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夏の思い出は、いつだって夕立ちの匂いがした。
これはいつの記憶だろう。わざとらしくセピアのフィルターがかかった情景は、ひどく旧懐を誘う。足の裏に残った感覚が、遠のいてもなお、僕をそこに縛りつけているようだった。
君が、僕の目の前を歩いている。
背の高い夏草を掻き分けた、その先を目指していた。示し合わせたいつもの場所、みんなが集まる、幼い頃の舞台の上。
何もかもが煌めいていたはずの、この景色の中で。それでも君は、どこか諦めるように、こう呟いていたんだ。
「本当の願い事ほど、叶わないものだ」
君が誰なのか、思い出せない。
君がどこに行ったのか、思い出せない――。