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第5話 コカトリスの卵とバスタードソード

 深夜1時55分。

 俺は、買ってきたコンビニの「特製たまごサンド」をテーブルに置き、プシュッとストロング缶を開けた。


 ごくりと喉を鳴らしてから、いつものように反応しないはずのボタンを押す。

 ザザザとデジタル特有のノイズが走り、あの番組を受信し始めた。


『はい!こんばんは。今夜も始まりました「ルルのドキドキ♡クッキング」!』

 画面の向こうには、4K画質でその可愛さを持て余すことなくアピールしている、銀髪エルフのルルちゃんが立っていた。


『今夜のメイン食材は、こちら!先ほど巣から取ってきたばかりの「コカトリスの卵」ですっ!』

 まな板の上に置かれたのは、幼稚園児ほどの背丈はあろうかという巨大な卵だった。


(コカトリス!?石化とかしそうで怖いんだけど、大丈夫か?)


『この卵、栄養満点でとっても美味しいんですけど、ちょっと硬いのが難点なんですよねー。ほらっ!』

 ルルちゃんがいつも使っている包丁をコンッと当てるが、カンッ!と甲高い金属音が鳴って弾かれた。


(硬いってレベルじゃねーだろ!鉄球かよ!)


『なので、今日は特別にこれを使います!――スタッフさん、お願いしまーす!』

 ルルちゃんが画面外のスタッフから受け取ったのは、彼女の背丈ほどもある巨大な両手剣、バスタードソードだった。


(料理番組でバスタードソード!?)


『えいっ!』

 ルルちゃんは満面の笑顔で、バスタードソードを横から後ろに下げ、反動を使って一気に横から薙ぎ払うように切りつけた。


 ガァァァン!!という轟音とともに、卵の殻が粉砕される。

 しかし、それと同時に凄まじい内圧で圧縮されていた中身が一気に弾け飛んだ。


「ぶっ!?」


 飲みかけたストロング缶を、思わず吹き出しそうになった。


 ブシャアアアッ!と、大量の黄色いドロドロの液体――つまり巨大な黄身が画面いっぱいに飛び散り、カメラのレンズを黄色く染め上げた。


(中身が爆発したぞ!?)


 画面は黄色い粘液に覆われているが、ルルちゃんの『いい感じに割れましたねー!』という楽しげな声だけが響く。

 やがてスタッフがレンズを拭き取ると、そこには頭の先からピンクのエプロンまで、全身ドロドロの黄身まみれになったルルちゃんが立っていた。


「いや、大惨事じゃねーか!!自分でかぶってんじゃん!」


 ストロング缶をあおりながら突っ込むが、ルルちゃんは全く気にする様子もなく、卵の残骸に残った黄身をスプーンですくい、ボウルに移していく。


「危な――」


 俺がそう思った時には、ルルちゃんが床に散らかった黄身で足を滑らせ、ゴン!という音を立てて派手に転倒した。

 黄身だらけのスカートが捲れ上がり、画面では水色のパンツがおっ広げになっている。


(……大丈夫か? 色々と……)


 ゴクリとストロング缶を一口飲むと、画面がパッと切り替わる。

 異世界の風景と共に、「しばらくお待ちください」と書かれていそうな、読めない文字が画面に表示された。


「完全に放送事故じゃねーか!」


 俺のルルちゃんに対する心配をよそに、画面からは、クラシックのようなのどかな音楽が流れてくる。


(……これひょっとして生放送なのか?)


 音楽を肴にストロング缶をグビリ。


 どのくらい立っただろう。

 突如、画面がパッと戻った。


『すみません、ちょっと足を滑らせちゃいました! てへっ♡』

 頭に包帯を巻いたルルちゃんが、笑顔で舌を出している。


(可愛い……。 けど大丈夫なのか?)


 カメラが卵をズームで捉える。

 テレビに映し出されたのは、バスタードソードの一撃によって上半分砕け散った卵。

 卵の中には殻の破片がたっぷり混ざった、黄身が画面いっぱいに映し出される。


『皆さんも、卵割る時は気をつけてくださいね!――では、来週もまた見てください!ルルでしたー♡』

 頭に包帯巻いた、全身黄身だらけでベタベタのルルちゃんが、満面の笑みでこちらに手を振っている。


「いや、割っただけかよ!」


 プツン。

 テレビの電源が勝手に切れ、部屋に静寂が訪れる。


「……あまりに衝撃的すぎて、ルルちゃんのおパンツが水色ってことしか頭に残ってない」


 俺は、テーブルの上の「特製たまごサンド」を一口かじった。

 ふわふわのパンと、なめらかで殻など一切入っていないマイルドな卵の風味。

 俺は、黄身を被る危険性もなく、安全かつ適切に調理されている地球の卵料理の偉大さに、ただ静かに感謝した。

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― 新着の感想 ―
地球って凄い! ルルちゃん頑張れ!!! 頭の怪我大丈夫かな? 心配。
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