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第1章ー⑩ 闘士としての”本能”

前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。

 旧自走砲基地を飛び出した瞬間——

 ロゼッタの背筋が凍る。


 遠くのビル屋上に、黒いシルエットが一つ。


 人間の姿だが、他の強化兵とは比べ物にならない殺気を帯びている。


 黒龍部隊の精鋭兵。

 “対機械化特化”の異能兵士 黒龍特化異能兵こくりゅう・とっかいのうへい


(あれが……”本物”の黒龍兵……?)


 動けば、殺される。

 しかし、立ち止まれば包囲される。


 ホーゲルがぼそりと呟く。


「……ロゼッタ。どうする?」


 ロゼッタは震える呼吸を抑え、盾を握り直した。


「決まってる。逃げる。でも……戦う覚悟はしておく」


「言うと思ったよ。じゃあ——次のルートへ急ぐぞ!」


 ふたりは崩れた階段へ走り込み、下層街区へと消えていった。


 黒龍兵の目が、冷たく光る。


 沈黙の中、上の階層から“音のない足音”が降りてくる。


 見えない。

 だが確実に近づいてくる。


 ホーゲルがロゼッタの肩に手を置いた。


「ロゼッタ……ここで戦うのは無理だ。逃げるぞ」


 ロゼッタはうなずこうとした。

 だが——体がうまく動かない。


 何かがロゼッタの視界に“浮かんだ”のだ。


 黒い影。

 構えた刃。

 装甲の継ぎ目。

 切り返しの角度。

 回避の軌道。


 すべてが“見える” ”見覚えがある”。


(これ……私、こんなの……知らないはずなのに……)


 記憶ではない。

 でも身体が”覚えている”。


「ロゼッタ!? どうした!」


「……ホーゲル。私……」


 言葉が喉で引っかかる。

 でも感覚が叫んでいる。


 「来る。右から」


 ロゼッタは盾を右側に構えた。


 同時に黒い影が瓦礫を切り裂きながら飛び込んできた。


 ガンッッ!!


 盾に衝撃が走り、左腕が砕けるような痛みが走る。

 盾がきしみ、装甲が半分へこんだ。


「ロゼッタ!?」


「大丈夫じゃない……けど……動ける……!」


 黒龍兵は静かだった。

 音を出さず、ただロゼッタの前に立つ。


 その動きに——

 またロゼッタの視界が勝手に反応した。


 次の軌道、次の一歩の踏み込み。

 その“予兆”が光のように浮き上がる。


(これ……予知? 違う……身体が勝手に読んでる……!)


 黒龍兵が消えた。


 いや、消えたように見えただけだ。

 背後に回り込む高速機動。


 なのに——

 ロゼッタには、見えていた。


「後ろ……!」


 盾を背中へ回し込む。


 ガァンッッ!!


 盾がまた弾かれ悲鳴を上げる。


 だがロゼッタは倒れない。


 黒龍兵は初めて動きを止め、かすかに首を傾げた。


 その無機質な視線がロゼッタを分析する。


 まるでこう問うようだった。


「「なぜ、私の動きを読める?」」


 ロゼッタは答えられない。

 自分でも説明できないからだ。


 だが身体は確信していた。


 闘士としての訓練が、

 改造手術で強化された反射神経が、

 眠っていた感覚が、

 一気に開放されたのだ。


 ロゼッタの本能が覚醒する。


(私……戦える)

 黒龍兵が再び動いた瞬間。


 ロゼッタは本能で地面を蹴り、右へ回り込む。


「はぁッッ!!」


 ブレードが敵の脚部装甲をかすめる。


 初めて、黒龍兵の動きが止まった。


「ロゼッタ……あんた、なんだ今の……」


 ホーゲルが呆然とつぶやく。


 ロゼッタは息を荒げながら、ただ一言。


「わからない……でも……

 これが、私に残ってた“本能”なんだと思う……!」


 黒龍兵が静かに体勢を変える。

 今度は本気で殺す構えだ。


 ロゼッタは盾を握り直し、ブレードを構える。


(負けない……絶対に)


 黒龍兵との“本当の戦い”が、ここから始まる。


 第1章ー⑪へ続く

果たしてロゼッタの運命は?


読んでいただいてありがとうございます。ご意見ご感想お待ちしております。

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