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第2章ー⑰ ――αチーム女の子がわからない

重い話が続きましたので、しばらく日常回です。


朝。


廃ビルの一室。

陽の光が、割れた窓から斜めに差し込んでいる。


ロゼッタは、

毛布に包まって、静かに眠っていた。


……はずだった。


「起きてるか?」


「いや、まだだろ」


「いやいや、子供ってのはな――」


「だから俺、子供の扱いは知らねぇって言ってんだ!」


低い声。

ひそひそ声のつもりだが、

全然ひそひそになっていない。


ロゼッタは、

ゆっくり目を開けた。


部屋の隅。


モヒカンとドグが、

腕を組んで向かい合っている。


「起こし方が悪いんだ」


ドグが言う。


「戦場じゃ、

 水ぶっかけりゃ起きる」


「ここは戦場じゃねぇ!」


モヒカンが低く怒鳴る。


「女の子だぞ!」


「……女の子って、

 どう起こすんだ?」


二人が、固まる。


沈黙。


数秒後――


「……ベルベット!」


モヒカンが叫ぶ。


廊下から、

ベルベットがひょいと顔を出す。


「ん?」


「女の子の起こし方、

 分かるか?」


ベルベットは、

一瞬考えてから、にやっと笑う。


「優しく声をかける」


「以上」


「……簡単すぎないか?」


「出来ない奴らには、

 それが一番難しいんだよ」


ロゼッタは、

思わずくすっと笑った。


その音に、

全員が振り返る。


「あ」


モヒカンが、気まずそうに頭を掻く。


「……起きてたか」


ロゼッタは、

毛布から顔だけ出して言う。


「……おはよう」


声は、少し眠そう。


ドグが、妙にぎこちなく手を振る。


「お、おう……

 よく眠れたか?」


沈黙。


全員、

どう返せばいいか分からない顔。


そこへ――


「朝飯だ」


バルカが、

紙袋を持って現れた。


全員の救世主。


「パンと缶詰」


「砂糖は無い」


「文句は受け付けない」


ロゼッタは、

目を輝かせる。


「……パン」


「喜ぶところ、

 そこなのか……」


ドグが呆然と呟く。


ベルベットは、

ロゼッタの前に腰を下ろす。


「どうだ、寝心地」


「……少し、硬い」


「だろうな」


「でも――」


ロゼッタは、

小さく付け足す。


「……怖くなかった」


一瞬、空気が止まる。


モヒカンが、

そっぽを向いて言う。


「そりゃそうだ」


「この中で、

 一番怖ぇのはドグだからな」


「はぁ!?」


「顔が怖ぇんだよ!」


言い合いが始まる。


ベルベットは、

笑いながらロゼッタを見る。


「な?」


「騒がしいだろ」


ロゼッタは、

はっきり言った。


「……嫌いではない」


その一言で、

全員が黙る。


数秒後。


「……よし」


ドグが、咳払いする。


「今日の目標」


「ロゼッタを、

 普通に過ごさせる」


モヒカンが、真顔で頷く。


「難易度、高ぇな」


「俺たち全員、

 独身だぞ」


ベルベットが、肩をすくめる。


「俺は慣れてる」


「バルカもな」


全員が、

バルカを見る。


「……仕事だ」


即答。


ロゼッタは、

思わず笑った。


声を出して。


その笑顔に、

αチーム全員が、

一瞬だけ言葉を失う。


「……え?」


「今、笑った?」


モヒカンが固まる。


「……笑うんだな」


ドグが、ぽつり。


ベルベットは、

小さく微笑んだ。


「そりゃそうだ」


「この子は――」


「ただの兵器じゃない」


ロゼッタは、

パンをかじりながら言う。


「……変な人たち」


「褒め言葉だ」


全員、口を揃える。


廃ビルの朝。


銃声も、

命令も、

皇帝の影も無い。


ほんの短い時間。


それでも確かに、

ロゼッタは――

“普通の女の子”として、そこにいた。


第2章ー⑰へ続く

読んでいただいてありがとうございます。ご意見ご感想お待ちしております。

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