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途上世界のクレセント  作者: 山吹十波
#04 途上世界のクレセント
123/131

#scene04-21




「へぇ、面白いじゃない。久々に血が騒ぐわ」

「ちょっと、お母さん?」


ラーテグントが剣を抜くと、後ろに控えていた弟子たちがざわつき始める。


「ナギ、大ボスが動いたわよ」

「できればじっとしててほしかったっ!」


ジークハルトを倒した状態のまま、ナギは術式の構えに入る。


「戦場の錬金工房……!やはり、使えるのね!」


ナギは何も答えずに、地面から錬成した短剣を放った。

その数は8。大陸最強の剣士であるところのラーテグントに対しては殆ど無意味なような攻撃であるが、勿論ナギもこの程度の攻撃が通用するとは思っていない。


短剣を放った直後に、ラーテグントに向けて突進。その間に、両手に長剣を錬成し、ラーテグントの剣を受けつつ、衝撃を押し込んだ。


「爺とは戦法がまるで違う!?」

「まだまだっ!!」


ナギの攻撃を受けまいと、技の動作に入ったラーテグントだったが、足が動かずその行動は失敗に終わった。


「っ!?いつの間に!?」


ナギの錬成したであろうよくわからない石の枷によってその行動が封じられている。

一瞬、彼女が動揺したその隙に、ナギは100を超える剣を一斉に錬成し、いつの間にか持ち替えていた杖を構えた。


発動した術式は、地属性の重力操作。

動きを封じられたラーテグントにさらなる過重が乗り、加えて、浮遊した100の刃が彼女を取り囲んだ。


「……降参ね」

「それは良かった」


ナギが手を払うと、さっきまで浮いていた剣がすべて消滅し、あちこち抉れていた中庭の地面も元に戻った。


「よし、クレハ。これで終わり――ぬわぁ!?」

「まだ私が残っているわ」

「おのれ、戦闘中毒(バトルジャンキー)め」


最初から機巧剣、しかも風の魔宝石の出力パターンを変更した雷を纏った刃である。何とか避けたが、掠りでもしていればひどいことになっただろう。


「だって、あなた最近本気出してくれないんだもの」

「嫁を本気で切り付ける亭主がどこにいるんだよ!」


そうは言いつつ、ナギはクレハの剣をすべて杖で弾きつつも、術式の構築を行っていた。


「喰らえ」

「ちっ、魔法か」


術式の解放と同時にクレハが大きく距離を取る。


影鎖嵐(シ・グリ・ランガ)

「また、見たことのない魔法を!」


「エレノラさん、あれは?」

「……最近開発した魔法。発動範囲は狭いけど、威力はかなりある」


かなりアクロバティックな動きで影の鎖を躱していくクレハ。

そして、一瞬の隙を逃さずナギへ反撃する。


「仮称・十一の型――」

「んなっ!?」

「――凶星」


強力な魔力を乗せた刃は、周囲の魔力――すなわち、発動している魔法も何もかもを喰らいつくしながらまっすぐナギへと向かってきた。


「ちっ、これは」


躱すことを放棄したナギは、錬金術でクレハとの間に壁を作る。

だが、クレハの方が一瞬早く、壁が完成するより先に、その空間を刃が裂いた。

しかし、壁は作られ、それによって刃は大きく減速する。結果としてナギが致命傷を負うことはなかったが、


「殺す気か!?」

「割と殺す気よ」

「油断ならん女だぜ、まったく」


致命傷は負わなかったが、ナギの体に刃は届いており、かなりの出血をしている。だがそんなことを気にする様子もなく、ナギはクレハへの攻撃のモーションを取った。


「ここはひとつ引き分けってことで」

「まあ、いいわ」

「あー……ポーション使おう」


かなり等級の高そうなポーションを迷わず使用するナギの姿にはもはやだれも驚かない。

正直な話、クレハも含めて常識外れの行動ばかりで、処理が追い付いていないのだった。


「エレノラ、今の術式結構安定していたと思うんだが」

「うん。思ったよりいい感じ」

「魔属性の術式はやはり破壊力が違いますね」

「さっきので実用性は証明されたから今度術式を魔宝石に封入しておくよ」

「他の術式は?」

「まだチェックしてない奴が多いんだよ」


「どう?母さん、あたしの旦那様」

「いいんじゃないかしら」

「手加減してるとはいえ、私とまともに打ち合えるのよ」

「素晴らしいわね。うちの旦那ではこうはいかないわ」

「ラーテ……?」

「という事は、結婚認めてくれるわよね?」

「ええ、私は大賛成よ。でも、国としては結構ギリギリよね」

「公国の情勢はいまいちよくないし、帝国の西側もちょっと動きがキナ臭いらしいわよ?」

「やっぱりそうなのね。戦争になったらあなたやあなたの旦那様とかち合わないことを祈るわ」

「それをするとナギの累積功がとんでもないことになるから皇帝陛下も極力避けると思うけど……」



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