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第3章ー㉝ 高ランクハンターの実力

前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。


モンスターが完全に沈黙してから、しばらくのあいだ、

区画には金属が冷える音と、誰かの荒い呼吸だけが残っていた。

ロゼッタがウォーハンマーを下ろした、

その瞬間――遠くから、低く、腹の底に響くような

振動が伝わってくる。


最初は風かと思った。

だが、それにしては規則正しすぎる。


ゴゴゴ……


地面が揺れ、瓦礫が小さく跳ねる。

ミレイアが耳に手を当て、目を細めた。


「来る……後方部隊だ」


次の瞬間、崩れた建物の影から、黒い影が一気に流れ込んできた。


先頭を切ったのはバイク部隊。

二輪と三輪が混じり、軽装のハンターたちが前傾姿勢で突っ込んでくる。

排気音が甲高く、**ギャァン! ギャリギャリッ!**と廃墟に反響し、

砂埃を巻き上げながら周囲を一気に制圧していく。


その後ろから、オフロード車が数台。

ロールケージに重機関銃を載せ、助手席の射手が即座に周囲をスキャンしている。

ガチャリと銃身が動く音がして、まだ生きている小型個体を正確に撃ち抜いていった。


さらにその奥から、バギーが跳ねるように現れる。

軽量で機動力重視、車体には即席の装甲板が溶接され、

側面には予備弾薬と燃料缶が無造作に括り付けられている。

運転席のハンターは片手でハンドルを操り、もう片方で短機関銃を構えたまま、

流れるように周囲を掃討していた。


「すごい……」


ロゼッタの口から、思わず声が漏れる。

戦場が、一気に“整理”されていく。


そして、輸送トラックが続いた。

大型で、側面にはハンターギルドの刻印。

荷台には弾薬箱、医療キット、簡易修理用の部品が山積みになっている。

停車するや否や、後部ハッチが開き、整備士や補給要員が一斉に飛び降りた。


「前線お疲れ! 負傷者は!?」

「装備損耗、こっちで見るぞ!」


怒号と指示が飛び交い、戦場が一瞬で“拠点”へと変わる。


セリカは目を輝かせながら、その光景を見回していた。

「……これが、車を持つハンターたち」


ロゼッタは頷く。

ただの移動手段じゃない。

戦場そのものを運んでくる存在だ。


――そして。


すべての音を、押し潰すような重低音が、遅れてやってくる。


ズゥゥゥン……ズゥゥゥン……


空気が震え、地面が確実に沈む感覚。

瓦礫の隙間から、巨大な影が姿を現した。


それは――戦車だった。


厚い装甲に覆われ、砲塔はゆっくりと旋回している。

砲身は前方を睨み、まだ撃ってもいないのに、その存在だけで周囲の空気を制圧していた。

履帯が瓦礫を踏み砕き、**ガリガリ……**という音が不気味に響く。


周囲のハンターたちが、無言でその進路を空ける。

誰もが理解していた。

これは「切り札」だと。


ミレイアが、小さく息を吐いた。

「……ここまで出るってことは、ギルドも本気だね」


ロゼッタは戦車を見上げ、言葉を失っていた。

剣闘場でも、モンスターでもない。

人が作り、人が運用する“圧倒的な力”。


(……これが、ハンターギルドの戦争)


オラクルの声が、静かに頭の奥に流れる。


――【後方部隊合流、作戦安定】

――【生存率、上昇】


その淡々とした評価が、逆に現実を突きつけてくる。


ロゼッタは、ハンマーを握り直した。

剣闘士でも、ただの生存者でもない。

この巨大な歯車の中で、自分は“ハンター”として戦っている

その実感が、ようやく胸に落ちてきた。


戦車の砲塔が止まり、前線を静かに見据える。

その存在感は、言葉より雄弁だった。


――ここから先は、ギルドが制圧する。


そう宣言しているかのように。



後方部隊との合流が完了した、その直後だった。

高ランクハンターたちは、状況確認を終えると、まるで「次は掃除だ」とでも言うように、

淡々と、しかし迷いなく動き始めた。


まず前に出たのは、重装オフロード部隊。

車体側面の装甲板が展開され、搭載された重機関銃がゆっくりと角度を変える。

照準が合わされると同時に、指揮役のハンターが短く手を振った。


ダダダダダダッ――!!


耳を打つ連続音。

弾丸が扇状にばら撒かれ、瓦礫の影に潜んでいたモンスターの群れが、

抵抗する間もなく吹き飛ばされる。

肉体が裂け、金属殻が砕け、破片が雨のように散った。


「……え」


ロゼッタの喉から、かすれた声が漏れる。

戦っている、というより――処理している。

それが正直な印象だった。


次に動いたのは、バギー部隊。

軽快なエンジン音を響かせながら左右に散開し、死角を潰すように走り回る。

搭乗員は走行しながら銃を撃ち、パンッ、パンッと短く乾いた音が続くたび、

逃げ遅れた小型個体が倒れていった。


「動きながら、正確に……」


ミレイアが呆然と呟く。

狙撃手としての経験があるからこそ、その異常な精度がわかる。


輸送トラックの後部では、別の光景が展開されていた。

現れたのは、数名のハンター。

装備は派手ではない。むしろ無骨で、使い込まれ、余計な装飾をすべて削ぎ落とした実戦仕様。

だが、立ち姿だけで分かる。

格が違う。


先頭を歩く男は、重火器を肩に担いでいた。

携行式対物ライフル。

それを“銃”としてではなく “道具” のように扱っている。


男が片膝をつき、呼吸を整える。

周囲の音が、一瞬だけ遠のいた。


ドォンッ!!


発射音というより、衝撃。

空気そのものが殴られ、衝撃波がロゼッタたちの足元まで伝わってくる。


数百メートル先。

装甲個体の上半身が、文字通り吹き飛んだ。


「……は?」


リンの口が、半開きのまま止まる。

ミレイアも、思わず銃を下ろしていた。


続いて動いたのは、別のハンター。

両腕に装着された多連装ランチャーが展開される。


シュババババッ!!


小型ロケットが扇状に飛び、逃げようとしていた群れの進路を正確に封鎖する。

爆発は最小限。

逃げ場だけを奪い、動線を“殺す”。


バイクから降りたハンターたちが、輸送トラックから取り出した

肩掛け式の重火器を次々と展開する。

ガチャン、カチリと装填音が重なり、同時に発射。


ドォン!!


爆風が区画を舐め、奥に潜んでいた中型個体がまとめて吹き飛ばされた。

衝撃波がロゼッタたちの頬を叩き、思わず身をすくめる。


「……数も、装備も、判断も……」


セリカは言葉を失い、ただ目の前の光景を追っていた。

自分たちが必死で戦った相手が、数分で“戦力外”にされていく。


だが、真に圧倒的だったのは――最後に動いた存在だ。


戦車の砲塔が、静かに旋回した。

金属が擦れる低い音が、周囲のすべてを黙らせる。


「目標、残存大型一。距離――」


誰かの声が聞こえたが、その続きを待つ必要はなかった。


ズドンッ!!!!


砲撃音が空気を引き裂いた。

次の瞬間、遠方の瓦礫帯が“消えた”。

正確には、爆炎と衝撃で原形を失い、巨大なクレーターに変わった。


爆風が遅れて押し寄せ、ロゼッタたちの髪と装備を揺らす。

耳鳴りの中で、誰も言葉を発せなかった。


数秒後、静寂。

敵影は、もうどこにもない。


「……終わりだ」


戦車のハッチが開き、高ランクハンターが顔を出す。

その声は、信じられないほど落ち着いていた。


ロゼッタは、その場に立ち尽くしていた。

剣も、ハンマーも、銃も――すべてが霞むほどの力。


(これが……高ランク)


ギルドの頂点に近い者たちが持つ、経験と装備と判断力。

個の強さではなく、戦場そのものを支配する力。


セリカが、ゆっくりと息を吐いた。

「……私たち、本当に新人なんだね」


誰も否定しなかった。

ロゼッタも、ただ黙って戦車を見つめる。


唖然としながらも、胸の奥では、別の感情が芽生えていた。

恐怖ではない。

嫉妬でもない。


――あそこに、いつか辿り着く。


そう、静かに誓うような、熱だった。



続く

メタルマックスの新作 まーだ時間かかりそうですかね?



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