第2章ー⑨ 生きる術 ――モヒカン編
前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。
ここからは剣闘士しか知らないロゼッタへの
各自の ”生きる術” を書いていきます
昼。
移動を再開してしばらくした頃、
αチームは再び停車した。
理由は単純だ。
「燃料と水、
この先で必ず足りなくなる」
モヒカンが、周囲を見回しながら言う。
そこは、かつて前線補給拠点だった場所。
今は崩れ、焼け、
廃材の山だけが残っている。
ロゼッタは、彼の後ろを少し離れて歩いていた。
右手の義手は、まだぎこちない。
だが、歩くたび、
彼女はそれを確かめるように動かしている。
「何をするの?」
ロゼッタが尋ねる。
モヒカンは、振り返らずに答えた。
「生きる準備だ」
瓦礫の中へ入る。
崩れた壁。
潰れた車両。
曲がった鉄骨。
「覚えとけ」
モヒカンは、
壊れたコンテナの前で立ち止まった。
「廃材ってのはな、
役に立たなくなった物じゃねぇ」
「使い方を、
忘れられただけだ」
ロゼッタは、しゃがみ込み、
辺りを見渡す。
「……これは?」
錆びた金属板。
「盾になる」
「……これは?」
切れた配線。
「罠にも、
結束にも使える」
モヒカンは、一つ一つ拾い上げ、
見せるように置いていく。
「重要なのはな」
「形じゃねぇ」
「 “何に変えられるか” を考えることだ」
彼は、鉄骨の破片を拾い、
地面に線を引いた。
「ここを通るとする」
「敵が来る」
「お前は一人」
ロゼッタは、息を呑む。
「……逃げる?」
「それも正解だ」
モヒカンは頷く。
「だが、
逃げ道を作るには――」
配線を鉄骨に結び、
金属板を吊るす。
「音を作る」
軽く触れる。
――カラン。
「敵より先に、
敵を知れ」
ロゼッタは、目を輝かせる。
「……闘技場には、無かった」
「当たり前だ」
モヒカンは鼻で笑う。
「あそこは、
逃げるなって場所だからな」
彼は、次に瓦礫の山を指差す。
「水」
「どうする?」
ロゼッタは考える。
「……探すの?」
「違う」
モヒカンは、地面のくぼみを指す。
「集める」
壊れたシートを広げ、
角度をつけて設置する。
「夜露」
「雨」
「朝露」
「自然は、
意外とくれる」
ロゼッタは、義手で
シートを押さえる。
「……出来る」
「出来るじゃねぇ」
モヒカンは、
ロゼッタの手を見て言う。
「やれ」
少し乱暴だが、
その声には信頼があった。
ロゼッタは、黙って作業する。
指が滑る。
義手がきしむ。
それでも――
彼女は、諦めない。
「……完成」
小さな集水装置。
モヒカンは、それを見て頷いた。
「上出来だ」
その一言で、
ロゼッタの胸が、少し膨らむ。
「……モヒカン」
「何だ」
「……戦う以外も、
私、生きられる?」
モヒカンは、しばらく黙っていた。
そして、瓦礫を一つ拾い上げ、
彼女の手に渡す。
「これを見ろ」
「何に見える」
ロゼッタは考える。
「……ただの、
壊れた金属」
モヒカンは、にやりと笑う。
「そう見える内は、
まだ半人前だ」
「だがな」
彼女の義手を、軽く叩く。
「お前は、
もう“変えられる側”じゃねぇ」
「変える側だ」
ロゼッタは、しばらく黙って――
そして、はっきり言った。
「……私」
「生き延びる」
その言葉は、
誓いではなく、選択だった。
モヒカンは、背を向ける。
「なら、次は――」
「火の起こし方だ」
廃材の山に、
小さな未来が生まれた瞬間だった。
第2章ー⑩へ続く
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