第6章ー50 生きていれば、いつか
前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。
翌日。
ダリア、オルレア、リコリスの三人は再びギルド専属の鍛冶屋を訪れていた。
親方が奥から出てくる。
「おう、来たか」
弟子が抱えてきた武器と防具を机に並べる。
ダリアの大剣と防具。
オルレアの槍。
そして昨日渡された盾と大型ハンマー。
親方が腕を組んで言う。
「一通り調整しといた」
顎で示す。
「感想頼むぜ」
ダリアが装備を受け取りながら笑う。
「わかった」
盾を軽く叩く。
「使わせてもらうよ」
オルレアも槍のバランスを確かめる。
「いい感じ」
リコリスもハルバードを軽く振ってみる。
刃が空気を切る音がした。
三人は満足そうに頷く。
親方はそれを見てニヤリとした。
「いい顔してるな」
装備を整えた三人は、そのままギルドへ向かった。
受付を通ったところで職員に声をかけられる。
「ダリアさん、オルレアさん、リコリスさん」
「ギルドマスターがお呼びです」
ダリアが眉を上げる。
「またか」
オルレアが小さく笑う。
「今回は怒られる話じゃないといいけど」
三人はそのままギルドマスターの部屋へ案内された。
扉をノックする。
「入れ」
中へ入ると、ギルドマスターが机の向こうに座っていた。
三人を見ると頷く。
「来たか」
机の上に小さな箱が置かれている。
マスターがそれを開けた。
中には三つのバッジがあった。
「まず」
ゆっくり言う。
「先日の討伐についてだ」
三人を見る。
「三頭型変異獣――ケルベロス」
「本部の審査の結果」
少し間を置く。
「強力個体と認定された」
ダリアが軽く口笛を吹く。
「へぇ」
ギルドマスターは続けた。
「よって」
箱からバッジを取り出す。
「三人にスモールブロンズを授与する」
三人にそれぞれ渡す。
ハンターとしての功績を示す小さな勲章だった。
リコリスは少し驚いた顔をする。
「初依頼でこれですか」
ギルドマスターは少し笑う。
「初依頼でこれは、このギルドで初めてだ」
そして続けた。
「それと」
ダリアとオルレアを見る。
「二人はランクアップだ」
書類をめくる。
「Fランクから――」
「Eランクへ昇格」
ダリアが笑う。
「早かったな」
オルレアも静かに頷く。
「よかった」
ギルドマスターは三人を見渡した。
「今回の戦果は立派だった」
ゆっくり言う。
「今後も頼む」
ダリアが軽く手を振る。
「任せとけ」
少しして、ギルドマスターが話題を変えた。
「さて」
机の書類を叩く。
「もう一つ話がある」
三人を見る。
「お前たちが参加した、新人ハンター教育合宿だが」
オルレアが少し身を乗り出す。
ギルドマスターは続けた。
「総本部より、正式に許可が出た」
ダリアが笑う。
「おお」
「やったな」
マスターが頷く。
「さらに」
「ここのノウハウを」
「他支部へ共有することになった」
三人が顔を見合わせる。
ギルドマスターは続ける。
「近々、第二回を行う予定だ」
書類を指で叩く。
「初回に参加した新人達、目に見えて成長している」
少し笑う。
「それを見て、参加希望者が増えた」
指を立てる。
「Fランクの新人だけではない」
「Dランクに届きそうなハンターからも」
「基礎を鍛え直したいと希望が来ている」
ダリアが少し感心する。
「へぇ」
ギルドマスターが言う。
「そこで」
ダリアとオルレアを見る。
「今回は、教官として参加してもらう」
ダリアがニヤリと笑う。
「教官か」
オルレアも頷く。
「構わない」
その時、リコリスが口を開いた。
「私も参加していいか?」
二人が見る。
リコリスは少し笑う。
「ハンターになって、今回の戦いで感じた」
「強くなるには、基礎は大事だと」
ギルドマスターも頷いた。
「構わん」
ダリアが腕を組んで言う。
「言っとくけどな」
ニヤリとする。
「足腰立たなくなるまでやるぞ」
リコリスが即答する。
笑いながら。
「望むところですわ」
オルレアが小さく笑った。
ギルドマスターもそれを見て、わずかに口元を緩めた。
ギルドマスターは三人を見ながら、ふっと表情を柔らかくした。
先ほどまでの厳格な顔ではなく、どこか穏やかな表情だった。
「……お前達が来てからだな」
腕を組み、ゆっくりと言う。
「この支部に活気が出てきたと思う」
ダリアが少し照れたように鼻を鳴らす。
「そうか?」
ギルドマスターは頷く。
「あと他支部にも少しずつだが、お前達の名前が広がっている」
三人を見る。
「新人なのに近接がべらぼうに強いのがいるとな」
ダリアが笑う。
「噂って早いな」
ギルドマスターは続けた。
「もしかすると」
窓の外、街の向こうを見ながら言う。
「このギルド長年の悲願である」
「廃工場地域の地下」
「そこも、攻略が進むかもしれんな」
オルレアが静かに頷く。
地下の研究施設や工場――
それはこの地域のハンター達が長年挑み、そして退けられてきた場所だった。
ギルドマスターはふと思い出したように言う。
「そういえば」
「お前達の他にも、他支部で話題になっているハンターがいる」
三人が興味を示す。
ダリアが腕を組んだ。
「へぇ、どんな奴だ?」
ギルドマスターは少し書類を見ながら言う。
「そのハンターも低ランク」
「だが、お前達と同じくスモールブロンズを授与されている」
リコリスが眉を上げる。
「ほう」
ギルドマスターは続ける。
「その他にも」
「強敵を撃破」
「さらに旧文明のトンネル開通にも貢献したらしい」
ダリアが感心する。
「へぇ」
「新人にしては派手だな」
そして軽い口調で聞く。
「どんな奴なんだ?」
ギルドマスターは少し思い出すように言った。
「まだ若い、赤毛の少女らしい」
ダリアとオルレアの表情が少し変わる。
ギルドマスターは続けた。
「名前は確か……」
少し考えてから言う。
「ロゼッタと言ったかな」
その瞬間だった。
ダリアとオルレアの表情が変わった。
明らかな驚き。
ギルドマスターがそれに気付く。
「……知っているのか?」
オルレアがゆっくり口を開く。
「名前と特徴は一致する」
少し間を置く。
「赤毛でロゼッタという名前」
部屋に沈黙が落ちた。
重たい空気。
それを破ったのはリコリスだった。
腕を組みながら言う。
「おい」
「そいつはお前達の何だ?」
ダリアが少し遠くを見るような顔になる。
そして言う。
「同じ剣闘士団の後輩だ」
少し笑う。
「よく面倒を見てた」
オルレアが静かに続ける。
「もし、お前達の知っているロゼッタなら……」
「墓戻りか」
ギルドマスターが、小さく呟く。
ダリアが真剣な顔になった。
「そいつの名はわかるか?」
ギルドマスターはすぐ答える。
「スカーレット」
その瞬間。
ダリアとオルレアが再び黙り込んだ。
空気が重くなる。
ダリアがゆっくり呟く。
「同性同名の可能性もあるが……」
目を伏せる。
「多分」
「俺達の知ってるロゼッタだ」
再び沈黙。
部屋の中に静けさが落ちる。
その空気を破ったのは、またしてもリコリスだった。
少し呆れたように言う。
「なんでそんな深刻な顔してるんだ?」
二人を見る。
「可愛い後輩が生きてたんだろ?」
肩をすくめる。
「もっと喜べよ」
ダリアが少し笑う。
「……そうだよな」
オルレアも頷く。
「そうね」
ダリアがギルドマスターを見る。
「その支部は遠いのか?」
ギルドマスターは答える。
「ちょうど反対の地域だ」
ダリアが肩をすくめる。
「そっか」
少し笑う。
「まぁ」
「お互い生きてりゃ、会うこともあるだろ」
拳を軽く握る。
「その時に先輩面できるよう」
「頑張らないとな」
オルレアが小さく笑う。
「そうね」
リコリスも腕を組んで言う。
「よし」
ニヤリと笑う。
「まずは俺もランクアップ目指すか」
三人の視線が自然と合う。
遠く離れた場所にいる、赤毛の後輩。
だが同じ時代に蘇り、
同じ世界で戦っている。
――いつか、きっと会う。
その時のために。
三人はまた前へ進み始めていた。
第6章完
続く
話としての区切りがいいので、一旦ダリア達の物語はここで終了です。とても動かしやすく、書いていて楽しかったです。個人的に、地下闘技場の話が好きですね。
また、彼女達3人の話を何処かで書いていきます。
今後ともよろしくお願いします。
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