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第1章ー⑫ スパルタカス・プログラム

前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。


いよいよこの物語の核心部分が登場します。

 胸の奥で何かが、鳴った。


 ──ガンッ、ガンッ、ガンッ。


 脈動。

 心臓ではない。

 それはロゼッタの内部に埋め込まれた、封印された演算回路の覚醒音。


 《SPARTACUS PROGRAM—FORBIDDEN SEAL LIFTED》

 《スパルタカス・プログラム——禁制封印解除》


 ロゼッタの視界に流れ込む──

 無数の軌道予測、敵機の重心データ、空気抵抗の数値。

 それらが一瞬で組み上がり、〈殺す/生き残る〉

 二択の最短経路として提示される。


 ホーゲルが息を呑む。


 「ロゼッタに、ロゼッタに一体何が起こった!」


 その名は、はるか古代、奴隷剣闘士たちの抵抗戦で名を馳せた伝説の剣闘士

 「スパルタカス」にちなむ。

 彼の戦法──反応速度、洞察、反乱者としての“生存戦術”を模倣し、

 機械兵士の脳に直接刻み込む禁断の闘争アルゴリズム。


 本来は、未完成。

 発動すれば、戦闘能力は跳ね上がるが、

 代償として身体負荷と精神負荷が急激に増大する。


 ロゼッタの瞳が、深紅に染まった。


 黒龍兵が壊れた脚を使って最後の突進を行う。

 その軌道が、まるでスローモーションのように見える。


 (……見える)


 空気の揺らぎ。

 推進器の起動タイミング。

 脚部のバランス。

 攻撃の意図。


 すべてが“情報”として流れ込む。


 ロゼッタは”刀”を構えた。


 弱い義手が悲鳴を上げても、スパルタカス・プログラムは迷わない。


 ──斬れ。


 脳内に直接響く指令に従い、ロゼッタは刀を振り抜く。


 ガキィン!


 すれ違いざまに、黒龍兵の頭部が断ち切られ、機体が2つに別れ飛んでいく。


 首を断ち切られながらも黒龍兵が、まだ動いている。

 まるで動いている限り闘う”剣闘士”のように

 胴体部分の手・傷ついた脚は動き、

 断たれた頭部は赤い光点だけがまるで怒りのように輝いていた。


 ロゼッタは刀を握り直した。

 義手のモーターから焦げた匂いがする。

 戦闘は終わったと思われたが、

 スパルタカス・プログラムの演算速度が、明らかに上がっていた。


 《SPARTACUS PROGRAM:戦闘継続推奨》

 《優先行動:サバイバー消去》


 (……サバイバー?)


 ロゼッタの視界に、敵機ではない“人間のシルエット”が一瞬だけ映った。

 ホーゲルだ。


 (……違う、これは……!)


 プログラムが“敵味方の区別”を曖昧にし始めている。

 本来は彼の戦法──反応速度、洞察、反乱者としての“生存戦術”を模倣し、

 戦闘能力を跳ね上がるものだ

 

 だが敵がいなくなれば、その”生存戦術”は

 次に“戦うべき対象”を自動で再定義する。


 ロゼッタの右手が震えた。

 刀の切っ先が、ホーゲルの方向へわずかに傾く。

「ホーゲル逃げて!身体があなたを敵に!」

 「ロゼッタ!」


ロゼッタがプログラムに抗う為必死に叫ぶ!


しかし意思に反して、刀の切っ先がホーゲルに迫る。


 その時ホーゲルが叫んだ。「戻ってこい! それは……お前の意思じゃない!」


 しかし耳鳴りが強くなり、ホーゲルの声が遠ざかる。


 《最適手順:ホーゲル=戦闘妨害対象》

 《排除推奨》


 視界の端に、赤い線がホーゲルを囲んだ。

 照準だ。


 ロゼッタの身体が勝手に動き出す。


 (やめろ……! やめ……れない……?)


 心臓が早鐘のように鳴り、頭の中で電流が暴れ回る。

 プログラムは、彼女の意志など関係なく暴走モードへ入ろうとしている。


  (……闘うのは私の意志で決める。

  ”闘わされていた”時代の私じゃない……

  ……私は、ロゼッタだ!)


 視界に走っていた赤いラインが、ふっと揺らいだ。


 ロゼッタは奥歯を噛み締める。


 「……ッ、止まれ……止まれっ!!」


 右腕が震え、そのまま刀が地面に落ちる。


 ガラン。


 スパルタカス・プログラムが抵抗し、ロゼッタの中で暴れようとする。


 《警告:行動拒否》

 《強制戦闘モードへ移行》


 ロゼッタは叫んだ。


 「私は……誰も……殺さない!!」


 その瞬間、胸部の制御装置が赤熱し、

 スパルタカス・プログラムの演算が強制リセットされた。


 《SPARTACUS PROGRAM:緊急停止》


 世界が静かになった。


 落ちていた刀が、冷たく光っている。

 ロゼッタは膝をつき、深呼吸を繰り返した。


 ホーゲルが駆け寄ってくる。


 「ロゼッタ……戻ってこれたんだな。」


 ロゼッタは弱々しく笑った。


 「……うん。

  私は、私の意思で……ここにいる。」


 その後ろで、黒龍兵の残骸が火花を散らしていたが、やがて動かなくなった。


 ロゼッタの戦いは、敵だけではなく──

 自分自身に組み込まれているプログラムとの“闘争本能”との戦いでもある

 ことを、彼女自身が初めて理解した瞬間だった。


 第1章ー⑬へ続く


ここからスパルタカスプログラムの本当の目的が明らかになります。もう少しお付き合いお願いします。(スパルタクスという表現もありますがここではスパルタカスにしてます)



読んでいただいてありがとうございます。ご意見ご感想お待ちしております。

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