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新人声優ちゃん

「今日からこの子と同棲して、百合営業しなさい。」



私こと、売れない声優4年目の(たちばな) 咲希(さき)は、目の前にいるマネージャーから言われたことが理解できていなかった。



「え、あの、それってどういう意味ですか?」

「どういう意味も何も、言葉のままよ。」

「同棲って、その子とですか?」

「ええそうよ。」



マネージャーの隣には、なんで声優になったのかわからない、そんな可愛らしい女性がいた。アイドルやモデルの方が受けそう。



「私、咲希先輩に憧れて声優を目指したんです!まさか、そんな先輩と一緒に暮らせるなんて夢みたいです!」

「いや、まだ私承諾してないんだけど!?」

「同棲して百合営業をするなら、あなたの家の家賃を事務所が払ってあげるわ。」

「え、ちょっと、そんな事言われても受けませんよ!?」

「よく考えてみなさいな。今まで仕事がなかったあなたにイベントの司会の仕事とかを回してあげてたわ。でも、あなたよりビジュアルが受けそうな新人声優が入ってきたのよ?どちらを事務所は推すと思う?」

「そ、それは…。」



何故か私は、今まで受けたオーディションで落ち続けてきた。たまに受かっても、人気ではないアニメの脇役やモブばかり。

そんな私を助けるために事務所は仕事をくれてたけど、そこの新人声優ちゃんは、私より可愛い。同じ司会の仕事をさせるにしても、どちらを選ぶかは一目瞭然だ。


たぶん、そんな私を助ける最後のチャンスとして、この話を持ってきたんだと思う。

でもさ…。



「百合営業って言っても、私は女の子を好きになったことないですよ?」



まあ、男を好きになったこともないけど。

でも、同性愛者ではないはず。



「それはこの際気にしないわ。あなたも仕事だし、私たちもビジネスよ。リアルかフェイクかなんて、大した問題じゃないわ。

ファンもそれを分かって楽しんでるし。」

「そうかもしれないですけど…。」

「それに、これはもう決定したことよ。社長も了承している。

どうしても嫌ならここを辞めなさいな。」

「そんなぁ…。」



ここに受かったのだって、いくつもの声優事務所のオーディションに落ちたあとだったし、そんなすぐには辞められない…。



「はぁ…分かりました。仕事ですし諦めますよ。」

「それは良かったわ。それじゃあ今日はもう帰っていいから、この子に街の案内と、引っ越しの準備を手伝ってあげなさい。」







「咲希先輩、私のせいでこんなことになってごめんなさい。」

「あー、いや、いつまでもこのままは無理って分かってたから気にしないで。」



私は新人声優ちゃんを連れて、電車に乗っていた。私の家は、事務所から3駅離れてるからね。



「そういえば、あなたの名前って星霧(ほしきり) (ゆき)だっけ?」

「はい!先輩、覚えててくれたんですね!」

「まあ、昨日も話したしね。」



私たちは、今日初めて会ったわけじゃない。

昨日、事務所が毎年やってるBBQ懇親会で、この子が新しく入社したと紹介されていた。そして、先輩や偉い人への挨拶を終えたあと、真っ先に私のところに来たから、忘れるわけがない。


なんでも、私の大ファンだとか。



「昨日は聞かなかったけど、なんで私のファンになったの?」



昨日は聞かなかったというか、聞けなかったが正解だけど。

雪ちゃんは、私の好きなところをひたすらに教えてくれた。それは、聞いている私が恥ずかしくなってしまうほど熱烈に。そんな状況では聞けなかった。



「えっと…私が進路に悩んでいたときに、たまたま流れてきたイベントの動画で、咲希さんが司会をしていたんです。それを見たときに、咲希さんの事を好きになったんです。あ、それがきっかけで、私も声優を目指しました。」

「イベントの司会って…あ、初めてしたやつ?」

「たぶんそうです。緊張で顔が作り笑顔になってたやつです。」

「あぁ、あれね…。」



今では慣れたけど、当時は凄く緊張してたもんなぁ。

その頃から私を知ってるなんて、恥ずかしい。



「あれから3年経って、遂に本物の咲希さんを目の前で見れて、昨日は眠れませんでしたよ。」

「テンション高かったもんね。」

「はい!先輩、これから宜しくお願いしますね!」

「宜しくね。」



雪ちゃんは可愛いし、凄く良い子だと思う。

気付いたら私なんか追い抜かされてそう。






駅に着いたら、雪ちゃんを案内しながら家に向かった。


すると、事務所から送られてきた雪ちゃんの荷物が玄関の前に置いてあった。

これを見ると、私って本当に拒否権が無かったんだなぁって思う。






私の家は、アパートのワンルーム。その代わり、風呂とトイレは別で、収納も多少はあるし、部屋もそこそこに広い。

キッチンと部屋はカーテンで分けてるし、部屋のセキュリティ自体はしっかりしてるから、私は気に入っている。鍵はピッキング出来ないタイプだし、監視カメラもちゃんとある。



「ここが私の家よ。ワンルームだから、2人で住むには狭いし、急に来るから部屋は散らかってるけど…。」

「お邪魔します!いや、十分綺麗ですよ!」

「そう?なら良かった。とりあえず、荷物の片付けをしよっか。」

「手伝ってくれるんですか?」

「だってここは私の家よ?私が手伝うのが1番でしょ。」

「ありがとうございます!」





数時間かけて、片付けと部屋の案内をした。


よく考えたら、昨日会ったばかりの女の子と同棲してるって、私ヤバくない?


まあ、今はその女の子に夕飯を作ってもらって、食べてるんだけどね。



「雪ちゃん料理上手だね。」

「家でいつも作ってたので。美味しいですか?」

「美味しいよ。作ってくれてありがとね。」

「いえいえ。これからも私に任せてください。」

「たまには私が作るわよ。」



雪ちゃんは、私の家に同棲するのが引っ掛かってるらしい。

これは事務所の意向だから、別に雪ちゃんは気にしなくて良いのに、ご飯ぐらいは作ると言って譲らなかった。






美味しいご飯を食べ終わり、片付け終わったあと。



「それじゃあ、始めましょうか。」

「はい!」



私はパソコンを操作して、マネージャーに言われた通りにする。


画面には、女性声優2人で配信始めます!という文字。

そう、私たちは百合営業の一環として、今日から毎日動画配信を始めることになった。いくつかの配信サイトを使い、少しでも人の目に止まるようにしている。


事務所の公式SNSからも告知がされており、配信してすぐに人が集まってきている。



「こんばんはー。声優事務所華々(はなばな)の声優、橘咲希と。」

「こんばんは。声優事務所華々の新人声優、星霧雪です。」

「今日から毎日配信をしていきたいと思います。早速集まってくださってる方々、貴重な時間を私たちに使っていただきありがとうございます。」

「私は、今日が初めて皆さんのお目にかかる機会です。これから宜しくお願いします!」



チャット

:公式告知から来ました

:こんばんはー

:新人ちゃんめっちゃ可愛い

:雪ちゃんかわわ

:これは推せる



早速コメントが来てるけど、その大半が雪ちゃんの見た目について。まあ、可愛いもんね。

私の見た目は、良く言っても中の上だと思う。美人、クール系な感じだけど、悪く言えばちょっと怖く見える。自分で言うのもあれだけど、可愛い雪ちゃんと私、どちらが受けるかと言うと、雪ちゃんだと思う。



「雪ちゃん、早速可愛いって誉められてるよ。」

「そうですか?ありがとうございます。でも、咲希先輩みたいにカッコいい大人っぽさがないのが残念ですよね。」

「雪ちゃんって、若干童顔だもんね。それが良いところだと思うけど。」



私なんか、学生の頃からよく老けて見えると言われてたし。



「皆さんはもっと咲希先輩の良さに気付くべきだと思いますよ。」

「ふふっ、何言ってるの。それじゃあ、まずは私たちの自己紹介をしましょうか。」



私はマネージャーに送ってもらった画像を画面に写し出す。



「私、橘咲希は、今年4年目の売れない声優です。出演作は書いてる通りで、趣味はゲームです。じゃあ私の紹介はこれぐらいにして、次は皆さんが気になってるであろう雪ちゃんの紹介です。」



雪ちゃんの画像を画面に写し出す。コメントの内容的にも、私の紹介をすぐ終わらせたのは正解だったみたい。



「別に気を使わなくていいですのに…。私の名前は星霧雪です。一昨日入社したばかりで、今日から咲希先輩と一緒に暮らすことになりました。」



画面に書いてある内容と全く違うことを言う雪ちゃん。

画面には声優を目指した理由や特技とかが書いてあるのに。



「雪ちゃん画面のことに触れなさいな。」

「あ、えっと…私が声優になりたいと思った理由は、咲希先輩に会いたいと思ったからです。だから声優になるために、先輩と同じ養成所にいって、真剣に勉強してきました。」

「あ、そうなの?それは初めて聞いた。」



あそこの養成所に通ってたんだ。有名じゃないけど、いい所だったなぁ。



「初めて言いましたので。これで自己紹介を終わります。」



私は画面を私たち2人に戻す。



「こんな2人で、これから毎日配信をしていきます。ぜひお暇なときは遊びに来てくださいね。

それでは、これから質問を募りたいと思います。ほとんどが雪ちゃんへのものだと思いますが。」

「もちろん咲希先輩への質問でも大丈夫ですからね!」



チャット欄の動きが一気に早くなる。

ここから私たちが選んだ質問に返していく。



「それじゃあ、始めはこれにしますね。」

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