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引き籠りの部屋が異世界に漂流してしまったようです  作者: 火海坂猫


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六十五話 ピンポンダッシュならぬピンポン爆破

 当然のことながら自宅には鍵をかけるものだ。だからアマテも自身の神域に外部からの侵入を防ぐ何かをしているのではないだろうか…………そう日陰が思い浮かんだのはもうそこに繋がれと念じてからだった。


「あ」


 しかしそれは杞憂きゆうに過ぎなかったようで繋がったという感覚を覚える。


「神にとって相手の神域に侵入するというのは全面戦争を吹っ掛けるようなものだ。それでいて相手の神域に侵入すれば自分が一方的に不利になるのは言うまでもない」


 そこで遅まきに疑問を口にした日陰に対するヨミの返答がそれだった。確かに相手に戦争を吹っ掛けたうえで不利な状態に陥るのであればやるのは愚か者だ。だから大抵の神が他神の侵入を警戒していないらしい…………もっともその愚かなことを日陰たちはしようとしているのだが。


「わかっていると思うが、開けても絶対に中に入るなよ」


 念を入れるようにヨミが警告する。日陰たちは望んで全面戦争を仕掛けているわけだが、だからといって神域に侵入して自ら不利になる必要まではない。外からちくちくとアマテを削っていくのが四人の作戦なのだから。


「では開けるぞ」


 ユグドが窓に手をかける。冥利の世界の時は窓越しに向こう側が見えたが、今回はただ黒に染まっていて何も見えない…………恐らく厳密にはまだこの部屋がアマテの世界と完全に繋がっていないのだろう。

 こちらが望んだタイミングで繋いで即攻撃を仕掛けられるよう、いわばアマテの神域に気づかれないよう触れただけの状態に無意識に日陰がしているのだ。そしてユグドが窓を開いたその瞬間にアマテの神域に穴を空けて二つの神域が繋がった。


「あれ、なにもいないね」


 そこから広がっていたのは窓を開く前と一転して白い光景だった。柱と床しかないような白を基調とした神殿のような光景がそこには広がっていた…………余計な物があまりないので遥か遠くまで見通せるのだが、人影らしきものはそこには見えない。


「そっか…………アマテの神域は広い、んだ」


 ついこの部屋基準で考えてしまったが、アマテは古くから生きている神なのだからその神域も大きく広いのだろう。それであれば適当に繋いだその場所にアマテがいるという可能性はかなり低くなる。


「しかしそれであればこちらも見つかる前で削れるのではないか?」


 アマテ本人がおらずとも神域に損傷を与えればその神にダメージがいくのは実証済みだ。アマテ本人がいる辺りに繋がる可能性が低いのであればそれだけ無条件に暴れられる。


「いや、違う好機だ!」


 ヨミが叫ぶ。


「そもそもこの神域に奴の気配はない!」

「つまりは留守ということかの?」

「そうだ! しかし神域への侵入者にはすぐに気が付くことだろう!」


 だから時間があるわけではないとヨミが叫んで促す。


「早くジャッジメントとやらを出せ!」

「用意してあるよ」


 冥利が手の平を差し出すとそこに小さな小箱が出現する。その防護服にもユグドから教わった空間圧縮技術がすでに適用してあったらしい。


「早速起爆するのかい?」

「いや、設置していつでも起爆できるようにするだけだ…………起爆はアマテが戻って来たその瞬間に行う」


 今ここで起爆するだけでは神域からのダメージフィードバックしか与えられないが、アマテ自身も巻き込めば実質二倍のダメージを与えられることになる。


「恐らく奴は戻ってすぐにこの場の確認に来るだろう。見えたその瞬間に起爆しろ」

「それと同時に日陰殿は接続を断つのじゃぞ?」


 そうでなくてはこちらも巻き込まれることになる。


「さ、先にこっちが狙われる、可能性は?」


 アマテが自身の神域の外にいて、そこから戻ってくるのだとすれば自身の神域に繋がる日陰の部屋に気づく可能性もあるだろう。


「アマテは自分本位の性格だからまず己の安全を優先するだろう。だからこちらを狙う前に自身の神域の安全を確認する可能性が高い…………それにあちらが神域の外でこちらを襲ってくるのならその方が勝算は生まれるだろう」


 アマテを日陰の神域であるこの部屋に引き込むことができれば大幅な弱体化が見込めるのだから。


「そ、そっか」

「それより急げ」

「ほいほいっと」


 促されて冥利はその手の小箱をアマテの神域へと放り投げる。軽く放られたそれだが防護服のサポートもあったのか結構な距離を飛んでポトリと床へと落ちた。


「あのままでよいのか?」

「大丈夫なようにしておいたよ。起爆と同時に展開するようになってる…………あのままの方が警戒もされづらいかもしれないしね」


 少なくとも人間であればあんな小箱にそう警戒はしない。神相手に通じるかどうかはわからないがやらないよりはマシだろう。


「あ、なんか……来る」


 日陰はぞわりと首筋を撫でられたような感覚を覚えた。世界の狭間に上下の概念があるかどうかはわからないけれど、そこに浮かんでいる彼の部屋の上の方を何かが通っていったような気がする。それは初めての感覚ではっきりしたものではなかったが…………状況からか考えるとアマテの可能性が高いだろう。


「構えろ。必ず不意を打て」


 認識されれば防がれる可能性が高まる…………だからその認識の隙を突くしかないのだ。


「いつでも」


 冥利がそれに答える。その手には何も持っていないが、防護服の右手は何かのスイッチを握っているかのように親指が立てられている。その親指を下ろせば起爆する、そういう機能にしてあった。








 何かが白い空間の端で見えた気がした。


「今」


 その声が誰のものか、確認することなく冥利は親指を下ろした。


「日蔭殿!」


 瞬間、ユグドが窓を閉めて叫ぶ。即座に日陰はアマテの神域との繋がりを断って移動するように念じる。


 その直後に部屋が大きく揺れた。

 

 それはアマテの神域から離れてもなお伝わる、巨大な衝撃だった。


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