第2章ー④ 混乱の隙間 ――逃げた少女、閉じた檻
前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。
輸送機の墜落が生んだ衝撃は、駐屯地全体を揺さぶっていた。
爆炎。
二次爆発。
帝国兵の怒号と混乱。
誰もが上を見上げ、燃える空を追っている。
――その瞬間だった。
重装甲トレーラーの内部で、ロゼッタが動いた。
拘束はすでに解かれている。
だが身体は重く、感覚は鈍い。
それでも、胸の奥に残った何かが、はっきりと告げていた。
――ここにいてはいけない。
扉の隙間。
外の光。
炎と影が揺れる世界。
ロゼッタは、ふらつきながら外へ転がり出た。
「……っ」
地面に手をつき、息を吸う。
熱。
煙。
そして――自由。
その姿を、最初に見つけたのはベルベットだった。
「……いた」
帝国兵の群れの向こう。
小さな影。
「バルカ、目標が動いた」
『確認した』
即座に返る声。
「全員、彼女を――」
言葉は途中で途切れた。
モヒカンが、もう走っていた。
「おい!!
無茶すんな!!」
瓦礫を蹴散らし、ロゼッタの前に滑り込む。
その巨体が盾のように立つ。
「大丈夫か嬢ちゃん?」
もう――」
「――あそこだ!!」
帝国兵の叫び。
混乱の中で、逃げる存在は逆に目立つ。
「チッ……!」
ベルベットが舌打ちし、即座に発砲。
牽制。
だが、数が多すぎる。
『来るよ!
四方から!』
「退け!」
バルカの声が飛ぶ。
「このままでは包囲される!
近くに――」
『倉庫だ!』
ドクが割り込む。
『構造確認済み!
外壁はまだ生きてる!』
「決まりだ」
モヒカンはロゼッタを抱え上げる。
「しっかり掴まれ!」
銃声が背後で弾ける。
火花。
壁が抉れる。
αチームは一斉に駆けた。
1つだけ無傷で残っていた、古い倉庫。
重い扉を蹴破り、中へ滑り込む。
「閉めろ!!」
ベルベットが叫び、ドクが即席ロックを作動させる。
――次の瞬間。
ドンッ!!
外から、衝撃。
帝国兵が到着した。
倉庫の中は、静まり返った。
埃の匂い。
薄暗い光。
閉じた扉。
完全な包囲。
モヒカンは歯を噛みしめる。
「……クソ。
保護したつもりが、
全員まとめて檻入りかよ」
ベルベットが肩をすくめる。
「派手にやりすぎたかな」
「最高だったけどね」
ドクが、妙に楽しそうに言った。
その時だった。
「……ふふ」
ドクの足が止まる。
倉庫の奥を見つめ、目を輝かせる。
「……いいね……
すごく、いい……」
彼は、棚や床に散乱した物を指でなぞる。
工具。
廃パーツ。
分解途中の機械。
「宝箱だよ、ここ……」
モヒカンが眉をひそめる。
「おい……
こんな時に何言ってやがる」
だがバルカは、周囲を見渡していた。
そして――視線が止まる。
倉庫の中央。
埃を被り、シートが破れ、
動かない旧式の軍用車両が鎮座していた。
かつての戦争で使われ、
役目を終え、放置された鉄の塊。
「……」
バルカは、しばらく黙ってそれを見つめた。
そして、静かに言う。
「……覚えているか、モヒカン」
「?」
「あの砂漠の戦線だ。
弾も燃料も尽きかけて、
それでも――」
モヒカンの目が、ゆっくりと細くなる。
「ああ……」
彼は、車両に近づき、手で叩いた。
鈍い音。
だが、芯は生きている。
「イケるぜ、これは」
口元が吊り上がる。
ニンマリと、獣のような笑み。
「昔と同じだ。
動かない?
だったら動かせばいい」
ドクが、興奮したように笑う。
「ふふ……
ここ、最高だね……
閉じ込められたつもりでいたけど……」
ベルベットが軽く息を吐く。
「どうやら、
檻に入ったのは――
帝国の方みたいだ」
倉庫の外では、拘束部隊が配置につく。
中では、αチームが準備を始めていた。
ロゼッタは、その様子を見つめていた。
怖い。
けれど――
なぜか、胸の奥が、ほんの少しだけ温かかった。
暗闇の中で、再び何かが動き出す。
次に扉が開く時、
それは“捕縛”ではない。
突破だ。
バルカが嬉しそうに叫んだ
「みんな始めよう、ショータイムだ」
第2章ー⑤へ続く
あの番組の「お約束」です。
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