第3章ー④外伝 便り
前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。
その情報は、
銃声でも、爆発でもなく、
ごくありふれた通信として届いた。
乾いた風が吹き抜ける荒野。
朽ちた給水塔の影に停められた車のそばで、
αチームはそれぞれ勝手なことをしていた。
モヒカンは、解体途中の機械部品を並べながら、
「これとこれ、まだ使えるな」と独り言を呟いている。
ドグは少し離れた場所で、
意味もなく弾薬を分解しては組み直し、
出来を確かめるように軽く鳴らしていた。
ベルベットは瓦礫に腰掛け、
古い端末をいじりながら、
どこか遠くを眺めている。
そして、
車の陰で地図を広げていた男――
ミスター・ワン。
またの名を、バルカ。
その耳元で、小型端末が短く鳴った。
「……こちら、受信した」
――ハンターギルド。
――街のまとめ役。
――元傭兵、名はグレイヴ。
――新人ハンター・ロゼッタ。
――ベテラン同行、問題なし。
低く、抑えた声。
バルカは片手で受話を押さえ、
暗号化した通信を、しばらく黙って聞き続ける。
相手は多くを語らない。
要点だけを、静かに、正確に。
「……了解」
それだけ言って、通信は切れた。
数秒の沈黙。何となく皆が察していた
ベルベットが、視線だけで問いかける。
「どうだった?」
バルカは、地図を畳みながら答える。
「無事だ」
それ以上は言わない。
だが、
その一言だけで十分だった。
ドグが、ふっと鼻で笑う。
「チッ……あの子なら、そりゃそうだ」
モヒカンは作業の手を止め、
少しだけ空を見上げる。
「……ああ。
生きてりゃ、それでいい」
言葉は短い。
だが、そこに込められたものは重い。
ベルベットが、口元に薄い笑みを浮かべる。
「写真は?」
「ある」
バルカは端末を操作し、
一枚の画像を共有する。
ぎこちなく、少しだけ緊張した顔。
剣を構える姿勢はまだ硬く、
それでも――確かに立っている。
ロゼッタ・スカーレット。
モヒカンが、低く唸る。
「……表情、固ぇな」
「当たり前だ」
ドグが言う。
「最初の一歩なんて、
誰だってそんなもんだ」
ベルベットは、画像を見つめながら呟く。
「でもさ、
闘技場の檻の中にいた頃より、
ずっと“前”を見てる」
バルカは何も言わない。
ただ、写真を一瞬だけ長く見つめ、
端末を閉じた。
「……託した判断は、間違っていなかった」
それは、
自分に言い聞かせるような声だった。
モヒカンが、工具を片付けながら言う。
「これで、あの子は“戦う場所”を選べる」
ドグが、弾倉を差し込みながら続ける。
「誰かの見世物じゃねえ。
誰かの命令でもねえ」
ベルベットは立ち上がり、
砂埃を払う。
「……それで十分だろ」
しばらくの沈黙のあと、
モヒカンがぽつりと付け加えた。
「もし、また道が交わるなら……」
言い切らずに、口を閉じる。
バルカが、その続きを引き取った。
「その時は、
もう“守る側”じゃない」
視線を前に向ける。
「同じ戦場に立つだけだ」
誰も、異論を挟まなかった。
車のエンジンがかかる。
風が、再び吹き抜ける。
遠く離れた街で、
一人の少女が、
ハンターとしての第一歩を踏み出したことを。
αチームは、
確かに知った。
そして同時に――
自分たちの役目が、
すでに終わっていることも。
それを寂しいとは、思わない。
ただ、
ほんの少しだけ誇らしかった。
「……行くぞ」
バルカの声に、全員が応じる。
不可能を可能にする連中は、
もう次の戦場を見ていた。
だがその背中には、
確かに一人の少女の未来が、
静かに刻まれていた。
そしてその ”便り” はαチームによってある人物へと知らされる
短めの展開となりましたので 外伝とさせて頂きました。
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