第2章ー⑲ ――αチーム、買い物に行く
前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。
「……買い出しだ」
バルカの一言で決まった。
場所は、
帝国支配下の外縁都市にある小さな市場。
露店が並び、
金属部品、乾物、工具、怪しげな薬、
そして――子供向けのおもちゃまで並んでいる。
ロゼッタは、
車から降りた瞬間、立ち止まった。
「……人が、多い」
「普通だ」
ベルベットが軽く言う。
「ここは戦場じゃない」
モヒカンが周囲を警戒しながら、ぼそっと呟く。
「……平和ってやつだ」
ロゼッタは、
ゆっくり歩き出す。
視線が、
あちこちに吸い寄せられていく。
■ 驚き①:値段がついている
ロゼッタが、
パンの露店の前で止まった。
「……これは?」
「パンだ」
ドグが答える。
「……どうして、
ここにある?」
一瞬、全員が固まる。
「……売り物だからだが?」
ロゼッタは、
真剣な顔で続ける。
「……誰の配給?」
「……違う」
ベルベットが、
少し困ったように笑う。
「これはな、
金を払って買う」
「……金?」
「……お前、
知ってるだろ」
モヒカンが言う。
ロゼッタは、
首を横に振った。
「……支給物しか、
知らない」
沈黙。
ドグが、
小さく息を吸う。
「……なるほど」
「この子、
市場を知らねぇ」
■ 驚き②:選んでいい
ベルベットが、
露店の前にしゃがむ。
「ロゼッタ」
「好きなの、
選んでいいぞ」
「……命令?」
「違う」
「自分で決める」
ロゼッタは、
露店を見回す。
パン。
干し肉。
果物。
色の違う包み。
数秒。
数十秒。
「……決められない」
「何でだ?」
モヒカンが聞く。
「……正解が、
分からない」
全員が、
言葉を失う。
バルカが、
静かに言った。
「正解はない」
「食べたいものを、
選べ」
ロゼッタは、
恐る恐る――
赤い果実を指さした。
「……これ」
「リンゴだな」
ドグが金を払う。
ロゼッタは、
受け取ってからも、しばらく見つめていた。
「……許可は?」
「もうある」
ベルベットが笑う。
「俺たちが出した」
ロゼッタは、
小さく齧った。
「……甘い」
声が、
少しだけ弾んだ。
■ 驚き③:子供が遊んでいる
通りの向こうで、
子供たちが走り回っている。
笑い声。
ロゼッタが、
立ち止まる。
「……戦闘訓練では、
ない?」
「ない」
ドグが即答。
「……逃走でも、
ない?」
「ない」
モヒカンが答える。
「……命令違反?」
「違う」
ベルベットが、
優しく言う。
「遊んでるだけだ」
ロゼッタは、
しばらく黙って見ていた。
「……壊されない?」
「壊さねぇよ」
「……怒られない?」
「怒られない」
ロゼッタは、
小さく呟いた。
「……不思議」
■ αチームの反応
市場を一周した後。
ドグが、
低い声で言う。
「……俺たち、
とんでもない子を連れてるな」
モヒカンが、
金のネックレスを指で弾く。
「世界を知らなすぎだ」
ベルベットは、
ロゼッタの頭を軽く撫でる。
「だから教える」
「それが――」
バルカが、
一歩前に出る。
「俺たちの役目だ」
ロゼッタは、
リンゴを抱えたまま、言った。
「……今日は、
変だった」
「でも――」
少し考えてから、
はっきり続ける。
「……嫌いではない」
全員、
思わず笑った。
市場の喧騒の中。
ロゼッタは初めて、
戦いでも任務でもない時間を歩いていた。
世界は、
思っていたより――
ずっと広かった。
第2章ー⑳へ続く
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