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第3章ー㊵ ランクアップ ――新たな戦いの始まり

前回の続きです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。


街へ戻る道中、夕暮れの光が舗装路を赤く染め、

装甲トラックの影が長く引き延ばされていた。

荷台に腰を下ろした四人は、誰も口を開かなかった。疲労だけではない

――鉱山跡での戦い、その結末がまだ身体と心に重く残っていた。


やがて、見慣れたハンターギルドの建物が視界に入る。

厚い石壁、掲げられた紋章、人の気配。

「戻ってきた」という実感が、ようやく現実味を帯びる。



ハンターギルド・報告窓口


カウンターで受付官が依頼証と報告書を受け取る。

血の跡が残る素材の一部、回収班の追加報告、プルータスの損壊状況を示す記録。


ページをめくるにつれ、受付官の表情が固まっていく。


「……少々、お待ちください」


そう告げて奥へ消えた瞬間、周囲の空気が変わった。

視線が集まり、ひそひそと声が漏れる。


「鉱山跡の案件だよな?」

「回収班が動いたって聞いたぞ」

「新人パーティじゃなかったか……?」


ほどなくして、上席ギルド員が姿を現す。

年季の入ったコート、無駄のない所作。

その場のざわめきが、自然と収まった。


「討伐対象――

 鉱山跡出現個体プルータス


一拍置いて、重い声が続く。


「当該個体は、

 賞金首級(ウォンテッド)モンスターとして正式認定する」


その瞬間、ギルド内が大きくどよめいた。


「賞金首級……!」

「いや、あれを倒したのか?」

「回収報告、本物だ……」


上席ギルド員はさらに言葉を重ねる。


「また、本件討伐は単独依頼ではなく、

 複数班の被害を未然に防いだ点を評価し――」


机の上に、小さな金属製のプレートが並べられる。

鈍く輝く青銅色、その中央に刻まれた星。


「当該パーティに、

 ミドル・ブロンズ認定を付与する」


空気が、はっきりと変わった。


スモールではない。

だがラージでもない。

“明確に実績として刻まれる”段階。


「ミドルだと……?」

「新人で? 嘘だろ」

「戦歴に残るぞ、それ……」


ロゼッタの胸元に、新しい刻印が加えられる。

ブロンズ星・中位サイズ。

それがあるかないかで、今後の扱いはまるで違う。


上席ギルド員は続ける。


「以上を踏まえ、ランク昇格を認める」


静かな声が、はっきりと響く。


「ロゼッタ――EからDへ」

「リン――EからDへ」

「ミレイア――EからDへ」


一瞬の間。


「セリカ――FからEへ」


ざわめきが爆発した。


「三人D……!」

「しかもミドル・ブロンズ付きだぞ」

「前衛Eでこれは破格だ……」


リンは思わず拳を握り、

ミレイアは腕を組んで深く息を吐く。

セリカは一瞬理解が追いつかず、次の瞬間、顔を真っ赤にした。


「え……? ミ、ミドル……? 私、E……?」


ロゼッタは静かに自分のギルド証を見る。

新しく刻まれたランクと、ブロンズの星。


(……数字だけじゃない)


ギルドが “結果” として認めた証。


周囲の視線は、もはや好奇心ではなかった。

評価と警戒、そして期待。


上席ギルド員が最後に言う。


「今回の件は、

 ギルド内で正式に共有される。

 ――胸を張れ」


その言葉を合図に、ギルド内は拍手と歓声、ざわめきに包まれた。

顔見知りのハンターたちが声を上げる


「酒場行こうぜ!」

「ミドル祝いだ!」

「もう新人扱いできねえな!」


ロゼッタは三人を見渡す。


リンは誇らしげに笑い、

ミレイアは小さく頷き、

セリカはまだ夢の中にいるような顔で、何度も自分の証を見ている。


――確かに ”一線” を越えた。


だが同時に、

この先に待つ戦いが、今までとは違うことも、全員が理解していた。


ハンターギルドの喧騒の中で、

四人の名と戦歴は、

静かに、しかし確実に刻まれ始めていた。



その夜、ギルドの大広間は、いつも以上の熱気に包まれていた。

壁際に並べられた長机の上には、樽から注がれる酒と大皿料理が次々と置かれ、

金属食器が触れ合う音と笑い声が混ざり合って、

天井の高い空間に渦を巻くように広がっていく。


「おいおい、主役はあっちだぞ!」

誰かの声に背中を押されるように、ロゼッタたち四人の周囲に人の輪ができた。


「鉱山跡のプルータスだろ? 正気かよ」

「回収班があの惨状を見て青くなってたぞ」

「ミドル・ブロンズ付きで昇格? そりゃ祝うしかねぇ」


年季の入ったハンターが豪快に杯を差し出し、

若いルーキーが目を輝かせて質問を投げ、

中には無言で親指を立てていく者もいる。


ロゼッタは一人一人に丁寧に頭を下げながら、

どこか落ち着かない様子で杯を受け取っていた。

戦いの最中とは違う、この距離感、この賑やかさに、まだ慣れきっていない。


「礼儀正しいなぁ、お前」

「それが生き残る秘訣だ、忘れんなよ」


そんな声が背中から飛んでくる。


リンはというと、すでに何人かと談笑しながら情報交換を始めていて、

「次はあの辺の依頼が怪しいらしいよ」

などと、ちゃっかり次の仕事の匂いを嗅ぎ取っている。


ミレイアは杯を片手に静かに周囲を観察し、

時折声をかけられては短く応じ、必要な話だけをきちんと拾っていく。

その姿に、ベテラン勢が「分かってるな」と小さく頷くのが見えた。


そしてセリカは――

「え? あ、ありがとうございます!」

「い、いえ、まだまだで……!」


声をかけられるたびに背筋を伸ばし、照れと興奮が入り混じった表情で頭を下げている。

重装備の前衛として評価されたことが、まだ実感として追いついていないのだろう。

それでも、「あの防具、実戦向きだな」と言われた瞬間、耳まで赤くなっていた。


しばらくして、人の波が少し落ち着いた頃。

四人は一つの卓を囲み、ようやく自分たちだけの時間を取り戻した。


「……すごいね、ギルドって」

ロゼッタが小さく息を吐く。


「でしょ? 結果を出したらちゃんと騒いでくれる」

リンが笑いながら杯を掲げる。

「嫌いじゃないよ、こういうの」


「で、本題だけどさ」

ミレイアが机の上に置かれた資料――回収班の仮リストに視線を落とす。

「素材、どうする?」


その一言で、四人の表情が一気に明るくなった。


「回転式の削岩アーム、あれ使えそうだよね!」

セリカが身を乗り出す。

「歯の部分、強力な近接武器にできるかも!」


「装甲板も悪くないよ」

リンが指を折る。

「軽量化すれば、車を持った時に積める装備にできそう」


ロゼッタは少し考え込んでから、控えめに口を開く。

「……私の武器、もう少し衝撃を受け止められる構造にできたら、助かるなって」


その言葉に、セリカの目がきらりと光った。


「できる! 絶対できる!」

「芯材はもうあるし、あの素材なら――」


ミレイアはその様子を見ながら、珍しく柔らかく笑う。

「こうして前を向いて考えられるのは、いい兆候ね」


卓の上には、いつの間にか簡単なスケッチまで描かれ始めていた。

酒の匂い、油紙、金属の話題。

それは戦いの延長線上にある、生きるための会話だった。


周囲ではまだ宴が続いている。

笑い声、乾杯の音、次の武勇伝。


その中心で、ロゼッタはふと感じる。

ここは闘技場ではない。

血を流すための場所でもない。


――共に生き、次を語れる場所だ。


胸元のギルド証が、わずかに重みを増したように感じられた。



見習いハンター編 完


続く

これにて見習いハンター編終了となります。

次章から一端のハンターとして様々な依頼を受けます。

ロゼッタ達の活躍を今後とも見守って頂きたいと思います。


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