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第2章ー③ 予期せぬ敵 怒りのモヒカン

前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。


作戦は順調に進んでいる ”はずだった”

だが最初に異変を告げたのは、音だった。


低く、重く、腹の底を削るような振動。

爆発でも、機械化兵の足音でもない。


空だ。


「……来やがったな」


バルカの声が、わずかに硬くなる。


次の瞬間、駐屯地の闇を切り裂くように、

帝国軍用輸送機が姿を現した。


低空侵入。

腹部に刻まれた帝国の紋章。

側面ハッチが開き、黒装甲の空挺兵が準備に入る。


『……冗談だろ』


ベルベットの声が一拍遅れる。


『飛行機って……

 ハハ……マジかよ?』


一瞬の沈黙。


それを破壊したのは――


「ふざっっっっけんなぁぁぁぁぁ!!!!!」


モヒカンの咆哮だった。


通信が割れ、ノイズが走る。

怒りがそのまま音圧になって叩きつけられる。


駐屯地の瓦礫の上で、モヒカンは空を睨みつける。

金のネックレスが、怒りに震えて鳴った。


輸送機がさらに高度を下げる。

機関銃が旋回し、照準が地上をなぞる。


完全に――制空権。


『空挺部隊、降下準備』

ベルベットが冷静に報告する。

『このままだと、押し潰される』


「……チッ」


モヒカンは歯を食いしばる。


空。

どうしようもない。

届かない。

制御できない。


「……だからってよ」


彼は、足元の瓦礫に視線を落とした。


崩れかけた支柱。

建物を支える、コンクリートと鋼鉄の塊。


「――諦める理由には、ならねぇ」


通信を開く。


「おいドク!!

 あの柱、内部どうなってる!!」


『……ふふ』


返ってきた声は、嬉しそうだった。


『中空構造。

 老朽化。

 爆薬を詰めるには――

 最高の的だよ』


「だろうな!!」


モヒカンは走り出す。


輸送機の影。

銃弾が地面を穿つ中、柱の根元へ滑り込む。


「やってやるぜ!!」


怒鳴りながら、即席爆薬を組み上げる。

量は測らない。

計算も荒い。


だが――


「柱をぶち飛ばして、飛行機アイツをやってやる!!」


『正気か!?』

ベルベットが叫ぶ。


「正気でやってたら、

 俺はこんなチームにいねぇ!!」


起爆装置を噛み締める。


輸送機が真上に来る。

ロープが垂れ、空挺兵が降下を始める。


「今だぁぁぁ!!」


起爆。


轟音。


柱が、根元から爆散した。


数トンのコンクリートと鋼鉄が、

爆風に押し上げられ、そのまま空へ跳ね上がる。


「――なっ!?」


輸送機の腹部に、直撃。


鈍い金属音。

機体が大きく傾き、エンジンが悲鳴を上げる。


『はぁ?当たった?

 嘘だろ?!!』


ベルベットの声が裏返る。


輸送機は姿勢を失い、

制御不能のまま駐屯地外縁へ突っ込んでいく。


なんとか不時着したが、機体が地面を削る音が夜を裂いた。


「はっ……はは……」


モヒカンは膝をつき、荒く息を吐く。


「……やっぱり、

 飛行機はクソだ……」


その時。


『……なあモヒカン』


ドクの声が、妙に感心した調子で響く。


『正直に言うとさ』


一拍。


『俺、あんたよりイカれてると思ってた』


『でも今のは……

 あんたの勝ちだ』


「うるせぇ!!」


モヒカンは笑いながら怒鳴る。


「次言ったら、

 お前を飛ばしてやるから覚悟しとけ!!」


その瞬間。


トレーラー内部で、光が弾けた。


ロゼッタの瞳が、はっきりと開く。


覚醒――

まだ不完全。

だが確かに、目覚めの兆し。


空は落ちた。

だが戦いは、ここからが本番だった。



後世 この戦いの報告書では、

輸送機は敵の攻撃により不時着と、簡素に書かれていた。

本当の理由は書かれなかった。いや書けなかった。

あまりにも荒唐無稽の為、信じてもらえなかったためだ。


第2章ー④へ続く

作戦がうまくいかないのはいつもことです。



読んでいただいてありがとうございます。ご意見ご感想お待ちしております。

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