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猫に転生する特徴的な新連載です。
あったかい……。それにふかふかで気持ちいい。白い毛だ……って何これ!?こんなに大きい白い毛の生き物ってシロクマくらいよ!?怖っ!私、シロクマに顔をうずめてるなんて!逃げなきゃ……。そう思った私は周囲を見回す。正面と右に白い毛と、左に黒、茶色、白の混じった毛。猫でいう三毛ね。どうやって逃げるのかしら!分からないわね!すると、正面の白い毛がもぞもぞ動き出す。そして、雌の白猫の顔が見えた。
「あら、お目覚めね、お寝坊さん。ふふっ」
え……?言葉を発する猫?何で私猫の言葉分かってるの?それに猫巨大だし。あ!そういうことね。私きっと、夢を見ているんだわ!すると、白猫の後ろで黒い毛がもぞもぞ動くのが見えた。
「なんだ、ホワイトファー。ああ、フェザーフラワーの目が覚めたのか」
イケボを発しながらひょっこり顔を上げたのは青みがかった黒い毛に真っ青な瞳の雄猫(雄猫だよね?)だ。フェザーフラワーって誰?ホワイトファーは白い毛って意味で、 フェザーフラワーは羽の花って意味。絶対ふかふかの名前。夢にしては登場人物……いや、登場にゃん物の名前がリアル。
『あの、フェザーフラワーって誰ですか?』
私はそう言ったつもりだった。が。
「ミーミー、ミー?」
口から出てきたのは子猫の鳴き声だった。
「あら、何?」
白猫が優しい声で訊いてくる。はあ!?私は猫じゃないわよ!?自分は人間だって脳内に示しておかないと猫の頭になっちゃうわ!そう思った私は、自分の体を見る。するとイケボの雄猫そっくりの毛色のふさふさの手足が見えた。もう!逆に自分は猫だって示してるじゃない!本当に、どういうこと?私がそんなことを考えていると、どこかから声がした。
「お嬢様、お待ちください!」
「いや!フェザーフラワーの様子を見に行くのよ!」
お嬢様?人間?猫?どっちのお嬢様?
「あっ!目が覚めたのね!」
見えたのは人間のお嬢様。でも、その顔が問題だった。何しろ、私がしているゲームのヒロインなんだもの。
「お父さんとお母さんの顔は覚えた?名前は気に入った?」
お父さんとお母さん?名前は気に入った?どういうこと?
「やんちゃ娘ったら、まったく。朝からうるさいわ。ね、ブルーペルト」
ホワイトファーと呼ばれた白い雌猫がぼやく。
「ああ、本当に。親子水入らずの時間はないのか」
続く雄猫。この猫、ブルーペルトっていう名前なんだ。ブルーペルトは青い毛って意味。でも、ひっかかることがある。ブルーペルトにホワイトファーって、ゲームのヒロインが飼っている猫たちよ?そして……フェザーフラワーは二匹の間にできた子猫。たしか毛色はブルーペルトそっくりの青みがかった黒い毛。私と同じね。さらに、兄と姉が一匹ずつ。兄は白猫で姉が三毛猫。そして、周りにいる猫たちは、全員条件に当てはまる。ということは……ここはゲームの世界!?いやいや、まさかね。転生なんて、物語上の出来事よ。でも、もしも本当にここがゲームの世界だとしたら、フェザーフラワーは両親の元を去る。冒険に出かけて生死不明だ。そこで嘆き悲しむ両親をヒロインが慰めて優しさアピールしたりなんてエピソードあったわね。ってことは、もしかしたら私、失踪するの?そんなことを考えて、血の気が引いた。
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