第1章ー⑯ ロゼッタ封印の真相 — 帝国が恐れたもの
前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。
いつの間にかロゼッタはベッド代わりの金属板で横になっていた。
サイボーグといえども人間の部分がある。
ましてやここまで戦い通し、睡眠は必要だった。
眠りこむロゼッタを前に、ホーゲルはゆっくりと、ロゼッタに”見せられない”ログを見ていた。
そこにはロゼッタが”封印された”理由が書かれていた。
**【帝国中央研究院・極秘文書】
〈対象個体 RZ-013 “ロゼッタ” 封印処置報告〉
分類:最上位機密(皇帝直轄)
閲覧権限:十二枢機軍評議会のみ
1. 対象概要
対象個体 RZ-013(以下“ロゼッタ”)は、
〈混植因子〉の“完全発現型”として作成された唯一の成功例である。
一般剣闘士個体との差異は以下の通り。
因子適応率:100%(例外値)
周囲因子保持者への強制同調効果:標準個体の34〜51倍
感染拡大性:観察下では制御不能
精神安定度:外部刺激に依存し変動
無意識下において“集団戦闘行動の中心点”となる傾向
本個体は、兵器としての運用を行う段階に到達したが、
統制委員会は「存在そのものが大規模暴動の起点となる」と判断した。
2. 処分案の棄却理由
複数の部門より“対象個体の後処理(処分)”が要請されたが、
以下の理由により承認されなかった。
2-1. 同調因子の暴走リスク
分析班より提出された報告では、
“RZ-013を強制停止した場合、対象と同調中の因子保持者が
高確率で暴徒化に移行する。”
と結論付けられた。
特に当時、帝国兵内部で〈混植因子〉の感染が進行していたため、
対象処分は “帝国中枢が自壊する引き金となる” と判断された。
3. 封印措置の決定
皇帝勅令第 79-β に基づき、
以下の処置を実施。
3-1. 意識凍結
対象の神経活動を“最低限の生命維持域”に固定。
記憶領域のアクセスを完全遮断。
3-2. 同調波の制限
因子の活動域を封殺するため、
“深層因子抑制機構(DFI)”を連続稼働。
対象個体は外部因子保持者との同調をほぼ喪失。
3-3. 隔離環境構築
廃都圏地下第七区画に封印施設“静域の室”を設置。
所在は機密扱いとし、記録上は“実験区画崩落に伴う消失”として偽装。
※封印後、施設に関わった技術兵の多くが諸事情により退役・消息不明。
4. 封印後の観測結果
封印後 11 日目より、帝国内部で因子保持兵の暴走事例が発生。
しかしロゼッタとの同調は検出されず、封印の効果は“限定的安定”を示した。
ただし、以下の懸念点が記録されている。
対象個体の因子活動は“完全停止していない”
長期封印による構造劣化が進行
外部からの刺激により覚醒する可能性あり
施設保守要員の減少に伴う監視の弱体化
封印後、帝国は崩壊し、ロゼッタの存在は“禁忌の伝説”になった
帝国は崩壊していった。
封印施設を維持できる人材も技術も失われ、
ロゼッタは誰からも忘れられたまま眠り続けた。
そして――
ホーゲルがその遺構を見つけて、彼女は蘇った。
「君が目を覚ましたのは……奇跡なんかじゃない」
「世界がもう一度、自分の意思を持つ君を必要としたんだよ」
「今度は……誰のためでもなく、自分のために生きろ」
ホーゲルは小さく呟いた。
目の前の少女の寝顔は、造られた”兵器”ではなく一人の”少女”だった。
第1章ー⑰へ続く
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