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第2章ー⑦ ――仕事か、守るべき存在か

前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。

少し長めですがよろしくお願いします。

夜。


廃都市の奥、崩れた高架の下に車両を隠し、

簡易的な遮蔽と警戒線を張る。


火は焚かない。

音も最小限。


ロゼッタは、車両の後部で毛布に包まれ、

ベルベットのすぐ隣で眠っていた。


浅い呼吸。

それでも、確かに“休めている”。


その姿を背に、

αチームは少し離れた場所に集まっていた。


「……で」


ベルベットが最初に口を開く。


「この先、どうする?」


モヒカンは即答だった。


「決まってる」


「連れてく」


「守る」


短く、迷いがない。


「それは“気持ち”の話だ」


バルカが、静かに言う。


「我々は依頼を受けて動いている」


「目的は奪還」


「帝国から引き離し、

 生存を確認することまでだ」


ドクが、端末を操作しながら口を挟む。


「でもさ」


「依頼主――ホーゲルは、

 この子を“物”として扱ってない」


「それに……」


一瞬、言葉を選ぶ。


「正直に言うと、

 ここまでの“反応”は想定外だよ」


「エネルギー波形、

 生体適応、精神負荷耐性」


「どれも――

 軍用実験体の域だ」


モヒカンが、ギロリと睨む。


「だから何だ」


「だから“危険”なんだよ」


ドクは珍しく真剣だった。


「帝国が欲しがる理由が、

 はっきりしすぎてる」


「このまま連れて動けば、

 追撃は激化する」


「俺たちだけじゃ、

 抱えきれない可能性もある」


ベルベットが、腕を組む。


「つまり?」


「一度、引き渡す選択肢もある、って?」


ドクは答えない。

否定もしない。


沈黙。


その空気を、

モヒカンが拳で叩き割る。


「ふざけんな」


「ガキだぞ」


「怖がって、

 それでも立とうとしてた」


「それを――

 また檻に戻せってのか」


「俺はやらねぇ」


「依頼だろうが、

 筋が通らねぇ」


ベルベットは、ロゼッタの方を一度だけ振り返る。


「……あの子」


「誰かに命令されて戦った目をしてる」


「年頃の女の子の目じゃない」


「俺は、

 女の子がああいう目をするのは二度と見たくない」


バルカは、しばらく黙っていた。


戦術家の目。

冷静で、距離のある視線。


だが、その奥で、

何かが揺れている。


「……αチームは」


ゆっくりと口を開く。


「筋さえ通れば、

 依頼を受ける」


「それは、

 我々の原則だ」


モヒカンが、食い気味に言う。


「なら決まりだ」


「このガキを守る」


「それが筋だ」


バルカは、少しだけ笑った。


苦い笑み。


「……問題は」


「“その筋”を、

 どこまで貫けるかだ」


「この子は、

 ただの保護対象じゃない」


「世界を動かす“火種”になり得る」


「我々が関われば――

 否応なく、戦争に踏み込む」


ベルベットは、静かに言った。


「もう、踏み込んでる」


「バルカも気づいてるでしょ?」


「俺たち、

 もう後戻りできないって」


ドクが、ふっと笑う。


「だね」


「だってさ」


「この子のそばにいると、

 俺、ワクワクしちゃうんだ」


「最低だって分かってるけど」


「……可能性の塊だよ」


モヒカンが鼻を鳴らす。


「なら話は簡単だ」


「守りながら、

 逃げて、

 ぶっ壊して、

 生き延びる」


「いつも通りだろ?」


バルカは、深く息を吸い――

そして、はっきりと言った。


「……決めた」


全員の視線が集まる。


「αチームは、

 ロゼッタを“任務対象”ではなく――」


一拍。


「仲間として扱う」


その言葉は、重い。

だが、誰も反論しなかった。


「その上で ”任せよう” と思う。本当に信頼できる場所に」


「隠す技術がある」


「守る力がある」


「そして――

 この子を“兵器として見ない”人間がいるところだ」


ドクが、少し驚いたように言う。


「……心当たり、あるんだ」


「一つだけな」


バルカは、短く息を吐く。


「表には出てこない」


「だが、帝国の影からも、

 反乱側の熱狂からも距離を置いている」


「“預かる”ことができる人物だ」


モヒカンが腕を組む。


「信用できんのか」


「できる」


即答だった。


「命を預けたことがある」


その一言で、

場の空気が変わった。


ベルベットは、少し考え――

そして、微笑む。


「なるほど」


「逃げるんじゃなくて、

 渡しに行くのね」


「守るために」


ドクが軽く肩をすくめる。


「賛成」


「正直、この子を連れて

 ド派手に逃げ回るの、

 俺の胃がもたない」


「それに……」


一瞬、ロゼッタを見る。


「ちゃんと眠れる場所が、

 必要だ」


モヒカンは、黙っていたが――

やがて、深く頷いた。


「……わかった」


「だが条件がある」


「運ぶのは、

 俺たち自身だ」


「誰かに引き渡すまでは、

 一歩も手を離さねぇ」


バルカは、その言葉を受け止めるように目を閉じる。


「それでいい」


「それが――

 αチームのやり方だ」



その時。


「……?」


背後で、小さな声。


ロゼッタが、目を覚ましていた。


不安そうに、

それでも、必死に聞いていた。


「……ケンカ?」


ベルベットが、すぐに駆け寄る。


「違うよ」


微笑んで、

毛布を掛け直す。


「大人の相談」


ロゼッタは、少し考えてから言った。


「……ねえ」


小さな声。


ロゼッタが、目を開けていた。


皆が、すぐに振り向く。


「……どこ、行くの?」


ベルベットが、優しく答える。


「安全なところ」


「君が、

 ゆっくり寝られる場所」


ロゼッタは、少し不安そうに視線を揺らす。


「……置いて、いかない?」


モヒカンが、即座に言った。


「行かねぇ」


「運ぶだけだ」


「最後までな」


ロゼッタは、しばらく考えて――

小さく、頷いた。


「……ついて、いく」


その言葉に、

誰もが少しだけ胸を緩めた。


バルカは、静かに締めくくる。


「決まりだ」


「αチームは、

 ロゼッタを

 信頼できる場所まで運ぶ」


「それまでは――

 我々が盾だ」


夜の廃都市に、

再びエンジン音が小さく響く。


これは逃亡ではない。

撤退でもない。


護送だ。


そして誰もが理解していた。


この旅路が、

世界のどこかを、

確実に変えてしまうことを。


それでも――

αチームは、進む。


自分たち筋を通す為に。


第2章ー⑧へ続く

元の番組でも、なんかかんかで義理堅いですよね。

読んでいただいてありがとうございます。ご意見ご感想お待ちしております。

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