I(九州)
@九州連邦共和国鹿児島県霧島市―国分航空基地、15号格納庫
2月12日九州標準時刻(=坂東標準時刻、日本標準時刻)0930時
「レーダーサイトからの報告では宮崎県の中部に小型のクラックゥが3機、おそらく戦闘機型かその系列機。高度6000を時速560キロで南南西に向かっています」
格納庫のはしに立っている第15歩兵団隊長、若葉ハツシモ中佐がレーダーサイトからの報告を読み上げる。
「エンジン始動!!」
6機のSAKURA-14飛行鞄のエンジンが始動。轟音が格納庫に響きわたる。
「退避!」
エンジンの始動を確認した整備兵が大急ぎで待避する。
〈発進!!〉
エンジン出力最大、アフターバーナー、点火。
整備ユニットのロックを解除。
体を大きく前に傾けて加速。
〈クッドラック、国分大尉、日向大尉、益城中尉、竹田少尉、椎葉少尉、北浦准尉!!〉
6人の航空機動歩兵が若葉中佐の敬礼に見送られ格納庫から飛び出す。
「離陸!!」
フライトの長機の国分の指示で6人が体を起こし、各々の背中に背負ったSAKURA-14に搭載された3機のMF28魔導ターボファンエンジンから延びるアフターバーナーの蒼い光でコンクリートの地面を叩くように離陸する。
6人の魔女は高度を上げるとデルタ編隊を維持したまま旋回し、進路を北に変え、たちまち空に消えた。
@九州連邦共和国鹿児島県霧島市―国分航空基地、通信指揮室
2月12日九州標準時刻0956時
ウウウウウウウウウウウ!
国分基地に警報が響きわたる
ブリーフィングを終えた航空機動歩兵部隊が格納庫から次々と発進し、続いて戦闘機部隊が轟音とともに滑走路から離陸していく。
「あの空域にはうちの魔女がいる!つないで!」
そんな大わらわの国分基地の一室、大型のモニターが壁に設置され、オペレーターと各部隊の指揮官が忙しくたち働く通信指揮室の一角、航空機動歩兵部隊との通信や指揮を受け持つ区画で30をすぎたばかりの若葉中佐がオペレーターに指示を出す。
「無理です、大規模な通信障害が発生していてこちらからの通信もあちらからのものもつながりません!」
「いいからなんとかして!せめてほかの部隊とでも合流させないとあの子たちが死んじゃうわ!」
泣きそうな形相で制御卓にかじりつくオペレータを涙で化粧が崩れてすさまじいことになっている若葉が泣きつく。
「ちょ……若葉中佐、落ち着いてください」
「は、ハツシモさん、気を確かに…」
「そ、そうですよ、今日はあの109歩兵団から帰ってきた国分大尉が長機をやっているんでしょう?大丈夫ですよ、きっと」
その若葉を止めようとするほかの歩兵団の指揮官の声も震えている。
若葉中佐――いや、機動歩兵部隊の指揮官にとって隊員はただの部下ではない、もはや家族といってもいい存在なのだ。
「……うくっ」
ようやく落ち着いた若葉がしゃくりあげながら椅子に座る。
「こちら国分基地、インターセクト、応答せよ、繰り返すこちら国分基地、インターセクト、応答せよ!」
喧噪に包まれている指揮通信室のなかで航空機動歩兵部隊の区画は若葉から解放されたオペレーターが泣きそうになるのをこらえて必死に呼びかける声だけが響く。
しかし、無線は通じなかった。
@九州連邦共和国宮崎県南部―高度5000メートル
2月12日九州標準時刻0957時
「目標の撃墜を確認……待ってください、北方に不明機編隊、高度5600、速度570、数…50以上」
「50?何かの間違いじゃなくて?」
「少なく見積もってもの話です、おそらく、もっといます」
「はぁ?」
国分は固有魔法の広域探査を発動させて周囲を探った結果を報告してきた北浦准尉に顔を寄せ、怪訝そうに聞き返した。
通信機を使わないのは戦闘機型を撃墜した後、急激に通信状況が悪くなったためである。
「IFFは?」
「IFF、unknown」
「味方は――この状況じゃ仕方ないか……」
味方――人類機ではないことは国分にもわかっていた。今の人類はそんな大量の機体をクラックゥの制空権に先制攻撃で突入させられる状態ではない。現状を維持するのでも精一杯なのだ。
つまり、確実に敵。
しかし、認めたくない現実であった。
おそらく、レーダーサイトやホークアイがすでに発見し、南九州のもてる限りの航空部隊を集結させ始めているだろう。
しかし、無線が使えない。これでは増援部隊との連携は不可能だ。
(どうするか……)
国分は持っている経験を集結させて戦うか否かの検討に入ったとき、
「ライコ!!」
国分の同期の友人である日向大尉が叫んだ。
「なに!?」
とっさに振り向いた国分は血が凍り付くのを感じた。
「空が……クラックゥに覆われている……?」
呆然と誰かがつぶやいた。
実際にはそこまでの数がいるわけではないのだが、50機ものクラックゥが編隊を組んで悠々と飛行している光景は彼らの想像できるレベルを超えていた。
「うそだろ……」
「おいおい……」
ほかの隊員も呆気にとられてそんなつぶやきしか出ない。
もはや数が多すぎて危機感すらも停止するレベルの数のクラックゥだ。
しかし、1人だけ危機感を停止させていなかった。
「まずい……」
国分が出向していた第109歩兵団が諸事情により東北のクラックゥの巣を破壊することになったとき、巣の中心だった首都、仙台で大量のクラックゥとの戦闘を余儀なくされたことがある。
そのおかげで、大量のクラックゥを目前にしても正常な理性をかろうじて維持できた。
「全機、高度6500メートルまで直ちにズーム上昇!全員、命令を復唱!」
思考停止状態になっていた他のメンバーが国分の命令で我に返っり、あわてて復唱しはじめる。
「こ、高度6500メートルまで直ちにズーム上昇!復唱終わり!」
「高度6500メートルまで直ちにズーム上昇。復唱終わり!」
復唱を終えたメンバーが次々とエンジンの出力を上げ、垂直に上昇していく。
それを確認し終えた国分も垂直に上昇を開始する。
全員が高度6500メートルに達する頃にはクラックゥの大編隊がかなり接近してきていた。
「全員、なるべく交戦はしないように!味方との合――」
国分がさらに指示を出しかけたとき、クラックゥの編隊から数機の戦闘機型が上昇してきているのに気づき、国分はあわてて命令を変更した。
「エンゲージ!各員、交戦を許可する!く――」
同時に、戦闘機型がビームを発射した。
「ブレイク!ブレイク!」
国分は叫びながらMG42改の安全装置を解除。
後ろに目をやると1機の戦闘機型がついてきている。
右旋回。
クラックゥはそのままついてくる。
1機のクラックゥがビームを発射。
同時に、国分は体を大きく反らす。
エンジンの推力の向きが前方に変えられ、急減速。
クラックゥはオーバーシュート。
国分はすかさずMG42改で射撃。
戦闘機型は急に機首を上げ、急減速で国分をオーバーシュートさせようとする。
しかし逆にそれが命取りになった。
国分は難なくその機動に追随し、さらけ出された戦闘機型の上部の中央部に向かってMG42改で射撃。
装甲が剥がれる。
紅く輝くコアが露出。
次の瞬間、MG42改の銃弾で崩壊。
クラックゥを撃墜した国分は周囲を見回す。
下方では爆撃型クラックゥに迎撃の航空機動歩兵が襲いかかったところだった。
@九州連邦共和国宮崎県人吉市東漆田町―前線
2月12日九州標準時刻1002時
「はぁ、寒いですねぇ……灰色の敵さん、今日はこないといいんですけどねぇ」
九州連邦共和国宮崎県南部、大畑町に設けられた戦線の土嚢に寄りかかりながら、時々ガスバーナーにかけられた鍋の様子を確認していた陸上機動歩兵がつぶやく。ショートカットの黒髪にくりくりとした目の利発そうな雰囲気の少女だ。
「そうもいかんだろう。空では今日も出てきたらしいからな。陸もくるだろう」
そのつぶやきにその横でくたびれた文庫本を呼んでいた陸戦機動歩兵が片方の眉をあげながらつまらなそうにこたえる。こちらは黒髪を左右で団子にまとめ、全体的に幼そうな雰囲気だが、それなりに発達した胸など所々にショートカットの陸上機動歩兵より年かさであることを窺わせている。
「でしょうねぇ……」
あっさり期待を切り捨てられたショートカットの陸上機動歩兵はちょうど沸騰してきていた鍋の中の湯に懐から出したティーパックをいくつか投入した。
「あ、紅茶私にもちょうだい」
「残念ながらコーンティーです。飲みます?」
ショートカットの陸上機動歩兵は斜めがけしたポーチから金属製のコップを取り出し、鍋の中の鼈甲色の茶を注いでいく。
「あ〜、じゃあいいや。……ちょっと地雷埋設行ってくる」
年かさの陸上機動歩兵はスコップとトイレットペーパーを持って藪の方に移動する。
「了解で〜す」
ショートカットの陸上機動歩兵はその後ろ姿にラフな敬礼をした。
「!?」
直後、ヘッドセットの耳の部分を急に押さえた。
〈観測機より報告、クラックゥ確認!陸戦型15、移動砲台型2!各員戦闘配置につけ!〉
無線はそう告げていた。
そこからあまり離れていないところで土嚢でハルダウンの体勢をとっていた九州53式装軌戦闘車にも敵襲の報せは届いていた。
〈観測機より報告、クラックゥ確認!陸戦型15、移動砲台型2!〉
操縦手の報告とともに、車両後部のコマンダーズ・ハッチから上半身を出していた壮年の車長が一瞬だけ顔をしかめてから眉一つ動かさずに指示を出す。
「む、エンジン始動」
〈了解。移動はします?〉
「いや、いい。……現段階ではな」
操縦手にさらに指示を飛ばしつつ、車長は車長席に体を納め、目の前にあるモニターに新たに「EN」の表示が追加されていることを確認する。
さらにモニターにタッチして観測機のセンサーが送ってくる情報を確認。
〈エンジンがだいたい暖まりました。いつでも動けます〉
「よし、とりあえず待機。指示を待つ」
〈了解〉
車長の指示に、操縦手が短く答えると九州53式装軌戦闘車の内部は戦闘が始まるまでの少しの時間、沈黙に包まれた。
土嚢を1メートル程度の高さに積み上げて作られた防衛線の前方に20あまりの灰色の影が現れた。
「目標を肉眼で確認!突撃!」
命令と同時に土嚢を飛び越えてバックパックを背負った30人ほどの少女たちが手に持った機関銃を撃ちながら突撃。
土嚢に隠れるようにしていた九州53式装軌戦闘車が主砲の50ミリ機関砲で援護射撃。
土嚢に防盾を隠し、砲身をつきだしていた扶桑40式160ミリ対戦車砲がクラックゥに向かって射撃。
クラックゥもビームや実弾兵器で反撃。
陸上機動歩兵はシールドを張ってビームや実弾兵器を弾きながらクラックゥに機関銃で攻撃。
さらに、後方から迫撃砲による砲撃支援。
クラックゥに次々と砲弾や銃弾が命中し、装甲を剥がしていく。
クラックゥが放ったビームが砲撃をしていた対戦車砲に命中。
対戦車砲の砲弾に誘爆して大爆発。
土嚢や人が吹き飛ぶ。
しかし他の砲は砲撃をやめない。
10分後、20のクラックゥはすべて吹き飛んだ。
しかし、上空を飛んでいた観測ヘリはさらに敵がやってきていることを確認し、報告していた。
登場する架空兵器の解説を……
FA5(扶桑) 40式局地防衛戦闘機「雷電」(坂東) HA3(北海道) A-1(東北) A-40(九州・オーストラリア)
[性能(11型、A型、1A型、a-a型)]
分類:対地攻撃機
乗員:1名
全幅:17.61m
全長:16.35m
全高:4.5m
主翼面積:47.5平方メートル
固定武装:扶桑33式2号6砲身機関砲(弾数1147発)
空虚重量:11352kg
最大離陸重量:22700kg
最大速度:706km/h
巡航速度:560km/h
海面上昇率:1829m/分
実用上昇限度:13716m
行動半径:501km
設計:JA社(日本攻撃機)←この機体を開発するために設立された会社
[特徴]
アメリカのA-10「サンダーボルトII」攻撃機をベースに九州、東北、坂東、扶桑、北海道の共同開発で生まれ、現在も使用されている名攻撃機。
機体構造はA-10同様。
主武装は扶桑33式6砲身30ミリ機関砲。また、大量のミサイルや爆弾も積める。
非常に厚い防弾板を装備し、35ミリ機関砲弾の直撃にも耐えられる。
また、車輪は完全には格納されず、下半分が露出し、不時着時の生存性を高めている。
初期型は空気清浄機もついていたが、クラックゥのガスにはあまり意味がなかったので取り外された。
レーダーは簡易なものしか装備していないが、暗視装置は標準装備している。
燃料系統は改良により高機動にも耐えられるが、基本的には空戦は行わない。
安価かつ迅速に生産可能で航空機動歩兵がなため、オーストラリアやフィリピンのみならず東ソ連でも生産・配備されている。
「クラックゥのビームをぎりぎりよけたが、しばらくした後に後ろを見たらエンジンを片方もってかれてた。もちろん生還した」とかはざら。
操縦系統は3重の油圧系統と2重の機械系統。
さらに、設計上、片方の主翼、エンジン、尾翼、すべての操縦系統と油圧を喪失しても帰還可能。
1回の戦闘でのビームの命中率は175%と言われる。100%以上なのは1回じゃ落ちないから。
さらに、機体外板は構造部材でないため、必ずしも正規のものである必要はなく、場合によってはベニヤ板などで代用されることもある。
まとめるととにかく頑丈な機体。
また、かなり完成度が高いため、あまり改良が行われていない。
[バリエーション]
40式局地防衛戦闘機11型、FA5a-a、A-1A、HA3-1A、A-40A(1140年~1148年):初期型。未だ現役
A-40AA(1141年~):ASEAON軍向けタイプ
A-40E、Ja-40(1142年~):東ソ連防空軍向けタイプ
40式局地防衛戦闘機21型、FA5b-a、HA3-2A、A-40B(1148年~):改良型。簡易地形レーダー・グラスコックピットを装備
[派生型]
43式指揮観測戦闘機、FOA5、HO3、OA-40、Ja-43:複座の観測機。主に航空機動歩兵部隊の指揮官が現地指揮を行う時に使用する
●扶桑40式対戦車砲
[性能]
分類:牽引式火砲
重量:10.2t
全長:10.7m(移動時)
13.2m(射撃時)
主砲:福井工業45口径長160ミリ対戦車砲
[特徴]
牽引式対戦車砲。
主砲は坂東40式自走砲と違い、福井工業45口径長160ミリ対戦車砲である。(坂東40式自走砲は福井工業40口径長160ミリ榴弾砲。)
安価かつ、距離次第ではクラックゥにも有効なため、基地防衛用に配備されていることが多い。
基本的には扶桑40式弾薬補給車(M113から改造)とペアを組む
[バリエーション]
A型(1140年~)
E型(1141年~):東部ソヴィエト連邦仕様
AA型(1142年~):東南アジア・オセアニア諸国連合軍仕様。仰角を大きくとれるように改良した。
B型(1142年~):防盾を装備
C型(1148年~):砲身先端にマズルブレーキを装備する
[派生型]
北海道48式対戦車砲:自動装填装置を搭載
北海道48式2号対戦車砲:装甲を装備
北海道49式対戦車砲:エンジンを搭載し、自力で移動可能にした
北海道50式対戦車砲:装甲とエンジンが強化した
北海道51試(51式)対戦車砲:履帯を装備、不整地走破能力を強化した。なお、51試とする資料と51式とする資料の2種類がある。
●九州53式装軌戦闘車
[性能]
分類:軽戦車/主力戦車
武装:扶桑50式50ミリ機関砲(発射速度:毎分250発)
全長:6.03m(本体:5.2m)
全幅:2m
全高:1.5m/2.02m
自重:18t(標準装甲時)
最大装甲厚:軟鉄50ミリ(標準装甲時)
エンジン:桜島学園製作所53式ディーゼル発電方式パワーパック(600hp)
サスペンション:油気圧式
最大速度:72km/h(前進時・不整地)
72km/h(後退時・不整地)
140km/h(前進時・整地・リミッター解除時)
ギア:前進6段、後退6段
制御方式:オートマティック
行動半径:300km
履帯幅:30cm
履帯:シングルピン・ダブルブロック方式(幅30cm×長さ9cm)
接地圧:0.669kgf/cm^2(参考資料→成人男性の接地圧:約5.56kgf/cm^2)
潜水渡河能力:2m
超堤能力:0.9m
超壕能力:2.2m
登坂能力:70%で時速12キロ
最大横傾斜:50%
加速力:10秒で時速55キロ
乗員:2名(車長、操縦手兼砲手)
弾薬数(50ミリ機関砲弾):400発(A型)
450発(B型)
525発(C型)
570発(D型)
630発(E型)
採用国:九州連邦共和国桜島学園臨時政府
東北合衆国
[特徴]
38式戦車を改造してつくられた九州50試装軌戦闘車で得られたデータを基に九州連邦共和国桜島臨時政府、いわゆる南九州連邦共和国が開発した軽戦車。
コンセプトは「38式より安く、九州において38式よりクラックゥに効果がある戦車」。
開発の際はなるべく38式戦車や既存品の部品などを流用して開発費を圧縮するようにされた。
また、主砲の50ミリ機関砲は扶桑の土佐銃器の艦載向けのもの流用している。
結果、38式戦車より安価かつ軽量、量産も簡便なため、南九州では非常に重宝されている。
しかも、約30t/hpと高い質量馬力比を持つため、機動性が高い。
砲塔は50ミリ機関砲、および弾薬で占められ、無人で、これが生存性を高めている。
その代わり乗員のスペースは非常に狭い。基本的には仰向けに寝そべった状態になる。
滑腔砲やライフル砲ではなく機関砲を搭載したのは、クラックゥの再生速度より早く弾丸を叩き込んでクラックゥを破壊するため。ちなみにHEAT弾も撃てる。
また、主砲の50ミリ機関砲は度重なる改良によってE型の2号3型では射程が5キロに及び、山がちでロング・レンジの戦いの少ない九州の戦場では狙い通りの戦果をあげている。この主砲は撤甲弾なら砲口初速がマッハ3近くに達し、5秒の射撃で3キロ先の400ミリ厚鉄鋼板を貫通できる。
ただ、開けた地域では50ミリでは破壊力が足りないこともあり、その際は38式が戦う。
A型は砲塔がソ連戦車のように極端に小さいため、俯角が異様に制限されるが、車体を前後左右に傾けられるのでそれを最大限に活かして稜線射撃の時は俯角の狭さを補っている。しかし、弾薬数が非常に限られたため、改修されるたびに砲塔は大型化されている。
さらに、モジュラー装甲を装備していて、合体ロボのおもちゃのように装甲を交換できる。(ただし、調整が必要であるが)
その他、扶桑45式ロケットランチャーや坂東52式超電磁機関銃、坂東49式25ミリ機関砲などを車内からリモコン操作できる状態で砲塔上に設置できる。
しかも、公開直後にタカラトニー(扶桑のおもちゃ会社)が精密なラジコンを発売したため、モジュラー装甲などの合体ロボのような仕組みとあいまって「53式を設計したのはタカラトニー」という噂が2ちゃんねるの軍事板などでささやかれた。もちろんデマである。
電子機器類は粗艦乱造のF型以外は豊富で、高度なFCS、データリンク、敵味方識別装置を装備しており、車長用独立赤外線画像装置、自動分析装置によって、車長の補助を行う。また、FCSはレーザー測定装置と連動し、自動照準も可能である。しかし、微調整が難しいため、マニュアルで自動照準は何らかの原因で乗員が1名のみになった時のみの使用に制限されている。
オプションに対空レーダーやそれを運用するためのプログラムなどもあり、対空戦車としても使用できる。もはや合体ロボ。
さらにシェルツンやスモーク・アーマー(対クラックゥ用煙幕発生装甲。ただしあまり効果はない)なども装着できる。
非公式の愛称は「タイター」。
製造は桜島学園製作所。オーストラリアにある製造拠点で製造され、船で九州に輸送される。
製造元の桜島学園製作所はその安価さを強みに海外輸出にも積極的だが、元々山がちな地域を想定した車両のため、苦労している様子。しかし、似たような環境にあり、1155年12月にようやく国土をクラックゥから奪還した東北合衆国の陸軍が1156年に制式採用を決定した。
[バリエーション(※ただし、生産な過渡期型や車体はA型、砲塔はE型のようなものもある)]
九州51試装軌戦闘車試作型(1151年):試作車。10両が試作された
九州51試装軌戦闘車増加試作型(1151年):試作型で不具合の見られた車体傾斜機構やサスペンションを改良。10両が試作された
九州51試装軌戦闘車先行量産型(1152年):試作型、増加試作型のデータを基に実地評価用に1個戦車中隊20両(含予備)が製造された。実は砲塔などの形、サイズや装甲の厚さといった仕様が違う4タイプ(重装甲型、120ミリ砲搭載可能型、高速型、大型砲塔型)が1個小隊5両づつ生産、配備された。最終的には高速型が最も優秀な成績を残し、A型のベースとなった。
A型(1153年~):第1次量産車。極端に小さい砲塔を装備し、ハッチは車体上部にある。
B型(1153年~):第2次量産車。砲塔後部が拡張され、携行弾薬が増えた。
C型(1153年~):第3次量産車。砲塔がティーガーのような角形のものに変更された。これは携行弾薬数のさらなる増加を図ったのと、分析の結果、クラックゥは通常兵器に実弾兵器で攻撃してこないのが判明し、被弾経始をあまり重視する必要がなくなったため。
D型(1154年~):第4次量産型。砲塔を大型化した。また、車長用ぺリスコープを装備した。
E型(1154年~):第5次量産型。砲塔をさらに大型化、ドーザーアタッチメントにも対応。
F型(1156年~):第6次量産型。クラックゥの南九州侵攻によって大量の車両を喪失したため、急遽その穴埋めとして製造された。そのため、電子機器が非常に貧弱かつ、車両じたいもA型~E型の物が流用されていて、砲塔の形状などが統一されていない。識別ポイントはデータリンク用アンテナの有無。一部は装甲モジュールが不足したためにベニヤ板などで代用されている。
[派生型]
九州53式自走高射機関砲:砲塔上に対空レーダー、砲塔左右に扶桑32式4号2型30ミリ機関砲を搭載した砲塔に変更したタイプ。A型、B型、C型、D型、E型がある。
九州55式装軌戦闘車:主砲を75ミリ機関砲に変更、エンジンも強化したマイナーチェンジモデル。