IV(九州)
@九州連邦共和国宮崎県都城市―高度5000メートル
2月12日九州標準時刻1310時
ガキン!
大きく降りかぶったスコップが戦闘機型の装甲にはじかれる。
国分はいったん戦闘機型から距離をとるとエンジンの出力を最大にして戦闘機型の候補から突撃。
スコップの先端が戦闘機型の下部に突き刺さる。
「はぁっ!」
第2の能力、「電撃」を発動。
スコップの先端から電撃がほとばしり、装甲がはがれる。
コアが露出。
白い煙を曳いて落ちていく装甲をよけて国分はスコップをふりかぶり、コアに突き刺す。
コアが崩壊。
いくつかの破片が国分のこめかみをかすめる。
国分はこめかみにできた傷を無視して次の目標を中型クラックゥに定め、突撃。
中型クラックゥがこちらの気づいたらしく上部に装備した2連装12.7ミリ実弾兵器発射機から実弾兵器を撃ってくる。
無数の紅い軌跡を描きながら迫ってくる実弾兵器をよけながら突撃。
中型は左右に動くことでこちらの攻撃をよけようとするが間に合わない。
ガギン!
スコップとクラックゥの装甲がぶつかり、火花が散る。
スコップの柄が折れる。
スコップの先端がくるくると回転ながら落下していく。
「……ちっ」
国分は中型からいったん離れると、使いものにならなくなった柄を捨て、腰から水色の柄の6式多用途短剣を抜き、構えて突撃。銃はすでに弾切れになっている。
避けようとする中型の機動にあっさりと追随し、ナイフを突き刺す。
しかし、ナイフが装甲にはじかれ、国分の腕に切り傷を造る。
国分は一瞬痛みに顔をしかめ、クラックゥから離れる。
幸い、ナイフは制服に突き刺さったままだ。
国分は制服からナイフを抜き、まっすぐに構えて突撃。
ジャキン!
ナイフが突き刺さる。
第2の能力、「電撃」を発動。
装甲が吹き飛ぶ。
コア露出。
国分は装甲からナイフを抜き取り、コアに突き刺す。
コアが崩壊する。
今度は破片をすべてシールドで防いだところで通信が入った。
〈第15歩兵団、迎撃任務は終了。任務を変更するので高度5500メートルに集合せよ。繰り返す、第15歩兵団、迎撃任務は終了。任務を変更するので高度5500メートルに集合せよ〉
〈国分、腕の傷は?〉
「ちょっとミスっただけです。問題ありません」
〈そうか、……無理はするなよ〉
集合すると、第15歩兵団は7人まで減っていた。
さっきの戦闘が始まるより前に負傷して離脱したのが3人、撃墜されたのが1人、そして――さっきの戦闘で4人が撃墜され、そのうち2人は死亡が確認されていた。
圧倒的な物量の前に、航空機動歩兵も徐々に消耗していっていた。
@九州連邦共和国鹿児島県曽於市
2月12日九州標準時刻1311時
「6時30分の方向、距離50のバスの陰に移動」
〈了解〉
車長は操縦手に移動するポイントを指示すると、統合情報モニターに砲塔上の多機能情報装置からの映像を表示させる。
映像で確認できる範囲の前方にいるクラックゥは20近く。
種類は陸戦型や移動砲台型。距離は3000以上。
分布する範囲は1時30分から10時の方向。
対して、こちらの戦力は九州51式装輪戦闘車1両、坂東39式歩兵戦闘車1両とそれに乗っている陸上機動歩兵1個分隊のみ。
もっとも近くにいる他の部隊は2キロ先だ。
ただ、幸い相手はこちらに気がついていない上、戦力を半分に分けようとしている。
「距離が2000を切るまでは撃つな。ただ、相手が撃ってきた場合、射撃は許可する」
〈了解〉
それから、車長は無線をすぐ近くの物陰に潜んでいる坂東39式歩兵戦闘車に切り替える。
「搭乗している陸戦魔女を散開させてくれ。それから、機関砲の発射準備も。タイミングは追って伝える」
〈了解。陸上機動歩兵の配置は?〉
「それは歩兵の方に直接伝える」
〈了解〉
散開準備!という陸上機動歩兵に対するかけ声らしいもののともに通信が切れる。
今度は陸上機動歩兵分隊の隊長に無線を切り替える。
〈あー、あー、マイクテス、マイクテス。本日は天候明朗なれど波高し、隣の柿はよく客食う柿だ……あ。すみません〉
「あ、ああ。配置を伝えたいがいいか?」
〈あ、はい〉
「あ、ああ。まず、12.7ミリ装備は戦車の前方に――」
一瞬、昔を思い出す目になりかけたがあわてて気を取り直し、車長は配置を伝え始める。
その配置に全員がついた頃、クラックゥとの距離が2200を切った。
レーザー測定装置が目標までの距離を測定、横風、温度を勘案して砲の仰角を調整。
砲手のモニターと車長用モニターに『照準完了』の表示。
「射撃!」
砲手がフットペダルを踏み込むと射撃。
主砲の50ミリ機関砲が射撃。
機関砲弾はバスの割れた窓を突き抜け、まっすぐに陸戦型に向かう。
同時に、クラックゥも気がついた。
ビームで反撃を始める。
盾に使っていたバスが一瞬にして消滅する。
しかしそこにはなにもいない。
代わりにブロック塀の陰に発射炎。
クラックゥはそのブロック塀を吹き飛ばす。
しかしそこにもなにもない。
今度は農業倉庫の陰に発射炎。
さらに、あぜ道の上から射撃。
数台の陸戦型が崩壊する。
あぜ道をなぞるようにビーム。
しかしそこにもなにもない。
「後退!4時30分の方向、距離100!」
車長の指示で九州51式装輪戦闘車は土煙をあげて後退、次の射撃ポイントへ移動する。
彼らの任務は単純。
大隅半島全域の住民が避難し終えるまで、田野―都城戦線からあふれだしたクラックゥが進撃するのを防ぐこと。
撃退しなくてもいい、避難が終わるまで進撃を食い止めていればいいのだ。
しかし、このときすでに圧倒的な数のクラックゥを前にして、それすらも危うくなりつつなっていた。
文中に出てくる架空兵器の解説を……
●坂東39式歩兵戦闘車
[性能(B型)]
分類:歩兵戦闘車
乗員:3名+7名
重量:34t
全長:7.55m
全幅:3.4m
全高:2.8m
行動半径:400km
エンジン:
武装:扶桑32式30ミリ機関砲
7.62ミリ機関銃×3
12.7ミリ機関銃M2×1
発煙弾発射器
最高速度:55km/h
採用国:坂東帝国
扶桑国
東北合衆国/自由東北政府
北海道共和国
九州連邦共和国
東部ソヴィエト連邦
オーストラリア
タイ
インドネシア
など
[特徴]
歩兵戦闘車。
基本的に機動歩兵の輸送がメイン。
クラックゥのガスに対する防護能力の高さから派生型に指揮通信車などがある。
また、発展型に九州54式歩兵戦闘車がある。
[バリエーション]
A型(1139年~):第1次生産車
B型(1141年~):第2次生産車。後部ハッチが下開きに。この型から輸出が開始された
E型(1141年~):東部ソヴィエト連邦仕様車。B型をベースにエンジンが寒冷地仕様になった。
O型(1141年~):オーストラリア国防軍仕様。砂漠戦に対応するために装甲を強化、エンジンのフィルターも変更した
BA型(1142年~):東南アジア・オセアニア諸国連合軍向けタイプ
C型(1145年~):大容量データリンクに対応
AC型・BC型・EC型・BAE型・OC型(1145年~):A型・B型・E型・BA型・O型をC型相当に変更
D型(1150年~):陸上機動歩兵用のエンジン始動システムを搭載。各型からの改造車がある
[派生型]
坂東41式指揮通信車:砲塔を撤去、通信機器などを装備した動く中隊本部
東北43試自走高射砲
扶桑48試軽戦車:砲塔を廃止、120ミリ滑腔砲を車体に直接装備した。
九州54式歩兵戦闘車:モジュラー装甲を装備、軽戦車としても使えるように改造した




