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Wish upon a Beast  作者: 九十九 千尋
聖抜戦争
3/5

1-2 召喚獣、敗北する

【ミラ聖王国】アーケバス神帝国の後継たる、血筋を重んじる王政国家。

 世界最初の統一国家であるアーケバス神帝国の初代皇帝ルアド・アーケバスが死去した事を切っ掛けに起きた内乱により、ルアドの妹であるミラ・アーケバスを国王として神暦120年に起こされた国。

 神暦3995年時点、国王ユトロ・ゾス・アーケバスは臓腑を患っており、長男であるアテル・ゾス・アーケバスが五年前に亡くなったことから容体は悪化。政の多くを次男であるルディ・ゾス・アーケバスに一任し、口を開く回数も減ってきている。


【ルディ・ゾス・アーケバス】ミラ聖王国の第二王子。

 血統主義のミラ聖王国において、実力主義の私兵団を抱える革新派。

 ミラ聖王国の王族の例に洩れず、否、王族の中でも極めて才能に富んでいる。

 しかし、彼は自身の実力に不満があるようで……


「笑止!」


 獣が足を踏み鳴らすだけで、王城の端から端までが厳冬に沈む。瞬く間に城は白く霜に覆われ、第二王子の私兵たちの吐く息を白く染め上げた。獣の体に刺さっていた炎の蛇は瞬く間に凍り付いて崩れ去り、獣の豊かな鬣を持つ頭部が復元される。

 王城屈指の実力を持つ第二王子の私兵ですら不可能な御業を、一工程(ワンアクション)で行った人智を越えた存在。頭部を失っても問題なく動き、失ったはずの頭部も問題なく復元してみた常識を超えた異形。目の前で起きた出来事に、周囲で見守っていたミラ聖王国の兵士も、逃げ遅れた王城の使用人も、相対する私兵たちですら思わず一歩退いた。


 次の瞬間、獣は兵士たちを跳ね除けてルディに飛び掛かかる。その速さ、一瞬とはいえ逡巡した者たちでは捉えられず、その牙がルディを捕らえた……かに見えた。


 だが、ルディは短い祈りによって起動した魔術で自身を強化し、城塞すら破壊する突進を片腕で防ぐ。揮発する汗が赤い蒸気となり、全身の血管と筋肉を浮き立たせるその姿は、見た者に神話の時代に勇者と相対した魔の王を思わせた。

 魔術によって膨れ上がった自身の体より、十倍の大きさは在ろうかという獣を、ルディは軽々と投げ飛ばす。

 獣は逆さまになった世界を見ながら、何が起きたか分からずに居る。しかしその心の中は、更に判断のつかない、言い表しがたい感情に呑まれていた。その感情が、獣の体から力を奪い去っていく。

 まるで、ルディを討つことは自身の(願い)から外れている行動なのだと告げられたかのように、身体から力が抜け落ちたのだ。


「馬鹿な、有り得ん。こんな、こんなはずは。いや、何が起きている? 我は、吾輩は、一体?」


 謁見の間の床の上、何故か見覚えのある高い天井を見上げて、獣は現状把握に意識を割かれている。

 倒れ伏した獣を赤い蒸気を燻らせたルディが見下ろす。


「獣よ、お前が何なのか、余には解ったぞ。その力を解析、量産したいところだが、お前の正体を思えばこそ生かしておけん」

「吾輩の正体? 待て、貴様は何を知っている?」


 獣の問いにルディは全く応えない。答えを示しもしない。意味のある沈黙すら見せなかった。


「何故、吾輩は貴様を……いや、そもそも貴様、何を成そうというのだ!? 何をしようというのか!?」


 すなわち、獣は何を止めれば良いのか、自身は何のためにここに来たのか、という問いでもあった。だが当然ルディは答えない。

 そして魔王は先祖伝来の大剣を、獣へと振り下ろした。


「決まっている。このイカレタ世界を、このルディ・ゾス・アーケバスが滅ぼすのだ」


「おい作者ぁ!! 吾輩負けたぞ!!」


 今更ですが、獣さんは召喚獣です。

 召喚獣は「込められた願いを叶えるためなら最強」の存在ではあります。


「そう言ってたな。プロローグで」


 では、負けてしまったのは何故か。

 ずばり、獣さんに込められた願いは「ルアドを誅する事ではない」ということが解ります。しかし、ルアドの元まで力でドカーンと突っ込むまでは良かったですね。つまりそこまでは「願いに即している」と言えるかもしれません。


「ということは、城の中になにかあるのか? あるいは、ルアドに何かあるのか?」


 さあ?


「『さあ?』!?」


 作者、まだ書き終えていませんもの……


「なんだか途端に不安になって来たぞ」

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