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死の商人


 時間は少し遡る。

「いいですか?あの城に関してですがあまり情報が出回っておりません」

 城に乗り込む前に、協力者であるセールスマンはそう言った。

 中肉中背。黒髪に黒い瞳。典型的な日本人といった容貌の男。この男を見て感じるのはそれだけだ。

 個性というものをそぎ落とし、特徴という特徴を無くしたのが個性という男。通常ではありえない異端ではあるがその特性ゆえ目立つことはない。

 彼は、死の商人ではあり、武器や情報、人材の斡旋と様々な面で世話になっている。金だけで結ばれた関係。しかし、互いの利害が一致しているゆえに『罪人』にとって信頼出来る人物だ。

「人形卿っつーたら、かなりの有名人だと思うが、おい、セールスマン。情報を渋っているンじゃねーだろうな?」

「ええ、彼は確かに有名ですね。『人形卿』黒松三矢。日本の魔術師の名家。黒鋼家の三男に生まれる。長男が家を継ぎ、末っ子であった三矢は、単身『異界』へ」

 『異界』というのは、その名の通り、異世界だ。この世界と密接しており、世界中のあちらこちらに入口がある。そこには、過去、人間達に追われた魔術師や魔族が国を作り繁栄している。

「『異界』で本来、黒松の魔術と、あちらの魔術を融合させた独自の魔術を研究。本家黒松家からは、西洋かぶれやらなんやら言われ勘当されています。その後、何を考えたのか先代『強欲』の魔王討伐の勇者ご一行に参加、見事打ち倒し、伯爵の地位を得る、と」

「んなの、魔術師だったら誰でも知っている」

「ええ、そうです。魔王討伐までの出来事であれば情報収集できるのですが、ね。その後が問題です。その後、彼は、日本の埼玉県に廃棄された魔術師の城を買い取り、引籠も……ごほん、研究に励むようになりましたからね。あれから、60年。城から一歩も出ず、城の内部には人間を入れず、人形にすべて管理させるといった徹底ぶり。まぁ、仕入れる資材から彼の好物や、どんな人形を作っているのか推測するぐらいしかできませんね」

「じゃあ、どうしろってンだ。あの馬鹿でかい城の中を一部屋一部屋探す時間なんてないぞ」

「ああ、そこは心配ありません。かつての城主が残した城の設計図があります」

 そういって、セールスマンがUSBメモリーを差し出す。

「この中に、城の情報はすべて入っています。ついでに、他の予言関係者ともコンタクトが取れました。別料金になりますが斡旋は可能です。役職(クラス)は不明ですが、どうします?」

 役職(クラス)とは予言書内での主要な人物を指す。

 今回の予言書『罪人の書(クリミナル・サイン)』においての役職(クラス)は、『罪人』、『姫』、『道化』、そして『魔王』だ。

 『罪人』は考える。予言書『罪人の書(クリミナル・サイン)』に記されている内容は……



 2011年7の月。

 宴の始まる。

 『人形卿』の宴に蝙蝠達が集う。

 煌びやかな舞台。その裏で役者達が暗躍する。

 『姫』『道化』『罪人』そして、『魔王』

 『姫』は、踊る。『罪人』とその罪を流す為に

 『道化』は笑う。『罪人』の愚直なまでの思いを利用せんが為に

 『罪人』は太陽を目指す。その刃を『魔王』に突き立てる為に

 『魔王』は時を待つ。『罪人』の刃を受け入れる。その時を

 11の鐘が鳴る時、世界は変化を求め動き出す。


 内容からして、『姫』は味方で『道化』は敵だ。『魔王』は……まぁ、普通に考えてそう簡単に姿は現すとは思わない。

 道化か、姫か? 確率は二つに一つ。

 相手は、先代である『強欲』の魔王を倒した勇者一行の一人、そんな彼が守る城だ。一人だと失敗する可能性も高い。

 予言とは、確実に達成されるものではない。その内容を現実にしようとする意志と行動が必要なのだ。

 だから……

「セールスマン。頼んだ」

 その言葉に、セールスマンが商売人としての笑みを浮かべる。

「毎度、ありがとうございます」



今回の投稿は短め……

次の話は本日中に投稿します。

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