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第2章ー⑱ ――αチーム流・健全(?)資金稼ぎ

日常回です。ここまで読んでいただいてありがとうございます。

昼。


帝国支配下の地方都市。

外見だけは整っているが、

通りを歩く人々の顔はどこか硬い。


αチームは、

路地裏のカフェ跡に集まっていた。


「で、金が無い」


ドグが、即断する。


「食料も弾薬も無い」


「次の補給地点まで、

 このままじゃ辿り着けねぇ」


モヒカンが、

ポケットを逆さにする。


……何も出ない。


「見事に空だな」


ベルベットが、

軽く拍手する。


ロゼッタは、

小さく手を挙げた。


「……働く?」


全員が、

同時に首を振る。


「それは最終手段だ」


バルカが、低く言う。


「もっと、

 我々らしい方法がある」


ベルベットが、

ニヤリと笑った。


「一芝居、打とうか」


場所は帝国支配下の小さな補給都市。

軍需物資の中継地で、金は動くが警戒は緩い、αチームにとっては「財布が歩いている」ような場所だった。


「さて諸君」

ベルベットが、安宿の薄汚れたテーブルに地図を広げながら言う。

「我々の所持金は、食費を除けば実質ゼロ。だが安心してほしい、帝国は今日も間抜けだ」


「褒めてねぇぞそれ」

ドグが椅子に逆向きに座り、腕を組む。


モヒカンは金のネックレスを指で鳴らしながらニヤついた。

「で? 今回はどの“間抜け”を泣かせる?」


バルカは静かに言う。

「泣かせない。笑わせて、金だけ置いていってもらう」


ロゼッタは少し不安そうに尋ねる。

「……戦わない?」


「戦うより、もっと悪いことをする」

ベルベットがウインクする。

「騙す」


作戦は単純だった。

帝国兵に「極秘任務」を信じ込ませ、護送費と“協力金”を巻き上げる。

もちろん書類は全部偽物、肩書きも全部嘘、だが――

雰囲気だけは本物。


数時間後。


補給都市の外れ、帝国兵詰所。


そこへ現れたのは、妙に威圧感のある一団だった。


先頭に立つのはバルカ。

黒い外套、冷たい目、無駄のない歩き方。

「帝国中央技術局・特別監査官だ」


その後ろでベルベットが、やたら偉そうな書類束を抱え、

「本件は機密指定だ。口外は即時処分対象になる」

と、意味もなく難しい言葉を連ねる。


モヒカンは工具箱を担ぎ、

「遅れるなよ、これ以上“壊れたまま”だと責任取らされるのはお前らだ」

と脅し、

ドグは無言で大型ケースを地面に置き、わざと少しだけ中身の金属音を鳴らす。


帝国兵たちは、もう完全に飲まれていた。


「……そ、その、監査官殿」

隊長らしき男が、姿勢を正す。

「我々に出来る事は?」


バルカは一瞬だけ、視線を細めた。

「協力だ」


「資金と、人手と、口止めだ」


一拍置いて、

「あと、何も見なかったという記憶」


沈黙。


完全にそれっぽい。


ベルベットが畳みかける。

「これは帝国の未来に関わる。だが――失敗すれば、記録から消えるのは我々じゃない」


兵士の額に汗が滲む。


「い、いくら必要で?」


モヒカンが即答。

「全部」


「……全部?」


「お前らが今持ってる分、全部だ」


一瞬、空気が凍る。


だが――

ドグが一歩前に出て、低い声で言った。

「嫌ならいい。代わりに“事故”が起きるだけだ」


兵士たちの想像力が、勝手に最悪の結論へ飛ぶ。


「わ、分かりました!」


数分後。


資金箱が、αチームの前に並んでいた。


ベルベットが満足そうに頷く。

「協力に感謝する。帝国は君たちを――多分、覚えていない」


バルカは踵を返す。

「今日の事は忘れろ。それが、お前たちの最善だ」


一団が立ち去った後。


角を曲がった瞬間――


「っしゃああああ!!」

モヒカンがガッツポーズ。

「丸儲けだ!」


「声でけぇ!」

ドグが即座に口を塞ぐ。


ベルベットは笑いながら金を確認する。

「いやぁ、今日の帝国兵、素直で助かったな」


ロゼッタは、目を丸くしていた。

「……今の、全部嘘?」


「全部」

全員、声を揃える。


「……すごい」


ロゼッタの率直な一言に、

αチームが一瞬、誇らしげな顔になる。


バルカだけが静かに言った。

「覚えておけ」


「力を使わずに金を得るのが、

 一番“綺麗な勝利”だ」


ロゼッタは、少し考えてから頷いた。

「……帝国は、ちょろい」


全員が吹き出した。


その日、αチームは久々にまともな食事にありついた。

帝国兵の財布の上で。


ロゼッタは、

小さく笑った。


αチーム流・資金稼ぎ。


帝国は、

今日も少しだけ、

損をした。


そして――

誰も、泣いていない。


第2章ー⑲へ続く

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