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途上世界のクレセント  作者: 山吹十波
#04 途上世界のクレセント
105/131

#scene04-09




数十分かけて、ナギはヴェルカ人の魔力的特性と枷の効果について説明した。

高位の解析術式仮名変えれば到底知ることはできない情報で、これを知ったことで、ヴェルカ人は、自分たちの特性について対策をとれるようになる。


「……すぐには用意できないが、相応の対価を払うのでその機巧式を売ってほしい」

「構わないけど、機巧式自体を売るとなると相当な値段になるぞ」

「ああ、覚悟の上だ。いずれは国内で作れるようにならなければ、ヴェルカ人の存続は難しいだろう。実際、毎年魔力暴走によって少なくない死人が出ている」

「わかった。金額は後日」

「ああ、こちらも一度国に戻って検討するが……とりあえず、法衣貴族として伯爵位ぐらいは与えたいんだが」

「あーえっーと……ルイテル、これはどうすりゃいい?」

「まあ、年金貰えるんだからもらっておけば?」

「それなら、イネス王国からも同じく法衣伯爵位を与えるか……帝国と比べればかなり安いが」

「まあ、貰えるのならもらっておくか……じゃあ、話しはこんな感じで、そろそろ宿探しに行くか」

「というか街のダメージ結構大きいからまともに宿とか開いてない気もするけどね」

「じゃあ、王都の外で野宿するか」

「野宿、というと」

「ああ、うん。アイヴィーの思ってる通り、街道にログハウスかなんか建てる」

「ナギ兄、それは野宿とは言わんよ?」

「あー待て待て。とりあえず、今日使った分の金だけ払っておく」

「使ったっけ?」

「僕が炊き出しに使った食料だね。結構な量があったから」

「じゃあ、貰っとく」

「ソータたちも少し待ってくれ、すぐ用意させる。それと、お前らはもう城に泊まって行け」

「え?いいんですか?」


今までじっとしていたソウタが嬉しそうに声を上げる。

クラリッサも褒章がもらえるとわかって喜んでいる。

しばらくして、微妙に負傷している文官がナギに聖貨の入った袋を手渡した。


「よーし、とりあえず、装備新調して、クラリッサも新しい楽器とか衣装を買うか?」

「え?いいの?……というかシュヴラン伯爵たちにお礼しないと」

「あ、そっか、オレも命助けられたのか――ねえ、ナギさん……って、いないし!」

「なんかいつの間にか全員いなくなってたぞ。まったく、何者なんだあいつらは」

「いやいや、ちょっと目を離したすきに消えるって人間業じゃないし……」

「リュディたちもいなくなってる……」





正直な話、アイヴィーを連れたまま王都をうろうろするのはまだかなり問題がある。

よって城から抜け出した一行は姿を消したまま門を抜け、法国方面へと全員で移動した。


そして、適当なところでナギとキーリーによって到底野宿とは言えないような家が組み上げられ、そこで夜を明かすことにする。

なお、元貴族たちの残党がまだいるかもしれないので、パンドラとエレノラによって過剰なまでの結界や呪術が家の周りに施されており、野生動物はもとより、羽虫の一匹すら入ることのできない要塞と化している。


シャノンは大変機嫌よく料理をしており、ジーナとリュディがそれを手伝っている。

クレハはアイヴィーを連れて風呂へ。パンドラとエレノラはクッキーなどつまみ食いをしながら、ミトとクラをいじって癒されている。ペトラはルイテルと寝室を同じにしたら思考停止して固まった。男性陣はカードゲームをしながら会話をしている。街道の外れにいるとは思えないほどのリラックスぶりだった。


「ナギ様、夕食が出来ました」

「おお、ありがとう、シャノン――っと、これで、オレの勝ち?」

「むむむ、またナギとアーケインさんに負けた」

「念のため言っておくが、眼は使ってないからな?」

「ああ、そっか、ナギは本気出せば全部のカードの判別つくんだっけ?」

「そんなことしたら楽しくないからやらんけどな」

「しかし、ナギ君。このゲーム、なかなか面白いな」

「結構トランプゲームとしてはマイナーなような気がするけど、オレは結構好きなんです」


風呂上がりのクレハとアイヴィーがナギの隣にやってくる。


「なにしてるの?また、ポーカー?」

「いや、今日はナポレオン」

「いいな、次私も」

「クレハさんも、混ざろうとしてないで片づけてください。夕食ですって。というか、男性はナギ様だけではないんですからあまり薄着で出てこないようにしてください」

「はーい」

「シャノン、今日のメニューは」

「今日は私の得意料理です」

「おお、久々にシャノンのかぼちゃスープが食えるのか」

「はい。お爺様もナギ様も好きだと言ってくれてますし」

「あとは、鶏肉のトマトソース煮か」

「はい。あとはジーナにパンを焼いてもらいました」

「あはは、あまり凝ったものはつくれませんけどね……」


配膳を行っている中、ナギがごそごそとしはじめ、皆の前にグラスを並べていく。


「せっかくだし、アーケインさんの合流と、ジーナの仲間入り記念に」


それなりに上等なワインを何本かとりだす。


「リュディには葡萄ジュースな」

「わーい、ありがとうございます」

「……私も、ワインあんまり得意じゃないからそっちがいいんだけど」

「じゃあ、エレノラも」

「にゃ」

「ああ、待てまて。シャノン、ミトとクラにもなんか適当に出してやってくれ」

「はい、わかりました」

「ははは、シャノンは思ったよりしっかりと務まっていそうだな」

「まあ、ナギがかかわる事なら進んで片付けてくれるね」

「ナギ様、一番ですから」

「そういえば、一緒にいたあの子たちはいいのかね?」

「ああ、昏き星夜か。それなら、隣にもう一棟宿舎を立ててますよ」

「ご安心を、御爺様。彼らも食事の準備ぐらいなら自分でしますから」





「よーし、シャノン様から材料とレシピ貰ってきたぞー」

「おー」

「今夜はごちそうだな」

「とりあえず、女子チームは作るの手伝うように」

『はーい』

「オレたちは?」

「騒がずじっとしてなさい」

「うぃっす」





「明日は法国をまっすぐぬけることになるかな」

「なんか用事があるんやなかったん?」

「ある事はあるけど、パンドラのこともあるし、内乱がどうなってるのかもわからんからな」

「じゃあ、もう船に乗りません?」

「あー、それもありだな。ジーナいいこと言った」

「ふむ、それでは、明日は朝一でネストリ湖に向かって帝国入りとなるか?」

「そうですね。帝国入ったら一度帝都のルイテルの屋敷に戻るかな」

「そのまま領地に向かうんじゃなかったのかい?」

「いや、ジーナとの婚姻手続きしないといけなくなったしな」

「ああ、そういえばそうだね」

「まあ、それでも明々後日あたりには領地に入れると思うから、先に出てるシュラインたちよりも早くつきそうだな」

「順当に進んでいてもシュラインはまだ帝国と法国の国境あたりでしょう。あの人数を船で移動させるのは流石に無理でしょうから」

「ほんとうに社員全員引っ越すとは思ってなかったけどな」

「そう言えば、ナギ君、主力産業として工業を行うのはわかっているが、他になにかかんがえているかな?」

「そうですね。あまり、小麦とかを育てるのには適していないので、少し畜産と、あとは果樹、可能ならば漁業とかも考えていますね。まあ、とりあえず街を整えてからですけど」

「なるほど。さすがに工業だけでやっていこうとは思ってないようで安心したよ」

「あまり独占するとほかの貴族様に疎まれるので、ある程度分散させる予定です」

「ナギ様は国家事業を進めていますので、お爺様やシュラインも着き次第働いてもらうことになりそうですよ」

「そうか、楽しみだな。その内容はまだ言えないか?」

「ええ、一応、帝国に入ってからのお楽しみです」


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