表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/290

第3章ー㉔ 新しい街、新しい仕事、新しい仲間

前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。


定期便の中は、金属の床が微かに振動し、エンジン音が一定のリズムで腹に響いていた。

窓の外では、ジャンクタウンの雑多な影がゆっくりと遠ざかっていく。


ロゼッタは、向かいの座席に腰掛けながら、少し落ち着かない様子で二人を見ていた。

さっきまで一人で帰るつもりだった車内に、今はセリカとラベートがいる。その事実が、どこか不思議で、でも温かい。


「しかしさあ」


セリカが座席に肘をつき、にやりと笑う。


「まさか、あたしがハンターギルドに行くことになるとは思わなかったよ」


「登録するつもりなのか?」


ラベートが落ち着いた声で尋ねる。


「うん。

 素材集めも、モンスター相手も慣れてるしさ。

 どうせなら、ちゃんとした身分証があった方が楽でしょ?」


言いながら、セリカは楽しそうに指を折り始めた。


「まずは家探し。

 工房に通いやすいとこで、風呂は最低限あって、作業台置ける広さで……

 あ、家具もいるな。寝台と、棚と……」


「……ずいぶん具体的だな」


ラベートが苦笑する。


「決めたら早いんだよ、あたしは」


そう言って、セリカはロゼッタの方を向いた。


「ロゼッタ、ギルドの街でさ、

 飯がうまい店、知ってる?」


「え……?」


急に話を振られて、ロゼッタは少し慌てた。

だが、すぐに思い浮かぶ。


「……はい。

 果実酒が甘くて、パンがふわふわで……

 あと、焼き菓子が……とても……」


話しているうちに、自然と表情が緩む。


「おお、それ聞いただけで当たりだな」


セリカが嬉しそうに頷く。


「よし、決まり。

 最初の外食はそこだ」


「……そんなに簡単で、いいんですか?」


ロゼッタが小さく聞くと、セリカは目を丸くした。


「逆に聞くけど、

 楽しまない理由、ある?」


ロゼッタは一瞬言葉に詰まり、それから首を振った。


「……ない、です」


ラベートは、そのやり取りを静かに眺めながら口を開く。


「俺もギルドに用事がある。

 加工品の納品と、少し打ち合わせだ。

 だから、しばらく同行する」


「えっ、兄貴も?」


「ちょうどいいタイミングだ」


ラベートはそう言って、ロゼッタを見る。


「君の鍛冶屋の親方にも、話を聞いてみたい。

 素材の流れは、知っておいて損はない」


そして、セリカの方を見て、言った。


「それに妹がお世話になるんだ、家族として、兄として

 挨拶しておきたい」


「は、はい……」

「あっ あぁ……」


それぞれが、それぞれの反応を返す


ロゼッタは、胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。

一人で進むつもりだった道に、いつの間にか人が増えている。


定期便が大きく揺れ、進路を街道へと変える。

セリカは背もたれに身を預け、満足そうに息をついた。


「なんかさ……」


「?」


「悪くないね。

 新しい街、新しい仕事、新しい仲間」


ロゼッタは、窓の外を流れる景色を見つめながら、静かに頷いた。


「……はい。

 とても、楽しみです」


その言葉に、セリカは笑い、ラベートは小さく目を細めた。

定期便は、確かな音を立てながら、三人をハンターギルドの街へと運んでいった。




定期便が街道の中ほどに差しかかった頃だった。

車体の床下から、いつもとは違う低い振動が伝わってきて、次の瞬間、運転席側から短く鋭い警笛が鳴り響いた。


「――敵襲!」


護衛兵の怒号とほぼ同時に、後方を走る護衛車両の旋回砲塔が動き、重たい金属音を引きずるようにして機関銃が火を噴いた。


ダダダダダダッ――!!


乾いた連射音が空気を引き裂き、車体の側面をかすめる振動がロゼッタの腹に響く。

窓の外では、砂塵を巻き上げながら、歪なシルエットがいくつも迫ってきていた。


「……機械系だな」


ラベートが静かに言う。

その声には、驚きも焦りもない。


セリカが立ち上がり、窓から身を乗り出す。


「数、結構いるね!

 護衛だけじゃ削り切れないかも!」


機関銃の弾が装甲を弾くたび、火花が散る。

だが、旧文明由来の機械モンスターは、被弾をものともせず前進してくる。脚部の駆動音が、ぎぎぎ、と不快な金属音を立てていた。


その時、ラベートがゆっくりと荷物を開いた。


「ロゼッタ、下がっていろ」


「え……?」


次の瞬間、彼の手に収まったのは、見慣れない工具だった。

一見すれば、建築用の ”釘打ち機”――だが、銃身は延長され、内部構造も明らかに改造されている。


「……それ、武器なんですか?」


「工具だが、今は」


ラベートは短く答え、照準をつけた。


キィン――

甲高い発射音とともに、鋼鉄の釘が弾丸のように射出される。


ヒュン――ッ

ガンッ!!


機械モンスターの胸部、装甲の継ぎ目に正確に突き刺さった。

次の瞬間、内部から火花が噴き、動きが一瞬止まる。


「……急所?」


ロゼッタが息を呑む。


「駆動核の固定部だ。

 装甲は硬いが、構造は素直だ」


そう言いながら、ラベートは二発、三発と迷いなく撃ち込む。

釘は叩き込まれるように深く食い込み、内部機構を破壊していく。


ギィ――……

機械モンスターは、前のめりに倒れ、完全に沈黙した。


「……えげつない精度だね、兄貴」


セリカが感心とも呆れともつかない声を出す。


だが、まだ終わりではなかった。

別の個体が、定期便の側面へ跳躍し、爪を立ててよじ登ろうとする。


ガリガリガリッ――!!


車体が大きく揺れ、乗客の悲鳴が上がる。


その瞬間、ラベートは釘打ち機を荷物に戻し、腰に下げていた工具袋から、先端の尖った短柄ハンマーを引き抜いた。


「……まさか、それで?」


ロゼッタの言葉を待たず、ラベートは窓枠に足をかけ、外へ躍り出る。


風を切る音。

次の瞬間、彼の身体は機械モンスターの頭上にあった。


「――ここだ」


ズンッ!!


鈍く、重い衝撃音。

ハンマーの尖端が、頭部センサーの根元へ正確に叩き込まれる。


バチィッ!!

火花が爆ぜ、機械の全身が痙攣するように震え、そのまま崩れ落ちた。


一撃。

ほとんど瞬殺だった。


ラベートは何事もなかったように車内へ戻り、手袋についた油を軽く払う。


「……これで終わりだ」


実際、その通りだった。

護衛車両の機関銃が残りを掃討し、モンスターの残骸が街道に転がる。


静寂が戻ると同時に、ロゼッタはしばらく言葉を失っていた。

剣闘士として、強者は何人も見てきた。

だが、これは違う。


「……ラベートさん」


「?」


「……ハンターって……

 こんな戦い方も、あるんですね」


ラベートは、少し考えるように視線を落とし、それから静かに答えた。


「あるものを使い、

 必要な力だけを、正しい場所に使う。

 それが生き残るやり方だ」


セリカが肩をすくめる。


「だから言ったでしょ。

 兄貴、技術屋の顔してるけど、

 中身はだいぶ危ないんだって」


ラベートは否定も肯定もせず、ただ淡く笑った。


ロゼッタは、胸の奥で何かが静かに広がっていくのを感じていた。

剣だけじゃない。

力だけでもない。


――選び、使い、判断する。

それもまた、ハンターの強さなのだと。


定期便は再び走り出す。

その揺れの中で、ロゼッタは自分の両手を見つめ、これから先に広がる可能性を、初めて実感していた。



続く

一見インテリ系ですが、実はゴリゴリの武闘派って感じの兄貴ってかっこいいですよね



【作者からのお願い】


もし、「おもしろい」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマーク登録をしていただけるとうれしいです。また「いいね」や感想もお待ちしています!


また、☆で評価していただければ大変うれしいです。


皆様の応援を励みにして頑張りますので、よろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ