だった。


「どうだろう、味に問題はないか?」

「全然。私好みの味よ」

「そうか。じゃあ問題ないな」


「大尉とジェナの姿も見てられないけど、あの2人も新婚なのにこっちが立ち入れない雰囲気だしているわよね……」

「というかジェナ、前々から大尉が気になるみたいなこと言ってたけど本当にやらかしちゃうとはね」

「大丈夫なの?私たち罰せられたりしない?」

「大丈夫じゃない?」

「というかあの子あんなにべったりだったけ?」


「ヴォルフ大尉、お茶のおかわりなどいかがですか?」

「大丈夫だ。まだ残ってる」

「そうですか。何かあればいつでも言ってくださいね」

「……………」


「ナギ、大尉がこっちに救援信号送ってきてるわよ」

「気のせいだろ。今納豆混ぜるのに忙しいんだ」


かたまって座っているのになぜか見えない壁がある食卓で食事を続けていると、宿のドアが勢いよく開かれる。


「すいません、ここに……って、いた!」


下っ端軍人、名前は確かジュールだったと思う。

彼が息を切らせながらこちらに入ってきた。


「ジュ、ジュールか、どうした?」

「どうしたじゃないですよ、大尉。6人宿に送ったらすぐ戻るって言ったきり帰ってこないから。そこらの宿を探しまわったんですよ?」

「そうか、悪いな」

「はぁ……こっちはメシ抜きで走り回ってたって言うのに、大尉たちは美味いもん食べてるし」


膝をつく欠食軍人の元にヴォルフが駆け寄り肩に手を置く。


「わ、悪かった。ナギ君、朝食まだ残ってるだろうか?」

「んー……量はないけど。というか味噌汁以外は皿の上に残ってる分しかないぞ。まあ、オレはもう済んだから後は好きにしてくれ」

「私も、もうご馳走様。今日は何かするの?」

「そうだな、薬草系の採集と崩れた祭壇を見に行くかな」

「じゃあ、私も着いていくわ」

「おう、そうしてくれるとうれしい。ジーナが一人でいくなって煩いんだよな」

「貴方、ジーナに面倒掛け過ぎじゃない?」

「そんなことない……うん、たぶん大丈夫」


ナギとクレハは相変わらずこちらを全く気にせず、二階へと上がっていく。

恐らく装備を取りに行ったのだろう。


「この料理のレシピ、聞いたら貰えるかな?」

「やめときなよナタリー。貴方絶望的に料理下手じゃない」

「それは、先生が悪かったのよ。きっと」

「何?それは私に対しての挑戦?」

「ナタリーさんもオリガさんもこんなところで喧嘩はやめましょうよ……」


「そういえばなんで、大尉も泊まったんですか?」

「え゛」

「ジュールさん、こちらのおかずどうぞ」

「ありがとうございます、ジェナ曹長!」


「あの様子じゃばれるのも時間の問題というか……」

「ジェナが離れたらダメね。大尉、嘘つけないタイプの人間だから」


喧しく食事を続けているうちに、ナギ達は準備を終え再び一階に降りてくる。


「行くのか?」

「おう。悪いがオッサン。後片付け頼む」

「それこそ俺の仕事だ気にするな。今夜も泊まりでいいんだよな?」

「おう。夕飯はいらないから。自分で作る」

「了解した。気を付けて行って来い」

「あいよ」


ナギはクレハを伴って扉を開き、大尉を一瞥すると外へ出た。


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