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第1章ー最終話 運命の歯車

第1章最終話になります。ここまで読んでいただいてありがとうございます。

ホーゲルは、迷わなかった。


黒鎧の皇帝が一歩踏み出すよりも早く、彼はロゼッタの前に身を投げ出した。

盾にもならない細い身体。

それでも、その背中は確かに“守る”と語っていた。


「触るんじゃねぇ……!」


次の瞬間だった。


空気が爆ぜた。


皇帝の拳は、ただの打撃ではなかった。

圧縮された闘争本能と“源核”の余波がまとわりついたそれは、殴打というより衝突だった。


鈍い音が響き、ホーゲルの身体は宙を舞う。

壁だった瓦礫を二つ、三つと砕きながら吹き飛ばされ、地面を何度も転がった。


肺の中の空気が一気に吐き出され、視界が白く染まる。



皇帝は一瞥しただけで、興味を失ったように視線を戻す。


その衝撃で、彼の手から離れたエネルギーパックが宙を回転する。

偶然。

本当に、ただの偶然だった。


跳ね返った金属片に弾かれ、ロゼッタの開いたままの外套の隙間へ――

吸い込まれるように、それは滑り込んだ。


ロゼッタ自身は気づかない。

誰も、その意味を理解していない。


ただ、運命だけが、静かに歯車を噛み合わせた。

”まだ終わらない” と。


誰も気づかなかった。

皇帝も、親衛隊も。

次の瞬間、地響きと共に装甲車両の音が廃都市に流れ込む。

帝国正規の拘束部隊だ。


「対象確認。コード:ロゼッタ。生存。捕獲フェーズに移行」


対スパルタカス残存体用の拘束フレーム。

神経遮断用の杭。

機械化兵士たちは、もはや“人を捕らえる”動作に感情を伴っていない。


ロゼッタの四肢が固定され、首元に抑制装置が嵌められる。

ロゼッタの視界は揺れていた。

意識は薄れかけている。


(……ホーゲル……)


視界の端で、倒れた彼の姿が揺れた。

声は届かない。身体も動かない。


ロゼッタは抵抗できないまま、引きずられるようにその場を離れていく。

瓦礫の街が遠ざかり、灰色の空が細くなっていった。


ロゼッタは、そのまま装甲車両へと運び込まれた。


だが――

胸の奥、冷え切ったはずの場所で、ほんの微かな“鼓動”が生まれた。




「廃都市より撤退。実験体を輸送する」




残されたのは、倒れ伏すホーゲルと、皇帝。


その時、皇帝の背後から、静かに近づく白衣の影があった。


顔はフードに隠れ、性別も年齢も判別できない。

だが、その佇まいには、明らかに“研究者”の匂いがあった。


「……皇帝陛下」


声は淡々としている。


「……傷が、ついていますね」


声音は淡々としているが、そこにはわずかな驚きがあった。


皇帝は気にも留めず、ゆっくりと拳を握りしめる。


「問題ない。

 あれは“覚醒体”を引き出すための過程にすぎん」


白衣の人物は一拍置いてから、問いかけた。


「なぜ、あのホーゲルを殺さなかったのですか?」


皇帝は答えない。

ただ、廃都市の彼方へ消えていく輸送部隊を見つめている。


白衣の“何か”は続けた。


「彼は明らかに不確定要素です。

 排除すべきでは?」


皇帝は、ようやく口を開いた。


「――あれは“探す者”だ」


低く、重い声。


「スパルタカスの意識は五つに分かれ、世界へ散った。

 だが、あの男は必ずそれらを探し出す」


白衣の影が、わずかに首を傾げる。


「それを、なぜ許すのです?」


「……だからこそだ」


低く、重い声。


「彼は必ず探す。

 あの男は“生き残る側”の人間だ。

 五つに分かれたスパルタカスを、必ず見つけ出すだろう」


白衣の人物が静かに問い返す。


「それを、放置するのですか?」


「いいや」


皇帝はゆっくりと振り返り、帝国の紋章に手を置いた。


「そこを、我らが“刈り取る”」


「皇帝陛下の御心のままに」


白衣は深く一礼した。


2つの影が廃都市の向こうに消えていった





瓦礫の影で、ホーゲルは血を吐きながらも、指を動かしていた。

壊れかけの通信端末。

画面は割れ、ノイズだらけだ。


震える声で、呟く。


「任務失敗……対象は帝国軍に捕獲……」


通信が、どこかへ繋がる。


「……ミスター・ワンに連絡を」


息を整え、最後に、低く、確かな声で。


「――彼らに、依頼を」


通信はそこで切れ、画面が暗転する。



新たな戦いの歯車が、静かに回り始めていた。


第1章 脱出編 完

第2章へ続く

これにて第1章完結になります。拙い文章ですがここまで読んでいた方、誠にありがとうございました。

第2章からは重苦しい空気を少し変えてみようと思います。

捕まったロゼッタの ”運命” は そしてホーゲルの言った ”依頼” とは



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