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いつから、夏が嫌いになったのだろう。
思い出すことは、もう、できない。野山を駆け巡った時の、頬を撫でる風も。じりじりと肌が焼ける感触も、何もかもを愛していたはずなのに。
今はもう、それを思い出すことが、できない。
「――ねえ、アスタ。今日は、なにして遊ぶ?」
誰かが、僕に問いかけてくる。
これはいつの記憶だろう。ずうっと昔のようにも、つい最近のものにも思える、いつかのワンシーン。
宝石みたいに輝く木漏れ日が、いくつも僕らの手や足に落ちてきて、僕と"キミ"を彩っていた。
そう、"キミ"は大切な友達だったのだ。かけがえのない、僕の幼き日々を彩っていた、大切な一ページ。
しかし――どうしてだろう。その顔が全く、思い出せない。
顔だけじゃない、声も、髪の色も、温もりも――何もかもが、頭の中から抜け落ちてしまったかのように。
幼い日のどこかに置き忘れてしまったかのように、何一つとして、思い出せないのだ――。