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ただしいおうさま

作者: たんぺい

昔昔の話です。


ある所に正しい事ばかり言う正義の王様がいました。

王様は正しい事を常に行う、悪い事を赦さない性格でありました。


こんな事がありました。

飢えて飢えて、生まれも育ちも苦しいお腹がすいた子供が、ある日パンを一つ盗みました。

王様はその少年に言いました。

「どんな事情があろうとも、盗みを働く悪い輩は赦さない」

その少年は死刑になりました。


こんな事がありました。

悔しくて悔しくて、少し顔が悪く頭が悪いと言うだけで馬鹿にされ続けた少女が、ある日悪口を言った相手をぼこぼこに殴りつけました。

王様はその少女に言いました。

「どんな事情があろうとも、暴力をふるう悪い輩は赦さない」

その少女は死刑になりました。


こんな事もありました。

可哀想で可哀想で、不治の死病に苦しむ患者を見かねて、ある日患者に安楽死を選ばせてあげた医師がいました。

王様は医師に言いました。

「どんな事情があろうとも、殺人する悪い輩は赦さない」

その医師は死刑になりました。


こんな事もありました。

貧しくて貧しくて、一生懸命働いてもお金が無い家族が、ある日ついに税金も年金も払えなくなりました。

王様はその家族に言いました。

「どんな事情があろうとも、国民の義務を無視する様な悪い輩は赦さない」

その家族は死刑になりました。


そんな王国でのある日の朝の出来事です。

王様は耳障りな轟音で目が覚めます。何事かと庭を覗いて見れば、なんと王様の城を民衆も貴族も兵士も関係無く破壊しているではありませんか。

王様は言いました。

「何の冗談だ貴様ら!私の城に何をする!私が何をした!」

民衆は答えます。

「正しい事だけの王様なんて横暴だ!神様にでもなったつもりか!」

貴族は答えます。

「我々はどちらかと言えばあなた側の人間かも知れないが、あなたはやり過ぎた!」

兵士は答えます。

「難しい事を言うつもりも無ぇが、あんたの味方はしんどいんだ!」

そしてそう言った後国民全員が皮肉たっぷりに王様に向けて言いました。

「どんな事情があろうとも、独裁で政治する悪い輩は赦さない……あんたにはぴったりの最期の言葉だ!」

王様はそうして、最期まで自分は悪く無いと言いながらも死刑にされました。


そしてその国には新しく大統領が生まれました。

その大統領は間違った事も沢山しましたが、それでも「『正しい王様』よりマシ」と、それなりに国民に愛されましたとさ。


めでたし

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