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サボり魔先輩に恋に落ちるまで  作者: 春夜もこ
16/17

後1カ月~感謝のバレンタイン~

 2月14日。それは恋心を募らせる女子と、もしかしてと自意識過剰な男子がソワソワする日である。


 だけど私の感覚は、世間一般と少しずれていた。というのも、今までずっと母とチョコを交換し合っていたので、お世話になっている人に渡すという色が強かったからだ。


「眞白先輩、好きです。受験終わった後でいいので、付き合ってください」


 だからまさか、先輩を探していたらこんな場面に出くわして、頭が混乱するのも無理はないと思う。


 そういえば、バレンタインって好きな人にチョコを渡す日でもありましたね…。


 確かたまに告白されるって言っていたっけ。本当だったんだ…。チラッと見る感じ、告白している女子は1年生のようだ。


「ごめん無理」


 わぁ、この人普通に振った。というか、振り方素っ気なさすぎる。これは女の子が可哀そう。私ですら、ごめんなさい無理ですって言うのに。…あれ、一緒じゃない?


 自分の振り方に自分でショックを受けて反省していると、女の子が改めて話しかけた。


「何でですか?好きな人でもいるんですか?もしかしてもう彼女さんが…!?」


 お、おおう…すごいね、そのガッツ。嫌いじゃないよ。それに私もその質問はちょっと気になる。今まで彼女はいなくても、好きな人くらいできたことあるはず。


「好きな人がいる。これでわかってくれるか?」

「はい…ありがとうございました…」


 女の子は泣きそうな声をしながら、その場を離れて行った。


「好きな人いたんですね」

「何で澄野がいんの…しかも聞かれてるし」


 女の子と入れ替わるように話しかけると、眞白先輩が気まずそうな表情を浮かべた。


「チョコ持ってきました」

「え、もしかして告白?」

「違いますよ。後、今年は自分からしないと決めています」


 おみくじに書いてあったもんね。自分から動かない方が吉って。まぁ、元々自分から動く事なんてないんだけど。


 私は手に持っていた小さな紙袋を眞白先輩に渡す。


「日頃の感謝の気持ちを込めて、です。いつも何かと気にかけてくれて、ありがとうございます」

「お前、本当に律儀だよな。ありがとう」


 先輩は気まずそうな顔から一転して、笑顔で受け取ってくれた。


「そういえば、好きな人って誰ですか?私が知っている人?」

「それはお前の交友関係の狭さを自覚してから言ってくれ」

「うわ、ひどいですね」


 確かに今まではいつも一人だったけど、この学年では桜ちゃんというとても良い子と仲良くなれた。そして桜ちゃんを通じて他にも何人かと話すようになったのだ。全然ボッチじゃない。


「でも、先輩に好きな人がいるということは、私すごく迷惑でしたよね…」


 イベントも日常生活も、私がいたせいでその子にアプローチできなかったはず。これは申し訳ないことをした。しかも、周りから付き合っているんじゃないかと疑われているみたいだし。もうこれ先輩がその人に当たっても砕けるだけでは?


「お前は本当に…いや、何でもない。それに俺が自分からやったことだから気にするな」

「はい…」


 過去の自分を反省して少し落ち込んでいると、先輩が優しく頭を撫でてくれた。そういうとこだぞ?と思ったけど、ぬくもりを手放したくなくて素直に受け入れた。


「お前は何も気にしなくていい。そのうちわかるから」

「そうですか。じゃあ、その日を楽しみにしていますね」


 眞白先輩の門出だ。しっかりお祝いしなくては。そしてそのついでに彼女さんに謝ろう。うん、計画ばっちり。


「ところで、何で先輩は学校にいるんですか?」


 ふと思った疑問を口に出す。まぁ、居ると思ってチョコを渡すために探した私が言う事じゃないけど。でもよくよく考えると、3年生はもう自由登校だよね?


「進路決まってない人は、自習と言う名の強制登校なんだよね」

「そうだったんですか。…どんまいです」

「まぁ、こうして澄野からチョコ貰えたし、悪い事ばかりじゃないな」

「それは渡した甲斐がありました」


 またすぐそうやって嬉しいことを言う…。この調子で口説かれたら、その好きな子も案外コロッと落ちるかも。その時は私もちゃんと弁えるので安心してほしい。


 あ、そっか。眞白先輩に彼女ができたら、今までみたいに接することはできなくなるのか。


「先輩」

「どうした?」

「当たって砕けろ、です」

「砕ける前提で言うな」


 この関係が終わるのは、ちょっと嫌だなぁなんて。ふとそんなことを思った。

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