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望まぬ展開

私生活でトラブル中。更新遅れておりますorz

まぁ、ともあれ、更新。


前に感想いただいた修正点は後日、修正します

「ふむ、面白いな。やはり、私は貴様と踊りたい」


 チクリと嫌な予感が背筋に走る。頭に登っていた血の気が引き、反射的に右へと身体を傾ける。

 赤い刃が、真横を通過。大理石の床をいとも容易く切り裂く。

「当てるつもりはなかったが……そうも容易く避けられると傷つくな」

 そう、拗ねた表情を浮かべる。

「てめぇ、何しやがる」

「ふむ、ダンスのお誘いだよ。本来、私の役割せはないが、の。私は貴様と踊りたい」

「何、意味不明なこといってやがる。脳みそまで腐り始めたか?」

 周囲も、その行動に気づいたらしい。切り裂くような女性の悲鳴が上がる。

 そう、声を上げたのは女性だ。

 ある程度歳を得た魔術師や魔族は多少なりとも戦いの経験がある。だから、悲鳴を上げない程度には冷静に思考することが出来た。

 元々、仲の悪い魔術師と魔族。同じ場所に放り込んだらこの程度の騒ぎは起きるだろう、と

 このまま、二人が衛兵に連れられて退場すれば、すべては元通り。

 だが、その思いは、覆されることとなる。

「人が話しているというのに、娘よ。キャーキャー喚くでない」

 そういって、伯爵がその赤い剣を、悲鳴を上げている女性に突き刺した。

 一瞬の静寂。その後、先程の比ではない混乱がその場を支配する。

 我先に逃げ出そうとする魔術師と貴族達。煌びやかなパーティーは一瞬にして地獄絵図と化した。

 その地獄を作り出した張本人はウットリとした表情を浮かべている。

 その姿は、艶やか。返り血を浴び、赤く染まる姿。頬を伝い、首から胸元へ。

 小麦色の健康的な肌を血が赤く染めていく。

 その血を手で掬い、口へと運ぶ。

 罪人も言葉が出ない。そんな罪人の様子に満足したのか、少々控えめな胸を張りながら伯爵はいう。

「誤解しないで欲しいがのう。貴様のことを気に入っているのだよ」

 一体の人形が伯爵に襲い掛かる。手を軽く振るう。そんなに力を入れた形跡もないのに、轟音を立てて、地面にめり込む。

 所詮は感情無き人形。しかし、それでも、いとも容易く仲間の一体が破壊され、警戒するように遠巻きに彼女を取り囲む。

「ここで私が暴れていれば、皆、私をターゲットにする。太陽の間など、所詮は接客用の部屋。そこまで警備はまわらんよ」

「じゃあ、何で俺を攻撃した?」

「何、言ったろう?貴様と踊りたいと、これは私個人の我儘だ。少しばかりだが付き合ってもらえないだろうか?」

 このような状況下。頬を染め、まるで、乙女が好きな異性に思いを伝えるかのような彼女の表情に違和感が募る。

「だからといってこれはやり過ぎだ」

 周囲は人形の残骸。そして、血まみれになって倒れているのは人や魔族達だ。

 罪人から見ても胸糞悪い光景、キッと、その惨状を起こした本人を睨み付ける。

「おや、君は私と同類かと思ったが」

「ああ、同類だよ」

 そこは認める。魔族を嫌悪し、必要であれば表情一つ変えず斧を振り下ろす。

 この世界は厳しい。目的の達成の為なら何でもやる。でなければ、自分のような半端者は、志半ばで朽ち果てるに決まっている。

 だが、だからといって、必要のない殺戮は、正直ムカつく。

「いいぜ。てめぇの誘い乗ってやるよ。後悔するな、よ!!」

 背負ったバックから斧を引き抜く。

 一歩踏み込み獲物を振り下ろす。上から下へ。シンプルだが、速度を伴った一撃は……

「ふむ、甘いの」

 ぽん、と斧の柄の部分に手が添えられ、そのまま、右へと押される。そんなに力を入れているようでもないのに、そのまま流される。

 斧の軌道が右へとズレ、彼女の体をすり抜ける。

「こ、のっ、馬鹿力がっ!」

 二撃目。地面にめり込んだ斧を手放し、蹴りを入れる。それも読まれていたのか、軽く避けられる。その隙に斧を拾い、彼女から距離を取る。

「ほれ、罪人よ。我は抵抗せん。殺るなら今のうちだぞ?」

「そうか、よ!」

 呼吸の乱れを整えながら、罪人は思考する。

(舐められてる)

 彼女と数回手合せして、そう感じ取る。

 腹が立つ。攻撃が当たらないこともあるが、彼女が追撃もせず、余裕の笑みを浮かべていることが更に罪人の神経を逆撫でする。

「なめんじゃねぇぞ」

 なら、それを利用させて貰おう。

 地面を蹴る。一歩、二歩と前へ。彼女との距離は後一歩。通常ならそこで武器を振るうが、勢いを殺さず、更に一歩踏み込む。

 体当たりだ。彼女は右へと回避行動に出る。

 まさか彼女もそんな行動に出るとは思わなかったのだろう。余裕な笑みしか浮かべてこなかった彼女の顏に驚きの感情が生まれる。

 隙だらけな、隙しかないような動き。彼女に攻撃する意思があれば、その段階で罪人はこの世からオサラバ。普通ならば彼女に殺気がないからといって出来る行動ではない。

 余りにも不利な賭け。しかし、罪人はその賭けに勝った。崩れた体勢から斧を振り上げる。無茶な姿勢からの行動。力が入りにくいのは、気合いで何とかする。

 振り下ろす。

 その一撃は、驚きの表情を浮かべる彼女の顔面へ吸い込まれ……

「ッ!」

 彼女の体の輪郭が崩れる。その身体は一瞬で黒く染まり。そのまま四散。

 キー、キーという鳴き声と羽音。その彼女の欠片ともいえる黒い物体を観察。蝙蝠だ。

 その蝙蝠達は、再び集結し、渦巻き。そして、その中心から、伯爵が姿を現す。

 その光景を見て、罪人は笑う。

 これで、彼女の正体がはっきりした。吸血鬼。

 知名度が高いが、個体数の少ない魔族の中の特権階級。それが彼女の正体だ。

 ポタポタ、と彼女の頬を伝う血液。それは、返り血ではない。彼女、自身の血。

「あは……」

 悲鳴が飛び交う中、彼女の口から漏れたのはそんな小さな笑い声。

 それは、騒音に紛れることなく、罪人の耳へ、脳へと伝達させる。

 脳から発せられた信号は恐怖。体が震える。今すぐ尻尾巻いて逃げろ、と本能を刺激する。

「あはははははは!! あはははははははははははははははははははは!!」

 無邪気に笑う彼女。それが何より恐ろしい。

 今の彼女から老獪さは感じられない。その姿は童のよう。

 雪を見て喜ぶ子供のように、花を見て素直に綺麗だ、と感動する子供のように、


 それはまるで、虫の足をもぎ取って喜ぶ子供のように


 彼女がこちらを見る。新しい玩具を目の前にした子供のような瞳で、玩具である自分を見る。



「ようやく、こっちを向いたか。化け物」

 罪人は、自らの震えを誤魔化すように、強気の笑みを浮かべるのであった。


最近、斧にハマっているサイユーです。

主人公の武器。イメージの中では

最初に剣からスタートし、鉄パイプ。その後、斧に変化しました。

イメージはヴァイキング。一時期ハマって、資料まで購入したことありw

後は盾があると最高なんだけど……


今回は無理だけど、そのうちマスケット銃を持った戦列歩兵を主人公にしたいなぁ。

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