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 私の日常は平和だ。両親に愛されて、時々叱られて、兄や姉と遊んで、疲れて眠って。ちょっとうるさいお嬢様はいるけど。でも、そんな日常の中で一番楽しいのは屋敷の外に出て幼なじみ……ソーレルジェットと遊ぶ時だ。ソーレルジェットというのは栗色の元気という意味だ。その名の通りパワフルな栗色の猫で、足先とお腹、しっぽの先が白い猫だ。

「ソーレルジェット、ここにネズミがいる!」

「本当!?うわあ、僕、本物を見るの初めてだよ!」

今日もソーレルジェットと遊んでいる。ネズミがいたので、今日は狩りを遊びにしそうだ。私が慎重にネズミに忍び寄っていると、後ろからいきなりソーレルジェットが飛び出してきた。

「捕まえた!あれ?いない」

ソーレルジェットは前足の下を見て不思議そうに首を傾げる。私は前世の意識が混じっているためかわいいと思ってしまうが、ふと我に帰る。

「当たり前じゃない!もっとそっと近付かなきゃ!父さんが言ってたわ!」

父さんことブルーペルトは、近所では一番優秀な狩猟猫らしい。その父さんから狩りの仕方を習った私はこれまでに3匹のネズミを捕まえたが、兄弟の中で一番優秀だと父さんと母さんからのお墨付きだ。なのに、ソーレルジェットに邪魔された!憤慨した私は、ちょっと悪戯をしようと思ってソーレルジェットの栗色の背中に忍び寄り、甘噛みをした。ソーレルジェットは驚いた声を発し、私の耳に噛みついてくる。私もソーレルジェットの白い尻尾に噛み付き、喧嘩ごっこが始まる。いつの間にか集まってきていたのは、見物人ならぬ見物猫。その中に見知った顔を見つけた私は驚く。私たち三兄弟の一番上、姉さんこと三毛猫のフラワーストリームと兄さんこと白猫のリトルファングだ。そして、

「おいフェザーフラワー!負けるなよ!ソーレルジェットに負けたくないだろ?」

「そうよ!姉さんたちに勝つところを見せて!」

という姉さんたちの野次が聞こえる。それに混じってソーレルジェットの姉・ブルームテイルとソーレルジェットの弟たち、ゴールデンペルトとイェローテイルが、

「ソーレルジェット、頑張って!」

「「兄ちゃん、頑張れ!」」

という野次を飛ばしているのが聞こえる。それに答えようとしたソーレルジェットの一瞬の隙を突いて腹を軽く蹴った。すると、ソーレルジェットが降参のポーズを見せる。

「フェザーフラワー、負けた!僕これでも姉弟の中じゃ強い方なんだよ?」

ソーレルジェットは私が噛み付いた耳を痒そうにポリポリと後ろ足でかく。それを見た私は緊張を解いて前足の毛づくろいを始める。周りを見渡すと、さっきまでいなかった猫たちの姿が目に入った。

「父さん!母さん!」

私がまだ戦いの興奮が冷めていない上ずった声を上げると、二匹はゆっくりと近付いてくる。周りの猫たちは、二匹に敬意を示して道を開け、会釈してから去っていく。私が待ちきれずに駆け寄ると、母さんが私の体を舐めて毛づくろいを始める。

「よくやったわ、フェザーフラワー。母さんとっても鼻が高いわ」

私が気持ちよく毛づくろいを受けていると、ブルームテイルが父さんに駆け寄った。

「ブルースター!ぜひ、あたしを特訓して下さい!」

ブルースターというのは、この辺りの長をしている時の父さんの名前だ。長というだけあって強いので、子猫はみんな父さんの訓練を受けたがる。

「良いだろう、ブルームテイル。ついでに弟たちも訓練してやろう」

父さんが威厳のある態度で頷くと、ブルームテイルの顔がパアッと輝く。

「本当ですか!?ありがとうございます、ブルースター!ソーレルジェット、ゴールデンペルト、イェローテイル、おいで!ブルースターが訓練を受けさせて下さるって!」

ブルームテイルが弟たちを呼び寄せると、ゴールデンペルトとイェローテイルが駆け寄って来た。でも、ソーレルジェットは呑気に欠伸をしている。

「僕はいいや。今はフェザーフラワーと戦って疲れてるから」

その言葉を聞いた姉さんと兄さんが頷き合うのを、私は見逃さなかった。

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