第四章〜放送再開
宜しく御読みになって頂けましたら幸いです!
先程、彼女の放送チャンネルをチャンネル登録しておいたので、彼女が生配信を始めたと同時に、俺のスマート・フォンに、放送開始を告げる通知が届き、通知音も鳴った。
ハンネ=ハンドル・ネームは確認してあった。
もんぶらん━━
それが彼女(と思われる)配信主の放送内におけるニックネーム。
もんぶらんの配信枠に入室するが、配信画面は相変わらず、真っ暗なまま。停電は復旧していないらしい。
彼女には、見知らぬ盲目の男からの脅威が依然として残っているのに違いなかった。
『そこに一緒にいるのはもんぶらんさんの知り合いなの?もんぶらんさんは女性?その場所に関する何らかの手掛かりになり得るものは何かないの?』
と、続けざまに訊いてみた。向こうの端末のバッテリー残量にも限りがあるのだ。会話は手短な方がいいに決まっている。
すぐに、文字テキストによるコメントが返ってくる。
『知り合いではありません。初めて見る顔のひとです。町中を歩いていたところ、いきなり声を掛けられ、道に迷ったからと道案内を頼まれたんです。眼のご不自由な方だと思えたんで、たいへんだと思い、頼まれるままに案内に応じたんです。そしたら。静かな路地に入ったところをいきなり腕を強く掴み取られてしまって。力が強いものどから振り解ないし、怖くて声も出ないしで。襲われる恐怖から闇雲に逃げ回っているうちに知りもしないどこかのオフィスビルらしい高層ビルの中に逃げ込んでしまったのです』
『それでエレベーターのケージの中まで逃げ込んで?ケージがどこかの階に向かう途中で停電が起きたと?』
俺が先回りした。と、
『そうです。もえパニックだったから・・・。一階で乗って、十階のボタンを押したのだけは憶えてます』
『なるほど。十階は最上階のボタンでしたか?』
俺が問うと、
『はい。そうだったと思います。あと・・・』
『あと?』
『妙に狭くて古びたエレベーターだったと記憶しています』
なかなかの記憶力だ。
少なくともこれで、十階建ての築年数の新しくないビルだとは限定出来たことになる。
御読みになって頂きまして、誠に有り難う御座いました!