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ぺぽちょんと歯磨き粉

「やべ、歯磨き粉が切れちった。買い置きもない、なのに心は歯磨き気分。これは、買いに行くしかない」

 ぺぽちょんは歯ブラシ片手に家を出た。現時刻は夜の九時前、近所の薬局が閉まる目前だ。ゆとりあるパジャマが風になびいて、ボンボンのついた三角のナイトキャップが馬の尻尾のように揺れている。

 ぺぽちょんは灯火に吸い寄せられる虫の如く入店して驚いた。

「ひ、人が多い」

 薬局内にはパジャマ姿に歯磨きを手にした老若男女が歯磨き粉コーナーの前で団子になっていた。

「お、お客様方! 当店の歯磨き粉はあとひとつにございます!」

「なに!? 俺あ歯磨き粉がねえと夜も眠れねえんだぞ!」

「私は歯を磨かないと明日を迎えられないわ!」

「ぼ、僕だって歯磨き粉がないと、好きな子と面と向かって話せないや!」

「ロマンチストなヤツらめ、ワシに任せい」

 一人の老人が皆の前にでた。古めかしいパジャマを身にまとっているが、スリッパの隙間から見える靴下は孫から貰ったであろう戦隊モノを履いている。

「これより、歯磨き粉争奪戦を始める!」

「なんだって、歯磨き粉争奪戦だって!?」

 ぺぽちょん驚きを隠せない。

「ルールは単純明快、この最後の歯磨き粉を手に持った時、歯磨き粉様が我々の中から一人をお選びになる!」

「そんなの、どうやって分かるってんだい!」

「そうだそうだ、イカサマする気じゃあねえだろうな!」

「なあに、選んでくださるんだ、光でもするだろうよ」

「い、イカサマじゃあねえの!?」

「まずはそこの女子からじゃ!」

 指を刺されたのはぺぽちょんだ。

「これを持てばいいんだな」

「ああ、歯磨き粉様が選んでくださる」

「はっ!」

 ピッカーン!

「な、初っ端のおなごを選ぶとは思うまい!」

「これは嬢ちゃんのものだな」

「ああ、異論はないぜ」

 みなが涙する中、ぺぽちょんは歯磨き粉を握りしめて思った。

「なあ、衛生的に良くないかもしれないけど、みんなで回そうぜ。歯ブラシ買ったら、ちょっとは清潔だろ?」

「な、そんな、神様か!」

「名前をなんというのでしょうか!」

「ふふん。我が名は」

「あさぎのぞむ!」

「え?」

「我が名はあさぎのぞむだ! 大文豪になる男だ!」

「私の手柄はくれてやるが、お前に歯磨き粉はくれねえぜ」

「すみませんでしたぺぽちょん様」

 ぺぽちょんは作者あさぎのぞむにも歯磨き粉を分けてくれた。優しい!

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