第2章ー⑭ 破壊と再生
前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。
帝国検問所を抜けて、しばらく。
街道は崩れ、
建物は骨組みだけを残した廃墟地帯に入っていた。
その時だった。
――ガコン。
車体が大きく揺れ、
次の瞬間、エンジンが嫌な音を立てて沈黙する。
「……止まったな」
バルカが、静かに言う。
モヒカンは舌打ちした。
「くそ、燃料ラインか電装だな」
ドグは即座に外へ出る。
「この辺り、帝国の巡回ルートだ」
「長居は出来ねぇ」
車両は、
半壊した高層ビル群の影に、
かろうじて身を隠していた。
ロゼッタは、
車内から外を見つめる。
瓦礫。
折れた鉄骨。
崩れた看板。
――闘技場とは違う。
だが、どこか懐かしい匂い。
「ロゼッタ」
モヒカンが声をかける。
「来い」
ロゼッタは、迷わず頷き、
外に出た。
「見ろ」
モヒカンは、
地面に散らばる廃材を指差す。
「ここは宝の山だ」
ロゼッタは目を瞬かせる。
「……全部、壊れている」
「ああ」
モヒカンはニンマリ笑う。
「だから使える」
彼は、崩れたドローンの残骸を拾い上げる。
「回路は死んでる」
「だが、コンデンサは生きてる」
「これに、これを繋ぐ」
手際よく、
ワイヤーを引き抜き、
金属片を噛ませる。
「一発限りだが、
電撃トラップになる」
ロゼッタは、
じっと見つめていた。
「……壊す前提」
ドグが、横から笑う。
「お、いいとこ気づいたな」
ドグは、
鉄パイプとスプリングを拾い上げる。
「武器はな、
壊れる前に役目を果たせば勝ちだ」
彼は、
パイプの中にスプリングを押し込み、
即席の射出装置を作る。
「精度? 知らねぇ」
「でも――」
地面に向けて発射。
――バン!
瓦礫が弾け飛ぶ。
「近距離なら、
十分だ」
ロゼッタの胸が、少し熱くなる。
「……闘技場の剣と、
同じ」
モヒカンが、満足そうに頷く。
「そうだ」
「形が違うだけで、
本質は同じ」
「生き残るために、手を動かす」
遠くで、
エンジン音が聞こえた。
巡回だ。
バルカが低く告げる。
「時間が無い」
ロゼッタは、
周囲を見渡す。
壊れた看板。
ガラス片。
ケーブル。
頭の中で、
教えが繋がる。
モヒカンの言葉。
ドグの思想。
ロゼッタは、
はっきり言った。
「……作れる」
二人が、同時に彼女を見る。
「看板のフレーム」
「ガラスを詰めて、
ワイヤーで引く」
「車に近づいたら、
崩れる」
ドグが、歯を見せて笑った。
「いいねぇ」
モヒカンは、
ロゼッタの肩を軽く叩く。
「やれ」
三人で、
一気に作業する。
ロゼッタの義手が、
廃材を掴む。
ぎこちないが、
確実だ。
数分後――
即席の罠が完成する。
直後、
帝国兵の姿が、瓦礫の向こうに見えた。
「……よし」
ドグが囁く。
「これで、時間は稼げる」
ロゼッタは、
自分の手を見る。
剣は無い。
だが――
「……戦える」
モヒカンが、低く笑った。
「違うな」
「生き延びられる、だ」
罠が作動し、
金属音と怒号が響く。
その隙に、
ドグがエンジンを再起動させる。
――ゴウン。
車が、息を吹き返した。
全員が、乗り込む。
走り出す車内で、
ロゼッタは、静かに言った。
「……ありがとう」
モヒカンは前を見たまま、答える。
「礼はいらねぇ」
ドグも続く。
「その代わり――」
「生きて、使え」
ロゼッタは、
力強く頷いた。
廃墟の影を抜け、
車は再び走り出す。
その中で、
少女は確かに理解していた。
――武器は、
――そのへんに転がっている。
そして、
自分の中にも。
第2章ー⑮へ続く
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